老いの坂道(パピー)

楽しい心で歳を取り、働きたいけど休み、喋りたいけど黙る。
そんな気持ちで送る趣味を中心に日々の一端を書き留めています。

美術館日記『ピサロと印象派』展(その2) 兵庫県立美術館にて

2012-08-19 | アート展日記

『ピサロと印象派』展、展示室に入ります。写真撮影は禁止です、その他禁止事項が多いですね。日本の

美術館ってどうしてこんなに禁止事項が多いのだろう・・・

ボクがお気に入りだった若干の作品を紹介しながらピサロの生涯を振り返ってみましょう。

(会場入口で貰った展示リストに鉛筆でメモをしながら廻ったのですが、残念ながらポストカードは

全展示作品を網羅していません)

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1830年7月10日、今から約200年前、

ピサロは海と太陽が美しい南の島、カリブ海のセント・トーマス島で生まれました。

 父は貿易商人で、若い頃はピサロも商人になるための勉強をしていました。

しかしピサロは、イヤだったのです、商人は・・・

ピサロは画家になりたかった。。。。でも、ゆるしてもらえなかったのです。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

だから親友の画家としめしあわせて、家出しました。

最初の3年間はベネズエラで絵を描いて暮らしていました。

そのあと、大西洋をわたって。フランスのパリへ行きます。

パリはそのころから、芸術の都と言われていました。

まず心をひかれたのは、コローの絵でした。

 

[カミュー・コロー、「モルトフォンテーヌの想い出」、ルーブル美術館]

コローもピサロもカミューという同じ名前でしたね。ボクはコローの絵がお気に入りです。コローは印象派へと

継承されたバルビゾン派と言われていたと思います。この作品も霞がかかったような作品で、夢見るような

雰囲気の風景画ですね。

 

当時パリには、サロンという展覧会がありました。

そこにかざられるには審査を通らなくてはならなかったのです。

ピサロがはじめて通った時の絵は、コローの絵にそっくりだったそうです。

 

でも、サロンでは、新しいものは、なかなか受け入れてもらえなかったようです。

ピサロの絵も、だんだんかざられなくなっていったのです。

これじゃいかん!

ピサロは仲間と一緒に、自由に絵をかざれる場所を作ろうとします。

[カミュー・ピサロ、「ポール=マルリーのセーヌ河、洗濯場」、1872年、油彩46.5×56.0 

オルセー美術館(パリ)]

そうして、ピサロはモネやルノワールと一緒に、展覧会を開きます。

今では第一回「印象派展」とよばれる、とても有名な展覧会でした。

[カミュー・ピサロ、「オニーの栗の木」、1873年頃、油彩、65.0×81.0、個人蔵]

大きな木と畑、そして小高い山並みの向こうに青空、どこにでもある風景ですね。手前木の下に描かれた小さな

人物、これがこの絵を随分とひき立てているように感じます。

ところが、そのころの人には、ピサロ達の新しい絵は、

なかなかわかってもらえなかったのです。

といのも、ピサロ達は、そこらへんにある、身近なものばかり描いていたからです。

金持ちの好きな、キラキラした絵とは違っていたのです。

絵が売れないから、食べることも大変だったようです。

でも、ピサロはそれでもよいと・・・、

美しさといものは、

人が見向きもしないような所に、潜んでいるものだと確信していました。

[カミュー・ピサロ 「冬景色(鉄道沿いの道、雪の効果)」 1873年 油彩、52.0×81.0、

国立西洋美術館]

この作品にも風景画の中に小さな人物を描き入れることで風景をよりひき立てているようですね。

印象派も、何年かたつと、いろんなことがあって、

ルノワールやモネが、印象派から離れて、サロンに戻っていきました。

でも、ゴーガンが、いっしょに絵を描きたいといって来てくれました。

新しい仲間が出来た。

この頃、セザンヌともよく一緒に絵を描きました。

[カミュー・ピサロ、「ルーアンの朝もやの市場」 1898年、81.0×65.0、吉野石膏美術振興財団]

 

[カミュー・ピサロ、「昼寝、エラニー」、1899年、油彩、65.0×81.0、個人蔵]

 

