唯物論者

唯物論の再構築

ローレンツ収縮

2011-08-28 16:26:03 | 相対性理論

 ローレンツ変換式は、高速移動に伴ない物体の質量増加・時間遅延・空間圧縮が発生するのを示したとされる。このうち、停止慣性系から見た移動物体の圧縮現象が、いわゆるローレンツ収縮である。しかしローレンツ収縮における移動物体の圧縮イメージは逆であり、実際には移動物体の伸張現象が発生する。このことの概要は、時刻の非同時性の記事(時刻の非同時性)に記載している。ローレンツ収縮の前提は、高速移動する慣性系内での相対的非同時性なのだが、この相対的非同時性を補正すると、移動物体は圧縮せずに伸張する。ここでは空間圧縮の錯覚を生んだ数理を中心に、ローレンツ収縮を再確認する。

 静止慣性系Sの時空座標(時間t,距離x)を、空間速度vで動く移動慣性系S’の時空座標に転換した式は、次のようになる。なおγはローレンツ因子:1/(1-v/c)である。

 t’=γ(t-vx/c
 x’=γ(x-vt)     ・・・式a

 上記の時間tのt’への変換式を簡略変形し、また距離xのx’への変換式に、v=x/tを代入すると次のようになる。

 t’=t/γ         ・・・式b
 x’=0

 ※時間t’変換式の簡略変形の要領は、文末に記載している。

 上記の式は、速度vがゼロなら γ=1 となるので、時間t’=tである。しかし速度vがゼロより大きい場合、常に下記の関係が成立する。

 t’=t/γ
 t’=t/(1/(1-v/c))      ・・・ γ=1/(1-v/c) の置換
 t’=t(1-v/c

v>0なので、次の関係式ができる。

 t’<t(1-0/c)           ・・・ 平方根の内側は1になる。
 t’<t

 つまり v>0 なら常に γ>1 が成立し、したがって t’<t が成立する。したがって移動慣性系S’の示す時間は、静止系Sの示す時間より常に小さい。例えば移動慣性系S’で1時間進むうちに、静止系Sでは2時間進む。

 静止系S :├─1時間─-┼─1時間─-┤
 移動系S’:├────1時間─────┼────────────┤

これは移動慣性系S’から見た静止系Sの時間急進であり、つまりは静止系Sから見た慣性系S’の時間遅延である。なお時間遅延の成立を認める場合、あくまでも静止系から見た移動慣性系だけが時間遅延するべきである。したがって、移動慣性系から見た静止系だって相対的に見て移動慣性系だ、という理屈を排除する必要がある。そのような理屈を認めると、慣性系相互で時間遅延が発生し、とどのつまりは時間遅延が発生しなくなる。そもそも時間遅延は、高速移動物体における観測事実において、すでに確認されている。

 一方の距離x’だが、x’の値が空間座標の原点を指したままなので、xとx’に違いが無い。これは停止慣性系の全ての空間座標にあてはまるので、移動開始前の空間座標の各点も移動開始後の同じ空間座標の各点に移るだけになる。このために空間座標の値を見ても、時間遅延と違って、空間圧縮を確認できない。空間圧縮が可能となるためには、慣性系全体の尺度が圧縮するのを説明する必要がある。そこで次の速度一般の式から、圧縮の可能性を見直す。

 v=x/t           ・・・ 速度一般式

光速の場合、左辺は固定値として現われる。したがって次の式が成立する。

 c=x’/t’=x/t
      x’=xt’/t
      x’=x/γ                 ・・・ t’=t/γ :式bの代入
      x’=x/(1/(1-v/c))    ・・・ γ=1/(1-v/c) の置換
      x’=x(1-v/c

v>0なので、次の関係式ができる。

      x’<x(1-0/c)          ・・・ 平方根の内側は1になる。
      x’<x

 つまり v>0 なら常に γ>1 が成立し、したがって x’<x が成立する。この結果は、空間圧縮を示しているように見える。しかしこれは勘違いである。例えば移動慣性系S’の1mは、静止系Sでは2mである。

 静止系S :├─1m──┼─1m──┤
 移動系S’:├─────1m────┼───────────┤

これは移動慣性系S’から見た静止系Sの空間圧縮であり、つまりは静止系Sから見た慣性系S’の空間伸張である。なお空間伸張の成立を認める場合、あくまでも静止系から見た移動慣性系だけが空間伸張するべきである。したがって、移動慣性系から見た静止系だって相対的に見て移動慣性系だ、という理屈を排除する必要がある。そのような理屈を認めると、慣性系相互で空間伸張が発生し、とどのつまりは空間伸張が発生しなくなる。ただし時間遅延と違い空間伸張は、高速移動物体における観測事実においても、まだ確認されていない。

