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第3話(6)

山岳戦(6)

 戦死したオコナー少尉の後任として、イノウエ少尉が着任した。第100大隊からの昇進だ。皆の士気はあがる。

 また、負傷したモリモトが原隊に復帰した。
皆に背中をどやしつけられる。
「おい、元気そうじゃないか。ナポリの病院送りになったと思ったぞ。」
「野戦病院にいると、気が滅入ってしまう。歩けるようになったので、自主退院してきたよ。」
「ご苦労なこった。看護婦と仲良くやっていた方が良かったのに。」

 軍曹が少尉に呼び出され、2人の中年男を紹介された。
「ニュース映画のカメラマンさんだ。我々の戦いぶりを撮ってくれる。面倒を見てやってくれ。」
「よろしく、軍曹。勇ましいやつを撮らせてくださいな。」
「あんたらが怪我をしたら、裁判ものだ。こちらの指示には従ってもらいます。」

 ちょうど大隊は、ある山村の攻略を始めていた。
その村は、2m程の高さのオリーブ林の段々畑に囲まれており、戦車の行動は制限されていた。

 ドン、ドン、ドン
3台の戦車が砲撃を開始し、機関銃と迫撃砲が支援する中、歩兵が前進する。
「軍曹、ここからでは遠すぎる。もっと前に出よう。」
分隊は渋々前に出る。

 カメラマンは、ある廃墟の崩れた壁面から頭を上げ、アイモを回し始める。
軍曹が飛び掛って、カメラマンの頭を押さえつけた。
「バカヤロー、頭を吹っ飛ばされたいのか!」

 きょとん、とした顔でアイモを抱きかかえる。
「軍曹、耳元で鳴っていた、ブンブンという小うるさい音は何なんだ?」
「ヒットラーからの贈り物(銃弾)ですよ。」
カメラマンは、これ以上、平にできないというほど、身体を地面に押し付け、撮影を始めた。

 敵の激しい反撃も始まった。
段々畑を登ろうと腹を見せた戦車が、対戦車砲弾を食らって燃え出した。
歩兵は一旦後退し、榴弾砲が砲撃を始める。
村は炎に包まれた。

     
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