氷蒼螺雪

霜月萩による復活中心の二次創作小説サイトです。

行く年来る年(復活*バジル+綱吉)

2009年02月10日 | リボーン小説
※お正月小説の拍手再録です。



「あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとうございます」

ぺこり、と互いに対面しながら(しかも正座だ)頭を下げる図は少々気恥ずかしい。
しかし、相手に深々と礼儀正しくされてはこちらも返さねば失礼だ。

「バジル君、相変わらず律儀だよね」

苦笑しながら言えばいえ、そんな…と謙遜の声が返ってくる。


そもそも、年末に突然何の連絡もなく帰ってきた父親が連れてきたのが目の前の少年だ。
信じられないことに父親の弟子兼部下だという少年は名前や見た目からも一目瞭然なように外国人だ。
多少時代劇染みた口調だとはいえ(これは絶対に父親の仕業だと綱吉は思っている)彼は自分以上に流暢に日本語を操るとはいえ、日本で日本らしい正月を過ごすのは初めてであるらしく家族総出の年末掃除や買い出し、更には母さんのお節作りまで興味津々といった風に手伝ってくれたのだ。
時計の針が0時を過ぎて新年になった今、父親はだらしなく酔っ払って寝てるし、母さんは追加の料理に後片付けに忙しい。
ビアンキとリボーンは初詣。
子供達は起きていようと頑張っていたがついに沈没しておねむだ。

だから今、こうしているのはバジル君と俺の2人なのだ。

「まあ、でもバジル君もお疲れさま。ごめんね母さん容赦なくこきつかっちゃって」

母親は父親が帰ってきている上にこんなに大勢で過ごす正月にやや浮かれながら何時も以上に張り切っていた。

そしてその余波は当然の如く息子たる綱吉にも派生し。
正直、バジルがいなければこの年末を綱吉は耐えきれなかったかも知れない。
父さんもたまには良いことをするものである。

「いいえ、親方様からお聞きしていた日本の正月をこうして体験させて頂いて本当に楽しかったですから」

だから気にしないで下さい、と続けるバジルに綱吉も顔を綻ばす。

「こっちこそ…毎年さ、俺と母さんだけの侘しい正月だったからバジル君達のお陰で嬉しかったよ」

ほんの数年前まで正月なんて適当に掃除して無駄にハイテンションな母親と2人だけの正月ははっきりいってつまらない。
その上リボーンがくる前は年賀状の一枚さえ来ないようなダメツナだった。

初詣に一緒に行ってくれる友達の1人もおらず、ただ家に引きこもるだけの人間だった。

それが今ではまるで違う。



そして今年も、この状態が続いてくれると…信じていたい。


「ですが…今は違うのでしょう?」

「…バジル君?」

「昔はそうだったやも知れませぬ。しかし『今』は、今年は…否、『これから』は違うのでしょう?」

「…バジル君」

どうして、分かったのだろう。
今まで当たり前にあったものがこれからも当然のようにあるとは限らないことに不安を感じたことを。

「どうし…「ツナ~!!」

「へ?」

「あれは…山本殿ですか?」

「ごらぁ!こんな夜中にデカイ声出して10代目に迷惑だろうがっ!」


いや、寧ろ君も近所迷惑だから…とは心の中でツッコミながら。

「ご、獄寺くん…」


呆然としたままの綱吉にバジルは珍しく意地の悪い笑みを浮かべる。


「いくら沢田殿が嫌がっても、彼らは逃してくれないですよ。…もちろん、拙者も」

最後のセリフは綱吉には聞こえないように付け加え、笑う。

「そうかな…。うん、ありがとう、バジル君」

ふわり、とはにかんだような笑みを浮かべる綱吉の姿にバジルは思う。


彼が不安を感じていることは分かっていた。
しかし、第三者から見るとそんな不安は杞憂にしか見えない。

どうやら過去の状況から先の未来に不安を感じているらしいが、あの守護者達が彼を諦める筈がない。


「…少し、羨ましいですね」


「え、何か言った?バジル君」

「いいえ、何でもありませぬよ。沢田殿」

内心を悟られぬよう完璧な微笑で覆い隠す。



とりあえず、今は新年一番に彼の笑顔を見られた幸福を感受して。





「今年も、よろしくお願い致します。沢田殿」







コメント:何故にバジル君(笑)←多分、沢田家にいても違和感がなかったから。

最後は何故か黒くなっちゃいました(苦笑)
久々のバジル君に口調が忘れてるよ、私…(汗)



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