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第4話(1)

 セヴァストポリを死守せよ(1)

 セヴァストポリ陥落翌日の夜、ヘルソネス沖でハンスらに救出されたギュンター・コショレク兵長が、Sボート艇上で語った。

[ ギュンター兵長の話 その1 ]

 我々第5軍団第98歩兵師団は、昨年の10月からクリミア東部のケルチ陣地にこもり、ソ連軍の攻撃を幾度となく、撃退した。

 ソ連兵は、味方の死体の山を乗り越え、突撃してきた。
私のMG42軽機関銃は熱くなり、雪で冷やさねばならなかった。
しかし、これは戦いの序の口に過ぎなかった。

 4月8日、ソ連軍の本格的なクリミア攻撃が始まった。
 クリミア北部のペレコプ地峡が突破され、ドイツ軍のグナイゼナウ・ラインへの退却が始まった。

 退路を遮断される恐れが出てきたため、第5軍団にセヴァストポリへの退却命令が下った。

 軍曹が分隊員に指示する。
「セヴァストポリまで150キロある。必要最小限の装具だけ携帯せよ。」
わが師団には輸送用車両はない、火砲、弾薬、糧秣など、全て馬で運ばねばならない。

 大騒ぎになった。
持っていけない武器、弾薬などは爆破され、宿舎には火を放たれた。
敵が目の前にいるというのに!

 夜、出発。
暗闇の中、兵站部隊、砲兵隊、歩兵の長い列が続く。
我々は後衛部隊に配属された。

 背嚢プラス11キロの機関銃の重さがこたえる。
4月だというのに、汗がしたたり落ちる。
私のペア、給弾手のピーターセンも弾薬の重さにあえいでいる。

 「敵の戦車が追ってこなければよいのですが。」
「山岳地帯だ。敵も慎重に追撃してくるさ。」

 小休止をはさんで、昼も行軍する。
後方で爆発音が連続して起こる。
敵も、我々の退却に気づいたらしい。

 「対空戦闘!」

 ヤクが山肌を縫うように襲ってきた。
道路際の溝に飛び込む。

 ドカン!
荷車が大爆発を起こし、周りの馬も人も吹き飛ばした。

     
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