アミルはハンモックの中でまどろんでいた。
4時間の立直が終わり、戦闘服のまま、靴も履いたまま、ハンモックに潜り込んだのは30分前だ。
“カン、カン、カン”
警報器の耳障りな音に叩き起こされる。
ハンモックから飛び降り、薄暗い照明の中、ステップを駆け上がり、ミサイル発射塔に飛び込む。
「全員、戦闘配置につきました!」
「遅い!」
エレル艇長が一喝する。
「我らがミサイル艇“ヘレブ(剣)”の戦士諸君!」
「敵がミサイルを発射し、我らを粉砕するまで1,2分の時間きりないのだ。」
「7秒以内に完了せよ!」
敵ミサイルの邀撃訓練が始まる。
ミサイル発見
フル出力で、艇は激しく回避運動を始めた。
アミルはバーを握りしめながら、操作準備をする。
チャフ・ロケット発射、相手ミサイルへの妨害電波発信
機関砲による邀撃
次に、敵艦船へのミサイル発射訓練だ。
捜索用レーダーでの敵位置の確認
射撃指揮用レーダーによる敵艦船への
“ロック・オン”
”ミサイル発射”
アミルは発射したミサイルの誘導を担当する。
訓練が終わる頃、夜が白々と明けてきた。
“戦争が始まるのだろうか?”
アミルの胸に不安がよぎる。
“まだ、人生が始まったばかりだというのに ------ ”
艇の背後には、黒々とした陸地が広がっている。
“我が祖国、イスラエル ------ ”
参考図:「The Yom Kippur War」、A.Rabinovich、Schocken Books、2004
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