KEVINサイトウの一日一楽 

人生はタフだけれど、一日に一回ぐらい楽しみはある。

True Story ? in Guam 5

2006年05月10日 | Travel
 ボブを助ける?さて、どうしたことか?

 ボブは、何かをして欲しいと直接要望したわけでもない。
 ただ、莫大な価値があるであろう財宝の入った袋を、初対面である僕に預けたまま、立ち去っただけだ。 
 
 僕はビジネスマンだ。

 僕がボブを助けるために選ばれたのが本当なら、ビジネスの知識を駆使することを求められたが故だろう、と勝手に解釈することにした。

 或る筋を使い、この財宝をスイスの地下銀行の貸し金庫に預けた。

 但し、一部は現金化し、有名なファンド・マネジャーに託して、運用をしてもらうことにした。

 ビジネスは情報が無いと戦術が策定出来ない。

 ボブに関する最低限の情報を、最大限の努力を払って何とか入手することが出来た。

 ボブは、純粋のチャロモ族だ。チャロモ族はグアムの先住民であり、その起源はフィリッピンやインドネシアからカヌーを漕いでグアムまで渡ってきた驚異の人達だ。
 民族的には、マレー系だが、カヌーひとつで、そこまでの遠洋渡航を可能ならしめたのは、やはり特殊能力があったというのが、僕の勝手な推測だ。

 グアムはその後長きに亘りスペインに支配され、やがて米国、そして短期間だが日本、日本の敗戦により再び米国支配という悲しい歴史を経ている島だけに、純粋のチャロモ族は、今や観光と軍事要塞の島であるグアムには殆ど残存していない。

 そんな中にあって、ボブは純血を保ったチャロモ族の末裔である。

 彼のお父さんはもう居ない。数年前に逝った。お母さんと8人の兄弟姉妹が漁業や、観光業にしがみついて細々と生きている。
 ある兄弟などは純血チャロモ族であることをいいことに、可笑しなショウを観光客目当てに強制されて、毎日の糧を得ている。

 僕が、勝手な判断でボブの財宝を現金化したのは、その運用益で家族にもう少しまともな生活を送ってもらうためだ。

 運用益は、3か月に1回ボブの家族に配分されるようにした。但し、金は時に人を狂わせるので、あくまで控えめに、上限付きで。

 僕は、いつまでもボブを海の精の化身、あるいは自然なるものの象徴だと信じている。

 そんな存在から認めてもらったという喜びと誇りから、それに応えるべく全力で以上の手はずを整えた。
 それがボブの本当に望んでいるものかどうかは分からなかったが、自分で考えつき、出来るのはそれくらいだった。

 それからOne Decade 以上が過ぎた。


 僕はビジネスの世界で懸命に生きてきた。
 しかし、成功すればするほど、自分がどんどんMaterialisticになっていくことも感じていた。

 こんな時計をしています、こんなブランドのスーツを着ています、こんな車に乗っています…そんなことが人間の価値と何も関係ないのに評価される場所に生き、自分自身もそれにこだわる人間になってしまった。

 ボブと海で出会った時の僕は、白い光に包まれていたという。

 それ以来、僕は自問する。
 今の僕は、光に包まれているのか?
 その光がだんだん弱くなり、そして光が死ぬのを僕は恐れる。
 
 モノ、モノ、モノで囲まれている僕に光は残っているのか?
 
 ボブは神だ。そして僕は神に選ばれた男だった。

 今の僕はOne Decade前の僕よりもずっと金持ちだ。しかし、そんな僕をボブは選んでくれるのだろうか?

 そんな懊悩の中で、一通の葉書が届いた。
 グアムからだ。

 
 


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