川越だより

妻と二人あちこちに出かけであった自然や人々のこと。日々の生活の中で嬉しかったこと・感じたこと。

紀元節

2011-02-11 16:07:34 | こどもたち 学校 教育

今日は「建国記念の日」です。大日本帝国の時代の「紀元節」を1967年に衣替えして祝日として復活させました。

僕は48年小学校入学ですからもちろん「紀元節」の式典は知りません。しかし、高知県繁藤(しげとう)小学校の「紀元節校長」のことはよく憶えています。

1956年(昭和31年)2月23日の参議院文教委員会での清瀬一郎文部大臣答弁。溝渕校長がやった「紀元節式典」の概要が分かります。

○国務大臣(清瀬一郎君) 本年の二月十一日に高知県長岡郡大豊村のうちの繁藤小学校、この学校は小さい学校で、児童薮が百三十五名、教員が七名、学級数が六ということでございます。校長は溝渕忠広という人でありまして、本年の二月十一日に紀元節の式典のようなことを行なったという報道がございましたから、文部省ではさっそくその取調べをいたしました。衆議院でも報告いたしましたから、こちらも機会があれば申し上げてみたいと思っておったところでございます。
当時やりましたことは、二月十一日の午前十時全校の児童のほかに、村民有志も参列いたしたのでございます。そうして校長は開式の言葉を述べ、かの昭和二十一年の一月一日に人間天皇の御詔書というものがございます。自分は現人神じゃない、人間だ。国民との間は信頼と敬愛で結ばれるのだという有名な詔書でございます。それを読みまして、そこで校長が訓話をいたしております。その訓話の内容は、人間が生れたときには、やはり誕生日を祝うごとく、国が生れた日に相当することについては祝いをしていいのだという趣きの訓話をいたしまして、そのときに来賓が祝辞を述べ、次に紀元節の歌「雲にそびゆる高千穂」という歌を歌いまして、その次に学校の校歌、学校の歌があるとみえまして、校歌を斉唱して閉会の言葉を述べ、当日は土曜日に相当いたしましたから、かれこれでお昼になったとみえまして、子供には帰ることを許した趣きであります。

中2の3学期のことになるわけですが新聞紙上などで賛否が激しく対立していたことを記憶しています。「建国」「愛国心」「紀元節復活」等という言葉が飛び交う中で自分がどう考えたかはこの時期の日記をなくしたため分かりません。ただどういう訳か「雲に聳ゆる高千穂の…」という歌だけは今でも歌えます。下宿の老夫婦が教えてくれたのではないかと思われます。

●「紀元節」http://www.youtube.com/watch?v=2UvYla-aZzc&feature=related

歌詞は難しくて分かりづらいのですが「天孫降臨」や「神武東征」の神話の世界をそれはそれとして楽しんでいたのかなあ。日本史は勉強していたからそれを史実として受け入れるようなことはあり得ません。当時、学校では記紀は神話であることが強調され、中身を学ぶことはなかったと思います。

これから10年後には「建国記念の日」が制定されるのですから、溝渕校長の突出した行動にも保守勢力の根強い支持があったのでしょう。繁藤には溝渕校長と神武天皇の銅像が建っているようです。どういう人がいつ建てたのか、次の帰郷の際には見てきましょう。

●繁藤小学校・溝渕忠広像・神武天皇像http://ameblo.jp/7tv9/entry-10665595611.html

紀元節は明治期の近代天皇制国家確立の過程で作られた祝祭日で、BC660年2月11日が日本国の「建国」とは何の関わりもないことはいうまでもありません。神武天皇が即位したという橿原(かしわら)神宮自体、1890年に新しく作られたものです。

新国家樹立に当たって建国神話をあたかも事実のように国民教育することは政治の常道のようです。

僕の世代は北朝鮮の歴史教育にその典型を見てきました。金王朝誕生の作り話を史実としてすべての国民が生まれたときからすり込まれているのです。笑止千万だと僕には分かりますが北朝鮮の人々は疑うことすら御法度です。その手本が大日本帝国の歴史教育なのかもしれません。

さて、ならば「日本」はいつ建国されたのか?あなたならどう答えますか?

少なくとも「日本」という国号はいつきめられたのか?

網野善彦さんの本には「689年」と書いてあります。「日本」が外国(唐)から認められたのは702年だとのことです。古代天皇制国家が確立していく過程で「日本」と名乗ったと言います。「倭」という国名を使って中国の王朝に朝貢していたヤマトの支配層が律令を定め、中国と対等な自らの帝国を作る姿勢を明確に示したのです。

もちろんこのころの「日本」の版図には東北や南九州は含まれていません。今日の「日本」(北海道~沖縄)となるのは19世紀になってからのことですね。

歴史の本を読み解く力の乏しい僕でも網野さんの『歴史を考えるヒント』は解りやすくて面白い。良かったらどうぞ。

●網野善彦『歴史を考えるヒント』http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/600597.html

●「網野善彦氏の歴史学」http://www.scs.kyushu-u.ac.jp/~hatt/amino1.html


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