11月初め、キエフが陥落し、南部戦線はほころび始めた。
クリミア半島の大陸への出入り口ペレコプ地峡にもソ連軍が進出、クリミアは孤立してしまった。
しかし、クリミアにいるドイツ第1航空軍団のおかげで、黒海西部の制海権はドイツ軍が握っていた。
そのため、クリミアへの補給に問題はなかった。
冬、黒海の大陸側では嵐が吹き荒れた。
ハンスらが出撃しても、敵の姿を見ることはなかった。
毎日、基地に嫌がらせ程度の空襲がある程度で、Sボート戦隊は久しぶりに平穏な日々を過ごした。
12月、6隻のSボートを伴った増援部隊がやってきた。
艇の乗組員は、それこそ種々雑多な出身の集まりだった。
少数のベテランの他は、士官候補生、少年兵、空軍や兵站部隊からの転属兵などだ。
人員の逼迫が感じられる。
彼らが持ってきたフランス・ワインのボトルが開けられ、ささやかな歓迎の席が設けられた。
「ドイツ本国の様子は?」
「大都市への爆撃は、激しくなってきています。」
「しかし、生産は順調で、まもなく登場する新兵器で形勢は逆転し、ドイツが勝利するでしょう。」
「こちらの方面ではソ連軍の攻勢が強まっている、と聞きましたが?」
「何とか持ちこたえてはいるが、予断を許さない状況だ。」
彼らは、東部戦線の状況が、新聞やラジオが言っているより、ずっと悪いことをうすうす感づいていた。
「大丈夫、一致団結して事に当たれば、必ず勝利への道は開ける。」
S49艇のクラスマン副長は、別の艇の艇長になり、ハンスが代わりにS49艇の副長になった。
悪天候の合間に、戦隊の訓練が行われる。
まもなく始まる春の戦いでは、対空戦が重要になるだろう。
20ミリ対空機関砲が1門増設されたのは、心強い。
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