安曇野から

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ライヴ・イン・大阪1984

2007-12-23 23:18:56 | Weblog
 カラヤンの遺産というソニークラシカルの映像があって、殆どは15年ほど前までに発売になったと思うが、つい先日ある一枚のLDが発売された。それが故カラヤン指揮、ベルリンフィルの1984年の大阪でのライヴの実況録音である。この映像、梶本音楽事務所がプロデュースして、大阪の毎日放送か朝日放送が収録されたものである。確かテレビでも放送され、ビデオに録って何回も見た記憶がある。その映像がようやく発売された。
 この84年という時期はカラヤンにとって受難の時期で、脊椎を痛めて演奏回数も少なかったはずだが、来日して東京の普門館やこうして大阪での公演を行なっている。映像を観ると、当時のメンバー、本当に素晴らしいメンバーがキラ星の様に目白押しだ。バイオリンのコンサートマスターには就任したばかりの安永さん。そのサイドのシュピーラー。チェロのボルビツキーやハウスト。管楽器はフルートのブラウ、オーボエのコッホやクラリネットのライスターとファゴットはピースク。ホルンはハウプトマンがトップ。トランペットはグロートである。今でも演奏されているプレーヤーもいるが、流石にカラヤンベルリンフィルのメンバーといった感じ。
 実際の演奏も本当に鳴っていて、ダイナミックレンジが広く、オーケストラの面白さを実に楽しめる。曲はモーツアルトのディベルティメント15番、R.シュトラウスの「ドンファン」、レスピーギの「ローマの松」と、弦楽器のアンサンブルを楽しんだ後は、オーケストラの昨日をフルに発揮したドンファンとローマの松だ。
特にローマの松のダイナミックレンジの広さは、こうした再生映像でも十分に楽しめる。カラヤンは体調は不十分で棒は完全ではないし、実際ドンファンと海を振り間違えるという失態もあったが、ここではベルリンフィルの機能をフルに活かして、満員の聴衆を感動の嵐で包み込む。今ではこうしたオカルトみたいな演奏はなくなった。
 カラヤンはこの後予定されていた1986年の来日は果たせず(サントリーホールの杮落とし)最後1988年の来日を果たす。東京では3回の公演を行い、そのうち5月2日のモーツアルト29番とチャイコフスキー「悲愴」というプログラムを運良く聴けることができた。この時RAの座席からカラヤンが舞台に姿を現したとたん「ブラボー」をかけてしまった。演奏が始まる前にブラボーを叫んだのは、当然ながらこの時が最初で最後。カラヤンは本当にエレガントなモーツアルト、オーケストラを最大にドライブした「悲愴」を聴かせてくれた。私にとって今までで最高の演奏会である。