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第6話(3)

生きる(3)

 “船長”を中心に4人が固まる。
「俺たちは船乗りだ。陸に上がったら、何の役にもたたん。」
「レイテ島を脱出し、セブ島に行こう。」
「そこを追われたら、島伝いにボルネオに行けばよい。」

 敵機に追われ、ゲリラに追われ、西海岸を目指す。
途中、原住民の家に押し入り、食糧を捜す。
イモの茎で、飢えをしのぐ。

 日本兵の一隊にぶつかった。
「貴様ら、どこに行く。」
「セブへの転進です。」
「命令書はあるか?」

 古いオルモックへの輸送命令書を見せる。
「これはオルモックへの輸送命令ではないか。」
「途中で沈没してオルモックにもいけなかった場合、セブの船舶司令部に行き、別命を待て、との命令を受けました。」
准尉は疑わしそうに見ていたが、
「よし、行け。どうせ、セブに渡る舟なんか、見つかるまい。」

 海岸に出たが、浜辺や村には近づけない。

 3日目、沢筋に舟を引き上げたような跡を見つけた。
それを300m程たどると、干し草が積まれており、中にカヌーがあった

 幸福感に包まれ、夜まで待つことにした。
「もうすぐ戦争も終わる。こんな所で死んでたまるか。」
「国に帰って、船が沈むぐらい、カツオを釣るぞ。」
「私は客船の船長になりたいなあ。」
「俺は自分の漁船を持つんだ。」
「自分は電気技師になって、便利なものをたくさん作りたいです。」

 この後、ルソン島はもとより、フィリピン全域が戦場になった。
本土防衛の時間稼ぎのための捨石になり、僅か10ヶ月で、8年間戦った中国大陸での戦没者の2倍以上の戦没者を出したのだった。

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