第5軍はラピド川上流から渡河した。カッシーノ山塊を踏破して側面から攻撃し、カッシーノ地区の制圧を目指した。
第100大隊は第34師団の一翼をにない、カッシーノ山塊の左側を進み、モンテ・カッシーノ修道院に続く山道の手前にあるキャッスル・ヒルを攻略する任務を与えられた。
カッシーノ山塊は石のごろごろした岩山で、標高が数百メートル内外なのに峡谷は深く、山の斜面は急峻だった。
ドン、ドン、ドン
敵の観測点があると思われる、高地の頂上付近を砲兵隊が叩く。
爆煙と発煙弾の煙が、ゆっくりと山の斜面を降りてくる。
第100大隊は分隊ごとに分かれ、峡谷を渡り、滑りやすい斜面を登り始めた。
「敵は待ち構えているだろうな。」
「身を隠す所が、ほとんどないぞ。」
ゴトーの心臓は、口から飛び出しそうだった。
----今度ばかりは、やられるかもしれない----
カッカッカッカッ
前の分隊の1人が倒れる。岩でうまく偽装したトーチカだ。
撃ちまくられる。
岩場の背後に回りこみ、鉄条網を切り開いて、トーチカの横に出た。
しかし、数m進んだところで機銃弾を浴びせられる。
タ、タ、タ、タ、タ、タ
「別のトーチカだ。」
死角が無いように、火線を張っている。
ヒュ、ダダン!
岩を穿つ機銃弾と、不規則に落ちてくる迫撃砲弾のため、身動きできない。
「タケカタ、中隊本部に行って状況を説明し、バズーカ兵を連れて来い。」
しばらくして、バズーカ兵がロケット筒をかかえて登ってきた。
「あそこだ。」 岩の隙間から狙う。
ドスン!
1発目、トーチカの手前で爆発した。
2発目、トーチカ壁のコンクリートを吹き飛ばした。
敵の手榴弾が降ってくる。
3発目、トーチカの銃眼からオレンジ色の炎と黒煙が吹き出した。
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