土曜の午後と日曜は休養タイムだ。
整備や補給に時間をとられることはあるが、5日間の緊張からの開放感に浸ることができる。
それぞれ、つりをしたり、ゲームをしたりして過ごす。
ビデオやカラオケ、読書、運動と各人各様だ。
大塚は、少し涼しくなった夕方、真っ赤な大きな太陽が砂漠の彼方に沈むのを飽きずに眺めていた。
人生に選択の機会は何回か訪れるものだが、その時々の選択により、人生大きく変わるものだなあ、と思う。
大塚が理工系大学を卒業したとき、第2次オイルショックの直後で、就職はあまり良くなかった。
海が好きだったので、たまたま海上自衛隊の幹部候補生試験を受けたら、合格。
江田島の幹部候補生学校で1年間鍛えられ、娑婆っ気を抜かれた。
そして卒業後、掃海部隊に配属された。
2年間の勤務の後、掃海作戦の地味だが、前線勤務に近い緊張感に引かれ、第一術科学校の掃海課程に入学した。
学校では掃海方法を学んだほか、海中に潜り、機雷や爆発物を除去する技術も学んだ。
硫黄島での実機雷を使った激しい訓練を経て、掃海艇の処分士となった。
3年間の経験を経て、今回、掃海艇“にいじま”の処分士として本作戦に参加しているのだ。
ダイバーでペアを組む中村3曹がやってきた。
「大塚2尉殿は、なんで掃海部隊を希望されたんですか。」
「この緊張感がたまらないんだ。それに海に潜れば“自由”だしね。」
「しかし、2歳になる娘のことを思うと、他の選択枠もあったかな、とも思うよ。」
「中村はどうなんだ。」
「自分は潜るより能がありませんから。ここに居なければ、海上保安庁に入っています。」
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