古事記・日本書紀・万葉集を読む(論文集)

ヤマトコトバについての学術情報リポジトリ 加藤良平

ガラパゴス的に進化した水との戦い

2017年11月15日 | 上古・中古・中世・近世
 水漏れを防ぐことは、堤防や地下道に限らず、生活に欠かせない技術です。防水技術は近年とても進歩して、少し前の時代の苦労が忘れられているようです。屋根がどうして三角なのか? それは、デザインの問題以前に、雨露を防ぎたいからです。軒を出さないと、壁にしている土や板が雨に濡れて早く劣化してしまいます。
民家の屋根(日本民家園)
 水漏れが命取りになるのは船です。和船の技術では、木をあわせて作るようになってから、接合部に槇肌などをパッキンにするようになりました。同じころ、中国では、石膏・麻・桐油等を練り合わせた充填材を詰めていたそうです。今日、木をあわせて船を作ることは行われなくなりました。船大工さんは、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)船を作ることばかりでなく、マンションの防水工事などに転職されていると伺ったことがあります。FRP船は丈夫で壊れないため、かえって今では不法投棄が問題になっているようです。
 それはさて、その和船の作り方を応用して、江戸の町の上水道は作られました。ヒューム管や鉛管、塩ビパイプ以前、我が国の水道技術はオリジナルの、いわゆるガラパゴス的進化を遂げていたようです。
舟釘の打ち方(神奈川大学展示ホール展示品)
上水木樋接合材(舟釘と槇肌、東京都水道歴史館展示品)
上水木樋遺構(小伝馬町牢屋敷内、十思スクエア展示)
上水木樋(江戸城本丸掛部分、日比谷図書文化館展示品)
 だからどうということはないのですが、英語にライバル(rival)という語は、川(river)を語源とし、水争いをする者のことを言ったようです。この列島のように、どちらかといえば過剰なことの多い水を取りあうことはあまりなかったでしょうから、そういうふうには言葉は作られなかったということがわかります。

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