久しぶりに訪れた渓谷は静かだった。
一年前、ルークが戻ってきた“約束の場所”だ。夕暮れ時、辺りは少し濃いオレンジ色に染まっている。
ナタリアは、自分の頬をなでる緩やかな風に身をゆだねながら、黙って立ってみる。ガイも彼女に倣ってみた。
「私、わがままですわね」
「え?」
ポツリと落ちたナタリアの声音。苦笑をにじませたその声色に、すぐには言葉を返せず、彼女の背中に視線を向けるガイ。
「なんと . . . 本文を読む
「あら、ガイ。お久しぶりですわ。どうなさったの?」
自室にいたナタリアの元に姿を見せたのは、かつて一緒に旅をし、苦楽を共にした幼馴染のガイだった。
ルークやティアたちと共に世界滅亡の危機から人々を救ってから、早四年。
ナタリアは生まれ育った祖国に戻り、忙しい王女としての日々を過ごしていた。
そんな彼女の元に来客の知らせが届き、相手を尋ねればガイだという。今となっては珍しくなった来訪者の名に、 . . . 本文を読む