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第3話(4)

捕らわれて(4)

 井上航海士らが呼ばれた。
しばらくして、船がグッとスピードを落とす。
黄褐色の大地が見える。

 甲板上が騒がしくなる。
どうやら投錨しているようだ。

 何人もの男たちが乗り組んできた。武器は持っていない。
襲撃者たちと大騒ぎをして、抱き合っている。
見張りが交代した。

 今度の男たちは、今までの男たちより規律がゆるい。
赤いポロシャツを着、ジーンズをはいた、すが目の若者が乗組員の中に入り込み、金目の物を取り上げた。

 アンカーに引っ張られ、船はゆっくりと首振り運動をする。
沖の青い海が見える。やがて陸の白い町並みが目に入る。
緑は僅かで、荒涼とした土地だ。

 ここソマリアでは、1991年に内戦が勃発、それ以来20年以上にわたって、各氏族間や軍閥間の抗争が続いている。
北部、中部には暫定政府が、南部の首都には中央政府ができたが、統治能力は弱く、各地で武装組織が群雄割拠しており、実態は無政府状態だ。

 そのため、自国海岸のコントロールができなくなった。
それを狙って外国の大型漁船が漁場を荒らしまわった。
また、放射性廃棄物などの有害物質のゴミ捨て場にもなった。

 生活の場を失った漁民や給与が支払われなくなった兵隊などが、外国漁船を狙った金品強奪の海賊行為を始めた。
それがエスカレートし、ソマリア沖を多数航行している外国船舶もターゲットになった。

 商船をハイジャックし、船と乗組員を盾に、身代金を巻き上げようというものだ。
そして、それが20%~30%の確率で成功したのだ。
今では、母船と快速ボートを持った20から30もの攻撃グループがあり、海賊稼業がソマリア沿岸のビッグビジネスになっている。

 この状態に対し、各国は自国船を守るため、艦艇をアデン湾に派遣している。
また、協同して海賊の活動を押さえ込む狙いで、多国籍からなる「第150合同任務部隊(CTF-150)」を創設した。

参考図:「The Pirates of Somalia」、Jay Bahadur
     
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