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第6話(2)

生きる(2)

 1944年末、南方総軍からレイテ島の第35軍司令部に対し、レイテ決戦の中止、フィリピン中南部での永久抗戦が通達された。

 司令部は大発や丸木舟で、セブ島やミンダナオ島へ脱出した。
残された兵士は、雨季になった山岳地帯で自活・抗戦することになった。

 アメリカ軍のかわりにゲリラが攻勢をかけてきた。
ゲリラといっても、アメリカ軍に支援され、バズーカ砲から重機関銃まで装備している。

 本田らは西への通路を確保するため、林の中を行軍していた。途中、ゲリラ部隊とぶつかった。
タタタタ、ダンダンダン
顔も挙げられない一斉射撃だ。
しかし、突撃してくる気配はない。

 「おい、本田、俺について来い。」
三八式歩兵銃を持っている金井に促され、回れ右して、匍匐後退する。
地面にへばりついている兵士を押しのけ、敵の側面へと回りこむ。

 木陰から敵が乱射しているあたりを探る。
その手前で人影が動いた。
「あのあたりに手榴弾を投げろ。」
「立ち上がったら、俺が仕留める。」

 「テッ」
手榴弾のピンを引き抜き、1,2,3と数えて投げる。
バン
ゲリラのいる付近の木に当たった。
タン
一人がゆっくり倒れるのが見えた。
ゲリラは風のように引き上げた。

 引率の若い少尉は頭を撃たれ、息絶えていた。
部隊は雑多な兵の寄せ集めだ。
前にはゲリラ、後ろにはアメリカ軍、司令部はいない、補給もない。
それぞれが小グループに別れ、自活・抗戦することとした。

     
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