KEVINサイトウの一日一楽 

人生はタフだけれど、一日に一回ぐらい楽しみはある。

True Story ? in Guam 9

2006年05月22日 | Travel
2004年12月26日、クリスマスの翌日。スマトラ沖を震源地とする地震が、大津波を起こし、各地に酷い被害をもたらした。

 その日、ボブはインドネシアのある小さな島に居た。
 その島にとっては、有史以来のと言ってもよい巨大なる海柱が島の至る所を蹂躙し、島は壊滅的な打撃を被った。

 ボブは、被害に傷ついた人たちを救済するため、神の如き活躍を見せた。

 海中に沈む人を海の底から引き上げ、息を蘇生させた。或いは周りが水没し、高台に取り残された人々を担いで泳ぎ、何度も往復した。

 ボブのお陰で、本来は命を落としたであろう沢山の人々が救済された。

 ボブが再び人々を救うために水中に身を投じたときに、津波の余波が来た。
 余波といっても、それは全てを飲み込み、叩き潰してしまうほどの力を持っていた。

 流石のボブも巨大な海の力には抗えない。

 水中で渦巻く海流にきりもみ状になり、海の底へと転落していきながら、ボブは叫んだ。

 「海よ! 何故、そんなにお怒りになる。確かに人間は、あなたを愚弄した。自分たちがあなたから生まれてきたにもかかわらず、尊厳を忘れ、あなたを汚し、傷つけた。

 あなたのお怒りがいかようなものかは分かる。しかし、小さな身で一生懸命生きている人間も沢山居るのだ。

 そのお怒りを、お静め頂きたい。どうかお慈悲を頂きたい!」

 その声は、渦巻く轟音に負けることなく海中で響き渡った。

 後に多くの人が証言した。ボブの声を聞いたと。そしてボブが海に対し何を語ったかを。

 ボブの激しい叫びの後、暫くして海は平穏を取り戻し、やがて凪のようになった。
 黒く荒れ狂っていた空も、青空をのぞかせた。

 逆潮のように水面が徐々に低くなっていった。

 ボブが身を投じた辺りも、砂地が透けて見えるほどに水量が減った。

 そして、人々はそこに人間のような形をした巨石が横たわっているのを発見した。

 海の精の化身であり、自然なるものの象徴であるボブは、海に還っていった。
 石のように見える抜け殻を残して。


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