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第5話(2)

モンテ・カッシーノ(2)

 「Go for Broke!(当たって砕けろ!)」
ワアー
分隊員が一斉に駆け上がる。

 銃弾が頭を掠める。
敵の塹壕に、皆で合図して手榴弾を投げ込む。

 タタタタ!  軍曹がトミー・ガンを腰だめにしながら、塹壕に飛び込む。
敵兵がトーチカに逃げ込むのがチラッと見えた。

 ドン!  バズーカでトーチカ入口の戸を吹き飛ばした。
「降伏しろ! エルゲーベン!」
数人の兵が、内部で手を上げている。

 「出て来い!」
軍曹が中を覗き込んだ瞬間、トーチカの奥から閃光が走り、軍曹が倒れる。
「クソ野郎!」
タナカは自動小銃をフルオートで撃ち込み、ドイツ兵を皆殺しにした。

 軍曹は首を撃たれていた。
息をするたびに、大量の血がゴボゴボと、空気と一緒に流れ出している。
「軍曹の仇討ちだ。カシーノから敵を追っ払うまで、捕虜はださないぞ!」

 ササイ兵曹が、軍曹の代わりに指揮をとる。
頂上に近づくにつれ、敵の抵抗が激しくなる。

 キャッスルヒルの背後に445高地が控え、その後にモンテ・カッシーノ修道院がそびえている。長い道のりだ。

 その日の終わり、やっと頂上から敵を追い出した。
敵の塹壕にもぐりこむ。夜、敵の逆襲が予想されたが、岩ばかりで、スコップでは塹壕を掘れないのだ。

 照明弾が、山の荒涼とした風景を映し出す。
ズズズン!
敵の砲撃が始まった。巨大な炸裂音で、空気が熱くなる。
周りの地面は、ぶるぶる激しく振動し、土くれが塹壕の上に降り注ぐ。
硝煙の臭いが鼻をつく。
歯をくいしばって耐える。
正気でいられるのが、自分でも驚きだ。

     
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