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第2話(4)

夜襲(4)

 敵は大混乱に陥り、退却を始めた。
「異常ないか?」
ハッチを開け、後続戦車を振り返る。ビュッ、流れ弾がかすめる。
「異常ありません!」

 戦車隊は再結集し、中戦車を先鋒にくさび隊形をとり、ゆっくりと前進を始めた。
雨が小降りになってきた。
対岸からの重砲弾が着弾し、闇を照らす。

 突然、稜線上に黒いシルエットが浮かび上がる。
「敵車両群、右30度、撃て!」
出会い頭の接近戦だ。 ダン! 敵の方が一足早く発砲した。

 砲塔を右に回し、照準眼鏡を覗き、十字線の真ん中に敵の発射火炎をとらえ、引き金を引く。
爆発の閃光が敵の姿を浮かび上がらせる。
味方の集中射で敵の2台の車両が炎上した。残りは姿を消した。

 泥濘の中を注意深く前進する。
ドカ、ドカ、ドカ!
敵野砲の弾幕射撃だ。敵の第2陣地に接近した。

 パ、パ、パ、パッ
敵速射砲の赤黄色の発射閃光が、漆黒の闇を切り裂く。
ビュ、ビュ、ビュ
唸りを上げて砲弾が脇を飛び抜ける。

 先頭戦車が鉄条網を乗り越えた。
機関銃の色とりどりの曳光弾のシャワーが集中する。
躍進射を繰り返す。銃弾が装甲に当たり、気味の悪い音をたてる。

 「対戦車障害に注意! 鉄条網の近くだ!」
先頭の中戦車が停止し、もがいている。
たちまち速射砲弾が集中し、炎上しだした。
2台目も、そして3台目も。

 「後退! 後退!」
ハッチを開け、後続車に合図する。砲塔を敵陣に向け、後退する。
撃破された味方戦車から、乗員が飛び出している。

 あとで対戦車障害は、ピアノ線網だとわかった。
ピアノ線は戦車の駆動輪に何重にもからまり、動けなくしてしまう。
そこを敵砲火に狙われたのだ。

     
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