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第6話(2)

放浪(2)

 秋山は1年間のベトナム任務を終え、冬のサンフランシスコ空港に着いた。
同じ輸送機で帰還した兵士の間で、一様に失望の声が上がった。
多少なりともの歓迎行事を期待したのだが、何もなく、兵士らはそそくさと基地へのバスに乗った。

 「なんと言う扱いだ!」
「反戦デモに会わせたくなかったんだろう。」

 アメリカ国内では反戦デモが拡大、政府支持デモとの衝突も起き、アメリカ国内は混乱していた。
そんな中、ニクソン大統領はベトナム戦争のベトナム化政策を発表、アメリカ軍の段階的撤退を始めた。

 戦地に居たときと比べ、味気ない1年間の兵営生活を終え、秋山は除隊した。
そして、念願のグリーン・カードを取得した。

 しかし、現実は甘くはなかった。
アメリカ経済は長く続いたベトナム戦争で疲弊し、下降局面に入っていた。
会社にエントリー・カードを出しても、大学卒業資格が必要だったり(アメリカは想像以上に学歴社会だった!)、過去の実績、経験を求められたりで、面接にも進めなかった。

 結局、アルバイトで生活費を稼ぎながら、大学を目指した。
兵役についたおかげで、 大学の授業料は免除された。

 しかし、大学も混乱していた。
反戦デモ、授業ボイコット、抗議集会、支持運動-----------。
校内にはピッピー姿の若者があふれ、学ぶ、という落ち着いた雰囲気ではなかった。

 秋山がベトナム帰還兵だとわかると、
「ベトナムで何人、人を殺した?」
「なぜ、志願したのか?」
「あんなひどい事をするなんて、あなた達、人殺しよ!」

     
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