やがて、ピサロは、

新しい描き方に出会います。

それは、色の点々で描く方法です。

スーラやシニャックなど、若い仲間たちと、この方法に挑戦しました。

 ピサロは既に60歳を過ぎ、ちょっと描くと、すぐに目がしょぼしょぼし、

老いにはかなわないが、この方法できっと絵に真実を

すべりこませることが出来る、と信じていました。

一方、この頃の世の中は、ひどいものでした。

貧しい人々をよそに、うわべだけ豊かになっていったのです。

エッフェル塔などという奇妙なものまで出来ました。

あんなものは鎌で刈ってしまえ、とピサロじは思いました。

明るい理想ばかり気にとられると、うっかり見逃すのだ。

世の中の「影」の部分を。

 ピサロは点々で、光と「影」を描こうと思っていました。

そのことを、スーラはよく解ってくれていました。

でも、スーラは若くして、亡くなってしまうのです。

ピサロは随分と悩んだ末、結局、点々をやめることにします。

ピサロの人生も、終りにさしかかってきたころ、

ずっと自然が好きで自然を描いてきたけど、

都会も描いてみることにしました。

[カミュー・ピサロ、「ボン・ヌフ」、1902年、油彩、66.0×81.2、ひろしま美術館]

ピサロ72歳の作品、橋の上を行き交う人々、建物の細かい描写はピサロの絵に対する執念のようなものを

感じる作品でもあった。

そして、

未来はどうなっているのだろうか、

身近なものの美しさが、感じられる世の中に

なっているだろうか・・・

そんなことを想いながら1903年、ピサロはこの世を去ったのでした。

今回の絵画展ではピサロの他に、印象派作家の作品も数々出展されていました。印象派の見どころ

である「光と影」そして、点描を始めとする多彩なタッチを堪能することが出来ました。

 

さて、展示会場を後に、約束の場所で3年ぶりくらいだろうか、小学生の時の同窓生N君に再開、

館内のレストランで遅いランチを頂きながら旧交を温めることが出来たのも素敵なひと時でした。

 

その後、館内の風景を少しばかり見て廻りました。大きな素晴しい美術館で見るべき処が多すぎて・・・

それに、この美術館、日本では数少ないと思われる、館内撮影可能な展示室のあることも発見!

次回はカメラを持って一日撮影来館など来たいものです。

では、美術館風景の一部ご紹介を

これは兵庫県立美術館(右手)と海(左手)の関係です。もう目の前が神戸の海ですね。

これは「大階段」です。腰を下ろして海が見渡せる階段です。2階、3階の屋外エリアまで続いています。

「海のデッキ」:海に張りだしたように見える展望スペースです。

「山のデッキ」:屋外スペース最上階の4階にあります。正面構造物の間から神戸の街並みの向こうに

六甲の山並みが見えます。

「円形テラス」:地下1階、1階エントランスホールとギャラリー棟や2階の屋外スペースを結んで

います。展示棟とギャラリ棟、そして海と山をつなぐ美術館のシンボルです。

2階レストラン外観。高級レストランの雰囲気も少しばかり漂う海が見える素敵なレストランです。

2階、「カフェ」外観、屋外にも席があり、お天気のいい日には海の潮風を感じながらお茶を楽しめます。

最後に、館内を巡っていて偶然に見つけた奇妙な光景です。

美術館、隣のビル外壁ガラスに写ったビルの形がなんとも奇妙ですね。光線やお天気の関係で

偶然にこういった奇妙な反映が出来たのでしょうね。(美術館のガラス越しに撮影)

ながながと最後までお付き合いいただきありがとうございます。

 

あっ、そうそう忘れてました。美術館から帰り、こんなの発見しました。

 

神戸市の消火栓マンホール蓋です。どうです、さすが神戸ですね、センスが違いますね。

六甲の山並みが美女の髪型に組み込まれているのでしょう。

今回は、これで本当に終ります。ありがとうございます。。。

 

 

 

 


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22 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Kanon)
2012-08-19 17:08:40
パピーさん、こんにちわ!

ピサロの生涯から丁寧に書かれて、よく理解できました。ありがとうございます。
大きな美術館はじいっくり鑑賞すると確かに疲れます。そういう時は、ざぁーと観てから、じっくり観たい所を重点的に観ています。それが混雑していると、それができません。

兵庫県立美術館の建物は素敵ですね。海の側にある美術館なんて、そうはないでしょう。

幼馴染との再会も素敵なサプライズですね。素敵な消火栓まで、ありがとうございます。
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Unknown (パピー)
2012-08-19 17:47:29
kanonさん、こんにちは。

館内にあった子供向けのピサロに関する解説書を
メモって来ました。
ただ、時期にあったポストカードが揃ってなくって・・・
図録は高いし、写真撮れないし・・・

ボクはね、「どれか一番好きな作品を差し上げます」って
言われたら、どれにするかな~と思いながら見ます。

こうして海を見ながら一休みできる美術館・・・
香川県直島の「地中美術館」、同じく香川県坂出の
「東山魁夷せとうち美術館」、広島県尾道の「尾道
市立美術館」くらいでしょうか、ボクが知っているのは。

消火栓、もう少しで忘れるところでした(笑)

