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第3話(3)

 ラザフォードからの手紙(3)

 私は退院後、再び砲兵隊将校として従軍した。

 そして、戦争が終わった。

 つらく長い4年間だった。
私は物理工学研究所に戻ったが、若い研究者の多くが二度と戻ることはなかった。

 全ての物資が欠乏し、食べ物にも事欠いた。
さらに、戦勝国による法外な賠償金請求でハイパー・インフレーションが起こった。

 そのような状況の中、ラザフォードから手紙が来た。

    親愛なるガイガー君へ

 無事に帰還されたのこと、なによりです。
私も前途有望な弟子を何人か失いました。

 君の方で、装置や物質など手に入らないものがあったら、言ってください。 
少しはお役に立てると思います。

 ところで、ビック・ニュースがあります。

 私は、窒素原子核にラジウムからでるアルファ粒子をぶつけ、窒素原子核を構成する陽子(水素原子核をつくる正電荷を持った粒子)の一つを叩きだすことに成功したのです。

 その結果、生まれたのが酸素原子核というわけで、世界ではじめて人工的に原子核変換を実現しました。
原子構造の解明が、さらに進むと思われます。

           アーネスト・ラザフォード          

(注)
 窒素原子核の持つ陽子数は7(原子番号7)、アルファ粒子のもつ陽子数は2、2つが合体すると陽子数は9、その内の1つの陽子が叩きだされたとすると、合体したものは陽子数8(原子番号8)の酸素原子核になる。
     
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