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第3話(4)

フジ・ショック(4)

 数分して軍警の車と救急車が来たので、3人のところに駆けつけた。
3人は多数の銃弾を受け、血の海の中にいた。
2人は絶命しており、真田さんは虫の息だった。

 胸にあいた孔から、息をするごとにゴボゴボと血が吹き出している。
病院に行く救急車の中で、武田が握っていた真田さんの手が急に冷たくなった。

 センデロ・ルミノソによると思われる、3人の専門家の殺害は、日本政府に衝撃を与えた。
直ちに、ペルーにいる全専門家の引き上げが決定された。

 武田も慌ただしく引き継ぎをし、よくしてくれたロドリゲス所長、サンチャゴ、マルコらに別れを告げた。
Adios. Muchas gracias!」
 
 帰国の挨拶に、JICA事務所に立ち寄ったとき、黒田さんがこっそり言った。
「ペルー政府は、専門家を引き上げることはテロに屈することだ、と内心怒っているんですよ。」
「ペルーには日本の技術援助が必要なんだ。また来てくださいよ。」

 フジモリ政権は、国民の痛みを伴う構造改革を断行し、国際金融社会への復帰を果たした。
その結果、年間のインフレ率は10%台まで下がり、1993年以降のGDPが数%上昇する経済回復ぶりを示した。

 極左武装勢力に対しても、軍の助けを借りて、対決する姿勢を明確にした。
対テロ部隊を増強しただけでなく、農村部では自衛団に武器を供与し、都市部では強力な諜報機関を新設した。
政府とゲリラの間で、目に見える戦い、水面下の戦いが続いた。

 その後、カリスマ的指導者、グスマンを始め、有力メンバーが次々と逮捕され、センデロ・ルミノソは弱体化していった。
MRTAも多数の幹部が逮捕され、100人程度のメンバーを有するのみの組織となった。

参考図:「ペルー燃ゆ」、桃井和馬、アイ・ビー・シー、1991
     
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