gooブログはじめました!

第3話(4)

 救出作戦(4)

 照明弾の明かりを通して、1キロほど前方に、波間を疾走する黒い影がいくつか見える。
「撃て!」
敵を撃退することが、第一にやることだ。

 敵は単横陣で突進してくる。
敵の銃弾がうなりを上げて飛び去る。

 「ハンス、ブリッヂに入れ!」

 敵艇隊の右端に位置する魚雷艇の黒い影が、みるみる近づいてきた。
その艇腹に曳光弾が吸い込まれ、後方甲板から火と黒煙が吹き出した。
その艇は、とたんに制御を失い、後方に消え去る。

 その次の艇に標準を合わせ、射撃を始めたときには、敵の艇隊は猛スピードで前方を走り抜けようとしていた。
ハンスらのSボートは敵艇隊の航走波にあおられ、急激な回頭を行えない。

 敵の艇隊を追跡し始めたときには、かなり距離を開けられていた。

 輸送船団のいるあたりに照明弾が上がり、砲火がきらめく。
輸送船の1隻に爆発が起こり、火炎に包まれた。

 「くそ、やられた。火は敵を呼び寄せるぞ。反対方向を警戒しよう。」

 ゲルハルト艇長の読みは当たった。
船団の右舷方向を警戒していると、敵の魚雷艇群が横一列で突進してくる。
「単横陣、敵正面に全速前進!」

 敵艇の白い艇首波と銃火の閃光が急速に近づいてくる。
ハンスの乗るS49艇の前部機関砲が、休みなく火炎を吐く。
カンカンカン
ブリッヂの装甲板を銃弾が叩く。
我が艇の機関砲に取り付いていた2つの人影が、吹き飛ぶ。

 敵の魚雷艇群は、我慢できず魚雷を発射した。
Sボートの喫水は浅いので、魚雷に対しては安全だ。

 敵艇隊は回頭を始める。
速力が落ちた魚雷艇群の中の1隻で、ブリッヂ内に閃光の走るのがチラッと見えた。

      
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「大西洋」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事