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第6話(4)

 彷徨(4)

 2人は、半分雪に埋もれながら進む。
枝を折り、方向を見定めながらの前進だ。

 遠くに砲声が聞こえだした。

 ようやく広い道に出る。
点々と倒れている人馬が、本街道であることを示している。

 夕方、自分たちの連隊に追いついた。


 11月24日、スモレンスクから400キロ、ベレジナ河畔のボリソフに遠征軍は到達した。
しかし、橋は破壊され、対岸にはロシア軍が陣取っていた。
後方からは、別のロシア軍が迫る。

 ここで、フランス軍の工兵隊は英雄的な働きをする。
彼らはボリソフの上流に浅瀬を見つけた。
そして、僅かな架橋材料を使い、氷塊の流れる中、肩まで水につかりながら作業を行った。

 工兵隊は僅か2日間で、400メートルの橋を2本完成させたのだった。
その勇敢な行動の代償に、多数の工兵が肺炎で死亡した。

 近衛軍が渡河を始める。
周辺に落伍者4万人が殺到し、大混乱となる。
ギイ達はマスケット銃を構え、隊伍を組み、それらを押し戻した。

 砲声が近づいてきた。

 我先に渡ろうと、人、馬、荷車が、橋の上で押し合い、へし合いになる。
多数が橋からこぼれ落ち、溺れ死んだ。

 後衛軍が渡り始める。
騎兵がサーベルやムチを使い、群衆の中に道を切り開く。

 ついに、架橋焼却命令が出た。


 渡れなかった落伍者1万余に、コサック兵が襲いかかる。
それを、ギイ達は対岸から呆然と見ていた。
「神よ!」
「大遠征軍がこんな姿になろうとは!」

 曲がりくねった大河が、目の届く限り、死体で埋まった。

 参考図:「Napoleon戦争従軍画集」、徳間書店、1989
       
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