1.帝政復活
サジュールは、ノルマンディ地方カン近郊の農家の次男坊として生まれた。
祖父は大ナポレオンの対外戦争に従軍したのを、誇りにしている。
「ナポレオンは革命で混乱した我が国を、諸外国から守ったんだ。」
「それに、ナポレオンは僧侶や亡命貴族の土地を我々に分配してくれた。」
「おかげでわしも自作農になり、こうして家族を養うことができた。」
「皇帝が去った後の王政や共和制では、奴らは議論ばかりして、
我々の生活はほったらかしだ。」
「また、ナポレオンのような人が現れてくれたら---------」
1872年、大ナポレオンの甥、ルイ・ナポレオンがクーデターを起こし、
ナポレオン三世となる。
サジュールの村でも、皆、村役場前の広場に集まり、議論を始めた。
「皇帝は皆をまとめ上げ、フランスを偉大な国にしてくれるぞ!」
「また、戦争を起こされたら、かなわん。」
ナポレオン三世は産業革命が進行する中、不安定な状態に置かれた
民衆の不満を抑えるべく、社会福祉政策を取り入れる。
旧王家のオルレアン家の財産を没収し、そのお金で労働者住宅や
相互扶助組合を作ることを約束する。
そして、失業対策を兼ね、パリ大改造を計画した。
参考図:「19世紀パリ時間旅行」、鹿島茂、青幻舎、2017