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第2話(3)

混乱(3)

 アメリカ軍が進駐してきた。
灰緑色の戦車、ジープ、トラックが何百台も通る。
グリーンの戦闘服を着た背の高いピンク色の頬をしたアメリカ兵の群れ。
昨日の敵、という感じは全然しない。
外国が切り取られてここに来た、という印象だ。

 たちまちカマボコ兵舎が立ち並ぶ。
高台には高級将校用の住宅が建設されていく。
だだっ広いゴルフ場のような所に、ポツン、ポツンと原色のペンキを塗った住宅が建っていく。
それらを、腹をすかした日本人が、金網越しにぼんやり見ている。

 軍の払下げ物資運搬の仕事も終わり、兵藤のタケノコ生活が始まった。
わずかな品の闇市での物々交換。
駅前の闇市には、食料品から雑貨、衣料、薬まで何でもそろっていた。
但し、値段は公定価格の100倍以上だ。
しかし、1ヶ月7合の米の配給だけでは餓死してしまう。

 病院で血を売った。
米の買出しにも行った。
リュックを背負い、すし詰めの列車に乗り、郊外の農家に行く。
秦野近辺の農家で、横流し品の砂糖や煙草、塩と交換に、お米を手に入れた。

 帰りが大変だ。
違法なので、警察の取り締まりに会うと、せっかくの米を没収されてしまう。

 一番実入りがよかったのは、ラジオの修理だ。
秋葉原のテント村に行き、部品を仕入れる。
人づてに修理を頼まれ、出張修理に出向く。
断線や接触不良なら簡単だが、真空管だとお手上げだ。

 修理代が入ったときは、一杯飲み屋で焼酎をあおる。
夜の闇市近辺は物騒だ。
特攻隊でも一部使われていた覚醒剤(ヒロポン)が市中に流れ、薬代ほしさに強盗が多発する。
縄張りを巡っての地元のやくざと外国人グループとの争いも絶えない。
街角では、売春婦(パンパン)が客の袖を引く。

     
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