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第3話(3)

 救出作戦(3)

 1944年3月、ロシア南部でのソ連軍の春期大攻勢が始まった。
ソ連軍はドイツ軍を押しまくり、4月にはオデッサを奪還、カルパチア山脈に達した。

 クリミアの第17軍、ドイツ軍6個師団とルーマニア軍7個師団、計22万人は取り残されてしまった。
将官らは、クリミア撤退を進言したが、ヒトラーは政治的理由から拒否、クリミアの死守を命じた。

 4月初め、ソ連軍のクリミア進攻が開始される。
兵力はドイツ軍の3倍、しかも1個戦車軍団を有している。

 ソ連軍が迫ってきたので、Sボート戦隊はイワン・ババ基地から撤退し、ルーマニアのコンスタンツァに移った。

 ドイツ地上軍はグナイゼナウ・ラインを突破され、クリミア半島南西端のセヴァストポリに押し込められた。

 セヴァストポリから負傷者や補助部隊を運び出し、武器、弾薬を補給する輸送船団が組織され、Sボート艇隊がその護衛に当たった。
ハンスらは、昼間はセヴァストポリ要塞西の湾内に潜み、敵の砲火、空襲を避けた。

 輸送船団は夜、セヴァストポリに着き、荷役を行い、すぐ出航する。

 「敵の魚雷艇は、船団が機雷原を抜けたあたりで待ち伏せしているはずだ。」
「敵の出鼻をくじき、魚雷発射を妨害するのだ。」

 暗闇の中、ハンスらのSボートは船団を先導し、機雷原を抜ける。
黒雲が垂れ下がり、白波が立っている。

 ズンズズズン
要塞方面の空は、砲火でオレンジ色に輝き、その輝きが生きもののように息をする。

 ハンスはブリッヂの天井から身を乗り出し、双眼鏡であたりを凝視する。
風はまだ冷たい。
船団は航路の変更を頻繁に繰り返すので、護衛隊の監視範囲も広くなる。

 「左舷前方、エンジン音!」
見張り兵の一人が叫ぶ。
確かに、風に乗って低い音が途切れ途切れに聞こえる。

 「信号送れ、左舷前方に敵!」

 「くさび形陣形!」
「砲戦用意!」
「左20度、全速前進!」


     
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