アメリカ軍が進駐してきた。
灰緑色の戦車、ジープ、トラックが何百台も通る。
グリーンの戦闘服を着た背の高いピンク色の頬をしたアメリカ兵の群れ。
昨日の敵、という感じは全然しない。
外国が切り取られてここに来た、という印象だ。
たちまちカマボコ兵舎が立ち並ぶ。
高台には高級将校用の住宅が建設されていく。
だだっ広いゴルフ場のような所に、ポツン、ポツンと原色のペンキを塗った住宅が建っていく。
それらを、腹をすかした日本人が、金網越しにぼんやり見ている。
軍の払下げ物資運搬の仕事も終わり、兵藤のタケノコ生活が始まった。
わずかな品の闇市での物々交換。
駅前の闇市には、食料品から雑貨、衣料、薬まで何でもそろっていた。
但し、値段は公定価格の100倍以上だ。
しかし、1ヶ月7合の米の配給だけでは餓死してしまう。
病院で血を売った。
米の買出しにも行った。
リュックを背負い、すし詰めの列車に乗り、郊外の農家に行く。
秦野近辺の農家で、横流し品の砂糖や煙草、塩と交換に、お米を手に入れた。
帰りが大変だ。
違法なので、警察の取り締まりに会うと、せっかくの米を没収されてしまう。
一番実入りがよかったのは、ラジオの修理だ。
秋葉原のテント村に行き、部品を仕入れる。
人づてに修理を頼まれ、出張修理に出向く。
断線や接触不良なら簡単だが、真空管だとお手上げだ。
修理代が入ったときは、一杯飲み屋で焼酎をあおる。
夜の闇市近辺は物騒だ。
特攻隊でも一部使われていた覚醒剤(ヒロポン)が市中に流れ、薬代ほしさに強盗が多発する。
縄張りを巡っての地元のやくざと外国人グループとの争いも絶えない。
街角では、売春婦(パンパン)が客の袖を引く。
最新の画像もっと見る
最近の「大西洋」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- クリミアの歴史(7)
- 「オリエント急行」バルカンを行く(9)
- ウイルスって何だろう(6)
- 不死身の通信ネットワークを構築せよ!(6)
- ヒトラーのいない第二次世界大戦(7)
- 不思議な病気(8)
- 秀吉の野望と挫折(9)
- 生命の源「アミノ酸」(6)
- 「ドイツ民主共和国」の消滅(8)
- ナイルの水争い(8)
- ドン・カザーク(19)
- 貧者の空軍(9)
- 地震って何?(7)
- 遥かなる海へ(16)
- 北軍兵士の見た「風と共に去りぬ」(12)
- 脳内麻薬を捜せ!(9)
- 19世紀パリの光と影(9)
- 若宮丸の航跡(9)
- 原爆スパイ(8)
- 「北京の55日」番外編(8)
- 「地球外生命」はいるか?(5)
- 「林彪事件」の謎(8)
- 金(きん)(8)
- 国歌いろいろ(6)
- 悪党(鎌倉末期)(6)
- 老化を防げ!(5)
- 森の中に消えゆくトラ(4)
- テスラー成功と挫折(7)
- 国境とは?(25)
- 日記(0)
- 大西洋(696)
- ソマリアの青い海(20)
- 吹雪のバルト海(24)
- ペルシャ湾波高し(24)
- ロック・オン(20)
- ワレ「雪風」ト共ニ(20)
- 騎兵隊、前へ!(26)
- 惑星の動きを探れ!(19)
- 東方見聞録序章(25)
- 元素を捜せ!(25)
- レアメタルは戦略物質だ!(6)
- 種はどこから?(17)
- 智の都、アレクサンドリア(20)
- 文化大革命の嵐(22)
- 世界は微生物で満ちている!(19)
- 連合艦隊の誕生(17)
- 鉄砲見参!(18)
- 成功は失敗の始まり(17)
- 黒船の影(19)
- 石油の一滴は血の一滴(15)
- 前門の虎、後門の狼(8)
- 月をめざして(18)
- 水の不思議と太陽の恵み(17)
- がんの正体をあばけ!(10)
- 旅行(0)
- グルメ(0)
バックナンバー
人気記事