コメントありがとう
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こんばんわ♪ ()
2012-08-19 22:14:47
正直なところ絵を見るのは好きなんですが画家には
詳しくはないです^-^;
そんなカミュー・ピサロの生涯が分かり易く紹介して
くださっていて勉強になりました^-^v
そして、美術館風景…「大階段」の写真を見た時は
思わずスタジアム?な~んて思ってしまいました(笑)
ここで腰を下ろして海が見渡せる階段といい至る所に
工夫がされていて とっても素敵ですよね^-^
最後の消火栓マンホール蓋も素敵なデザインで
神戸のセンスの良さ しかと感じましたです♪
返信する
Unknown (パピー)
2012-08-19 22:43:25
海さん、こんばんは。

早く休まなきゃ明日も日の出写真でしょう(笑)

印象派の絵って日本人好みなんでしょうかね。
自然の風景や人々の暮らしを描いた穏やかな画風は
19世紀という激動の時代にかえってマッチしたのかも
知れないですね。
そういった意味では激動の時代を往く日本人には
いいのかな~。ボクも好きです。

この兵庫県立美術館は素晴しいでしょう。それに
延べ床面積が8300坪ほどあるんですよ。
規模的にも関西随一だと思います。
大震災の復興事業の一つだったから予算はしっかり
付いたのでしょうね(笑)

海さんところのマンホール蓋(消火栓)どうでした。
素敵なデザインなら今度ブログについでに附け加
えて下さいね。

コメントありがとう
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Unknown (りえもんたん)
2012-08-19 22:55:17
こんなに海のそばにある美術館だったのですね~
建物を観るだけでも時間がかかりそうです。

偶然に見つけた奇妙な光景、不思議!!!
絵画作品だけでなく、
いろいろと楽しませていただきました。

また、よろしくお願いしますね♪

返信する
Unknown (たまご)
2012-08-20 07:25:39
とても分かりやすい解説ですね
私は「美の巨人」からの知識しかありません
東京でおこなわれる大きな展覧会はテレビで特集組むこと多いので
それをみたり館内の案内イヤフォンをかりてます^^
以前は、ただ観ていただけですが知識が少し加わるとまた面白いですね
今年は家庭の事情により年に数回見に行く東京への美術展が観れず前年でしたが
パピーさんのブログを通して堪能させて頂き嬉しく思います
返信する
Unknown (パピー)
2012-08-20 10:11:01
りえちゃん、おはよう。

港町、神戸ですからね。背後はすぐに六甲山、東西に
長い街です。異国情緒もちょっぴり、神戸は素敵な街
ですよ。函館に少しだけ似てるかな・・・

立派な美術館でしょう。初めて行った時にはほんと
驚きました。今回で4回目かな、未だに建物内部がよく
解りません(笑) 複雑なんだな~

隣のビルに写ったビルの光景、面白いでしょう。どう
なってるのか今度行ってよく確かめてこなきゃ。。。

絵画作品はやっぱり現物を見たいよね。雰囲気掴め
ないな~ポストカードでは。

コメントありがとう
返信する
Unknown (パピー)
2012-08-20 10:35:27
たまご さん、おはよう。

「美の巨人」って今もしてますか?
美術館は絵画を見るためのいろんな工夫がされてます。
いくら大画面のハイビジョンでもやはり現物にはかなわ
ないですね。

世界や日本の名画と言われる作品の展覧会はどうしても
大都会中心になってしまいますね。運搬・設営が大変
だから地方都市での短期開催も無理なんでしょうね。

でも、地方には地方の素敵な小さな美術館があります
ね。ボクの近くにも沢山あります。
ただ、大阪を中心とした関西圏には新幹線のおかげで
45分くらいで行けますから時々は出かけられます。

東京は日帰圏じゃないでしょうか?無理かな・・・

コメントありがとう
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Unknown (tチャコ)
2012-08-21 08:40:06
絵を描くのが好きで
おはずかしいですが知らない事ばかりです。
じっくり絵と日記読ませて頂きました。
クリムトを見に1回だけ行きました。

素敵なブログ・・・ちょっと変わった?

たけのこのマンホールのふたの画像を探しました。古いパソコンの中でした。
また撮ってきますね~。

返信する
Unknown (パピー)
2012-08-21 11:27:22
チャコさん、おはよう~

海外にまでお絵描きに出かけれるチャコさんにお出で
頂きありがとう。

描くことが好きな人と見ることが好きな人、若しかしたら
別な人種かも・・・
意外にそんな感じがしますよ。

京都では日展も開催されるし京都府立美術館では
日本や世界の名画展もよく開催されますよね。
その他、京都には素敵な美術館が沢山あるでしょう。
羨ましいと思ってます。

ブログ変わりましたか?
デザインは秋バージョンに変えましたが・・・

マンホール蓋、タケノコのデザインでしたか、面白
そうですね。さすが京都!

コメントありがとう
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