徒然なるままに・・・

映画よりJAZZにシフトチェンジ中・・・。

【映画感想・ハ行】 春が来れば ★★★

2006-05-10 | 【映画感想・ハ行】
ストーリー:
ヒョヌは仕事と恋愛に悩むトランペッター。
オーケストラに入団できず、恋人ヨニとも破局、
挫折感を味わい心が荒んだ彼は、
江原道の小さな炭鉱町にある中学校の臨時教員として赴任、
ブラスバンドを指導することになる。
しかし運営の資金繰りは厳しく、
来たる音楽コンクールで優勝しなければ、
ブラスバンドは強制的に解散させられてしまう。
生徒たちの音楽への情熱を感じ取ったヒョヌは、
町の薬剤師スヨンの励ましもあって、
全員で不可能とも思える夢に挑戦することを決心する。
(goo映画より引用)

出演:
チェ・ミンシク、キム・ホジョン、チャン・シニョン、
ユン・ヨジョン

監督:
リュ・ジャンハ

劇的に変化することも、感動的なエピソードがある訳でもない。
スケッチブックに描くデッサンのように日常風景を断片的に切り取り、
その中に現れる人々の心の変遷を描いている綺麗な内容である。

リュ・ジャンハ監督は、ホ・ジノ監督と共に、
『八月のクリスマス』や『春の日は過ぎゆく』を作った人。
登場人物の描き方が叙情的で非常に似ている。

主人公ヒョヌは、交響楽団員を目指しているが未だに達成できていない。
夢の実現のために定職にも付いておらず、恋人にも去られてしまった。
母親を食べさせなければならないという点もあって、中学校臨時教員になる。
寂れた炭鉱のある町。堅物の大人、心優しいお年寄り、ありがちな田舎町。
中学にはかつて名を馳せたブラスバンドがあるが、今は風前の灯。
今度の音楽コンクールで優勝しなければ、廃部の憂き目になる。
ヒョヌは生徒と共に優勝目指して日夜練習をしていく。

イギリス映画『ブラス!』にとても似ているが、
物語はブラスバンドがメインではなく、あくまでも人間そのもの。
ヒョヌは、生徒達の抱える問題を共有していく。
ケニー・Gが目標という生徒が父親にブラスバンド参加禁止と指摘されれば、
炭鉱入口で雨の中演奏することで、音楽の素晴らしさをアピールする。
親代わりの老婆が突然亡くなった生徒には、様々な心情を聞き出す。
それから、薬局の若い女性との交流でヒョヌの心も安らいでいく。

そういうヒョヌ自身の行動が、彼自身も変化が起きる。
煙たいといつも思っている親への優しさ、元恋人への素直な思いを吐露する。
夢を追うことだけで、そっけない雰囲気だったヒョヌが変わっていく。
しかも、ベタベタせずにさらりと描くことが効果的である。

きっちりと起承転結を描いたストーリーを好む方には不向きかも。
しかし、ヒョヌの成長譚とすれば、これほど魅力的な作品はない。

※余談
ヒョヌを演じたチェ・ミンシクは、実に味のある役者であることを再認識。
また、映画公開がちょうど3月末であったこともマッチしていて大正解である。


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