(はじめに)
19世紀末、中国の「清帝国」は内乱と列強の侵略に苦しんでいました。
そのような時、山東省の農村から「扶清滅洋」(清を助け、外国を打ち払う)
を掲げる「義和団」なる武装集団が出現し、北京に迫りました。
一人の義和団員のお話です。
〔参考文献〕
1.「義和団民話集」、牧田英二他編集、東洋文庫、1987
2.「義和団事件風雲録」、菊池章太、大修館書店、2011
3.「ゆれる中国」、世界の歴史⑭、小学館、2017
4.「西太后」、加藤徹、中央公論新社、2005
- 梅花拳
徐は山東省楊村近郊の農村に住んでいる。
徐は貧農の三男坊で、近くの地主のところで作男として働き、
食うや食わずの生活をしていた。
将来の当てもなく、うっぷんを地元で武術を教えていた
「梅花拳」での鍛錬で発散させていた。
ある時、仲間の一人が助けを求めに来る。
「教会を立てるというので、俺の家を立ち退け、と言ってきた。」
「なんで、外国の神様のために土地を取られなければならないんだ!」
「赤毛の宣教師は地元の有力者と結託し、やりたい放題だ。」
「あいつら、俺たちの地元の神様を足蹴にしている。許せねえ。」
徐らは、手に鎌や棍棒を持ち、宣教師のいる宿舎に押し掛けた。
騒動を知った官憲が、徐らを制止する。
「お役人が何で洋人(外国人)の方を持つんだ!」
「洋人の大砲や鉄砲で清軍は負けてしまって、皇帝も洋人の言うこと
を聞かざるを得ないんだよ」
村の有力者が間に入って、土地の境界を決め、騒ぎを収めた。
「トラの威を借るため、キリスト教にはいる中国人もいるそうだ。」
「許せん、ご先祖様に申し訳が立たん!」