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第4話(2)

渡河(2)

 カッシーノ前面での渡河に失敗した第5軍は、今度はそれより上流の渡河点を選び、カッシーノを側面から攻撃しようとした。

 第100大隊(第34師団)はその先鋒の1つに選ばれた。
「こちら岸の地雷は工兵隊が除去した。白いテープを目印に進むのだ。」
「護岸壁まで一気に進み、そこで体勢を整え、対岸へ突っ込むぞ。」

 暗闇の中、前を行く兵の背嚢をたよりに進む。
味方の砲撃による爆発の炎で、兵士の黒い列がぼんやり浮かび上がる。

 足首が埋まる泥海の中を、川まで半分ほど進んだ時、照明弾が上がる。
ゆらゆらと白い光を発しながら、落下してくる。

 ドカ、ドカ、ドカン!
 突然、関を切ったように砲弾が飛んできて、あたり一面に爆発する。
数十m前方で、数人の黒い影が吹き飛ばされるのが、爆発の光の中で見えた。
たまらず、泥の海の中にダイビングする。

 弾幕が移動した。あちこちで悲鳴が上がる。
前進して、敵を追っ払うしかない。

 川の位置を示す白燐弾の煙がスクリーンになって、前方に広がっている。
カカカカカ! ダン、ダダン!
そのスクリーンを切り裂いて、機関銃の曳光弾の束が対岸から飛んでくる。
迫撃砲弾がところかまわず落下する。

 地雷にやられた兵士のそばを通る。
「助けて!」泥の中でもがいている。

 前を行く、イトーが足を払われたように倒れた。
「後で助けにくるぞ。」

 護岸壁の手前の溝に走りこむ。
「クソッ、なんてこった!」
「味方はズタズタだ!」
軍曹が分隊員を確認する。
「9名だ。ほかの3名の様子はわかるか?」
「イトーは川の手前でやられました。」
「ニシオカは途中の砲撃で負傷です。ササキはわかりません。」

          
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