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第6話(2)

 彷徨(2)

 雪と嵐が続く。
気温は急降下し、夜には零下30度以下になる。

 夜営地の周りは、凍死した人馬が折り重なっていた。

 騎兵隊、砲兵隊が先行する。
それらの隊の倒れた馬が、後続兵士の食糧となる。
銀塊でも、一片のパンと交換できない。

 5分の1に減ったギイ達の騎兵連隊では、もう馬に食べさせる飼い葉がなかった。
「馬を救えば、後で馬は我々を助けてくれる。」
ある将校の指揮の下、遠征軍を追走しているロシア軍の野営地を襲い、飼い葉を奪うことになった。

 雪明かりの元、昼間偵察してあった敵の野営地に向かう。

 ロシア軍は深い森の中にいた。
野営地の中央にたき火が見える。

 兵士の姿からコサック部隊のようだ。
馬が野営地の端に繋がれ、傍に飼い葉が積み上げられている。
馬は音や匂いに敏感だ。
“ヒヒン”と一声鳴かれたら、万事休すだ。

 奪ったロシア兵の帽子や外套を着たフランス兵が、ソッと馬に近づく。
馬が気づき、不安そうに足踏みする。
たばこを吸うフランス兵に馬が気をとられている間に、飼い葉をいくつか運び出した。

 しかし、異変を感じた1頭の馬がいななく。
たちまち、つながれた馬全体に、動揺が広がる。
“逃げろ!”
ギイ達は飼い葉を背負い、脱兎のごとく、闇に逃げ込む。

 野営地に叫び声が上がり、銃声が響く。

 ギイとピカールは逃げる途中、来たルートを見失ってしまった。
ぐるぐる同じところを回っているような気がする。

 「このままでは、後を追ってくるコサックに捕まり、殺されるぞ。」
飼い葉を捨て、足跡を消し、雪の穴に身を潜めて夜明けを待つことにする。

 参考図:「Napoleon戦争従軍画集」、徳間書店、1989
     
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