各部門では、同じテーマを2つのチームに与え、競わせた。
ロケットの誘導制御には2つの方法が考えられる。
一つは慣性誘導システムであり、もう一つは電波誘導システムだ。
ワシリエフは慣性誘導システム開発のチームに入った。
「慣性誘導システムの方が、実績があり、熱や振動などの環境変化に強い。」
「いや、電波誘導システムの方が、軌道修正が容易で、目標到達精度も高い。」
結局、電波誘導システムの方は、ソ連のエレクトロニクス技術がまだ不十分ということで、採用されなかった。
ロケット・エンジン部門では、グルーシュコのチームが新しいエンジンRD-101、続いてRD-103を開発し、ロケットの推力を向上させた。
制御部門でも、R-1の水平ジャイロ、垂直ジャイロにかわり、回転型ジャイロを開発し、より信頼性を高めた。
また、新材料の開発や推進剤タンクの外側を、そのままロケットの外殻とすることにより、ロケットの大型化、軽量化と推進剤量の増大を可能にした。
いよいよ、射程1万キロメートルの大陸間弾道弾(ICBM)の開発、その先にある、宇宙への人工衛星打ち上げの道筋が見えてきた。
しかし、ここで難関にぶつかった。
エンジン1基の出せる出力が、限界に近づいていたのである。
そこで考案されたのが多段式ロケットで、ロケットを積み重ね、1段目のエンジンが停止したとき、2段目のエンジンを点火する方式だ。
さらに1段目に同種のエンジンを束ね、出力を大きくする。
「これは良い方法だ。さらなる大型大出力のエンジンを開発する必要がなくなる。」
「しかし、エンジンを同期させて、同じ出力を出させるのは難しいぞ。」
「ロケットの重量も増えるだろう。」
参考図:「スプートニク」、ジョアン・フオンクベルタ、筑摩書房、1999
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