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第3話(5)

 救出作戦(5)

 昨夜沈められた輸送船の漂流者を救助していると、数機のシュトルモビクが襲ってきた。
海面すれすれの低空で現れたので、応戦のいとまがなかった。

 1隻のSボートは、たちまち蜂の巣のようになり、火炎を吹き上げ、横転して波間に消えた。
艇から撃ち上げる機銃弾が機体に当たり、火花を散らすが、火を噴かない。

 必死の回避運動をしていると、突然、敵機はサッと大陸側に飛び去った。
友軍の戦闘機2機が、上空に駆けつけてくれたのだった。

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 5月9日、ようやくセヴァストポリ撤退命令が出た。
海軍は全力を挙げ、砲撃下の港から将兵を撤退させようとした。
Sボート戦隊も輸送船の護衛に当たった。

 しかし、すでに空軍の援護なく、輸送船は沈められ、脱出できた将兵は半数にとどまった。
3日後、セヴァストポリは陥落し、2万人が捕虜となった。

 翌日の夜、ハンスらの乗るSボート3隻は、ひっそりとセヴァストポリ要塞西のヘルソネス岬に近づく。
黒々とした岸壁が目の前に広がる。
散発的な閃光が光る。

 補助エンジンを使い、微速で海面を捜索する。
海に逃れた最後の脱出者を捜すためだ。

 多数のライフジャケットを着た死体が漂流している。
多くの馬の死体も混ざる。

 メガフォンで“ドイツ兵はいるか?”と呼びかける。
“戦友!”
波間にかすかに叫ぶ声。
筏に乗った数人の漂流者を見つけた。

 このようにして、Sボート艇隊はドイツ兵ら1千余名を救出した。
その3分の1は負傷していた。

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 ソ連軍はルーマニア国境を一部越えており、黒海Sボート戦隊の役目は終わりつつあった。
幹部達と話をする。

 「今のうちに撤退しないと、ドナウ河が通れなくなりますよ。」
「ルーマニアやブルガリアへの配慮から、撤退は難しい、というのが司令部の判断だ。」
「いつも、そうやって現場が割を食う。」

     
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