 それでは、空間伸張の規模がどのようなものとなるのか? すでに見たように、静止系の空間座標の各点は移動慣性系の同じ空間座標の各点に移るだけなので、空間座標の値を見ても空間伸張を確認できない。そこで原点から10離れた空間地点Xを想定し、X=x+10として最初の式を見直すと、次のような式を得る。

 X’=γ(X-vt)
   =γ((x+10)-vt)       ・・・ X=x+10 の置換
   =γ(x-vt)+10γ
   =x’+10γ            ・・・ γ(x-vt)=x’ :式aの置換

この式なら、もともと原点xから10離れた空間地点Xの変換点X’は、移動慣性系S’の原点x’からどのくらい離れた位置にいるかを、10γ の形で得られる。そして速度v>0なら常にγ>1が成立し、したがって10γ>10が成立する。空間伸張は、この結果において明らかな値を得る。
 したがって高速移動する慣性系S’では、時間は γ 分の1に圧縮し、空間は γ 倍に伸張する。それは、地球から高速移動する慣性系を見ると、時間が停止し、空間が伸張するのを示す。それは逆に、高速移動する慣性系から地球を見ると、時間が急進し、空間が圧縮するのを示す。ここで現われている空間の動きは、ローレンツ収縮と逆転した表現、言うなればローレンツ伸張である。
 上記内容をまとめると、移動慣性系では時間が圧縮し、空間単位も伸張するが、xy間の距離は変わらない。しかし距離が変わらないのは、移動慣性系では空間単位が伸張するためである。つまり静止系からすると、xy間の距離は伸張するように見える。例えば、物体「ABCDE」が光速の0.86倍の高速移動をすると、静止系から見れば、その物体の時間速度は1/2に縮小し、大きさは2倍の「ABCDE」に伸張するように見える。そして算出数値を見ても、距離は大きくなっている。ただしあらかじめ断っておくが、それでもこの空間伸張は、空間圧縮に負けず劣らず、やはり錯覚である。

 錯覚の説明の前に、移動慣性系での時間遅延、および空間伸張の正しい説明を示す。
 時間遅延は、時間進行が遅くなるような時間遅延なのではなく、物体が近道を走る時間短縮である。この時間短縮の時間的表現が時間遅延であり、空間的表現が空間伸張である。この時間短縮に対し判り易そうな表現を選ぶなら、飛び越しとか超越になるが、それだとワープと間違われそうなので、ここでは短縮と述べる。このことから高速移動物体では、移動時間の短縮分だけ、その大きさが伸張し、時間が遅延する。先の例えに続ければ、5文字の停止物体「ABCDE」の移動速度を秒あたり5文字にすると、10文字進む速度は2秒である。しかし同じ5文字の高速移動物体でも「ABCDE」なら、10文字進む速度は1秒になる。ただしこの時間短縮が要請する空間伸張や時間遅延の関係は、空間伸張がもたらす時間短縮として、または時間遅延がもたらす時間短縮として、逆に示した方が理解しやすい。物体の距離伸張や時間遅延は、直接に時間短縮をもたらすためである。いずれにせよ空間伸張と時間遅延は同義なのである。

 相対論では、双方にとって相手方の時間や空間が異なった大きさに見えるとしている。しかし簡単に言えば、それは違う。移動慣性系に実際に起きているのは、時間短縮だからである。その証拠に、慣性系の減速時に、遅延した時間が元に戻ることは無い。この点が相対論と決定的な違いとなる。このために移動物体に起きていることを、空間伸張や時間遅延と呼ぶのさえ、躊躇せざるを得ない。移動物体は時間を飛び越えただけであり、伸張したつもりも無ければ、遅延したつもりも無い。簡単に言えば、空間伸張や時間遅延は、時間短縮の錯覚表現である。
(2011/08/28)

※上記内容は2011/02/27に一度提示したものだが、図の追加や式の詳細化を加えただけ
 で、内容的には同じである。

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[慣性系S’の時間t’変換式の簡略変形の要領]

  以下の要領で時間tのt’への変換式を、簡略変形する。通常はゼロ割り算に配慮して極小値dt/dxを使うが、面倒なので、ここでは無視する。

 t’=γ(t-vx/c
   =tγ(1-x/t・v/c)             ・・・第二項の分解
  =tγ(1-v/c)                ・・・x/t=vの置換
  =t(1-v/c)/(1-v/c      ・・・γ=1/(1-v/c)の置換
   =t(1-v/c
   =t/γ                       ・・・1/(1-v/c)=γの置換



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