もはや私たちは、再び会うことはないでしょう。
これも私たちの運命なのです。
他人の不幸の上に私だけの幸福を築き上げることは、私にはどうしても出来ません。
あなたが再び肉親の愛情に包まれて、祖国にいるという嬉しい思いで私は生きていきます。
~クラウディアからの手紙より一部引用~
ある日、職場の社長がワタシにB4用紙3枚程度の文章を持ってきてこう言った。
「ちょっと最初は読みにくいだろうけど、読んでみて。」
なんだろ???
読んでみると「蜂谷 彌三郎(ハチヤ ヤサブロウ)氏」の半生が対談形式で書かれていた。
蜂谷氏は太平洋戦争の終戦後、日本への引き上げを待つ北朝鮮で、侵攻してきたソ連軍に突然まったく身に覚えのないスパイ容疑をかけられ、シベリアへ強制連行される。
まだ若かった妻の久子と生まれて間もない娘の久美子を残し、51年もの長い間 最悪の人生を課せられることとなった。
たったB4 3枚程度の文章、そこには蜂谷氏が今までに受けてきた残酷な拷問や屈辱的な言葉の暴力など、とても同じ人間同志がやったこととは思えない悲惨な出来事が淡々と綴られていました。
そんな悲惨な人生の中で蜂谷氏はロシア人のクラウディアという女性に出逢う。
とても涙なしでは読めない内容でした。
読んだ後、社長に「この2人の女性の愛は真似できない。すごいですね!」と感想をのべると、社長も目をまんまるさせて「だろう、だろう。」とうなずいた。
今度はもっと詳しく読みたいだろうと『クラウディア愛の奇蹟』を貸してくれた。
クラウディアの無償の愛、51年ものあいだ夫の無事を信じ日本で待ち続けた妻の久子。
戦争によって人生を狂わせられた人たちの生きざまが書かれていた。
こんな惨い仕打ちを受けても人間であることを忘れない。
「私は人間だ。人間であることを決して忘れてはいけない。
私は何かの道具ではないのだ。家族の顔も見ないうちに犬死できるものか。
行きぬかなければ。」
このときの蜂谷氏の気持ちはどんなものだったのだろう?
死と隣りあわせの日々を逃げず、あきらめず、懸命に生き、自分の信念を貫き通した。
こんな蜂谷氏を尊敬せずにはいられません。
それから蜂谷氏を支えつづけた2人の女性も…。
今もなお続いている戦争、人間同士が殺し合い、今までに多くの人たちの人生を奪っていった。
そんな戦争が一刻も早く終わり、世界の人々に平和が訪れることを願い、ここにこの本を紹介させていただきます。