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第2話(4)

混乱(4)

 数百万人の軍人、兵士、軍関係者、市民が外地から引揚げて来た。
食糧不足が深刻だった。
食糧に関係したデモがよく起こった。
インフレがひどくなったので、新円切換えが行われたが、インフレは止まらなかった。

 ボツボツ電気関係の会社が立ち上がってきたので、兵藤も就職口を探したが、うまくいかなかった。
「片手じゃあねえ。」の一言。働き手は余っていた。
そんな時、近所の刺青をした、やんちゃなおじさんが、
「申ちゃん、港での沖仲仕の仕事なら、きついが給与はよいし、誰であろうと、うるさいことは言わないぜ。」

 翌朝、おじさんと桜木町駅前に立つ。
既に兵隊帽を被ったり、ねじり鉢巻をした多数の男がたむろしていた。
手配師がトラックで乗り付けてくる。
「本牧町埠頭、石炭荷役、1日200円、25人、どうだ?」
「おいよ!」おじさんが手を挙げる。
トラックは、手配師が選んだ人間を積み込み、走り去る。

 何台目かのトラックが走り去った後、やっと食糧荷役の仕事が来る。
兵藤は手を挙げ、手配師に走り寄る。
「片手じゃ、無理だ!」
「この背負いかごがあれば大丈夫、前にも荷役の仕事をやったんだ。」
手配師は面倒くさそうに、トラックのほうにあごをしゃくった。
「へまをしたら、日当なしだぞ!」

 倉庫からはしけに人海戦術で荷を運ぶ。
連合国からの援助物資だ。
20キロぐらいのメリケン粉の袋を担ぐ。
岸壁とはしけには幅50センチぐらいの板が渡してあるだけだ。
はしけが揺れるので、それに合わせて一気にわたるのだ。
最初はふらついたが、何とかなった。

 肉体労働には向いていなさそうな細身の男が、バランスを崩して海に落っこちた。
引き上げられた男は“気合”を掛けられた上、放り出された。
“民主化”とは程遠い世界だ。

     
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