氷蒼螺雪

霜月萩による復活中心の二次創作小説サイトです。

約束を果たすのは、今(復活*正一+綱吉)

2009年02月03日 | リボーン小説
※今週号の派生話。







どうしてだろう、と綱吉は純粋に疑問に思う。


初めは、敵として。


(以前会ったことがあるといわれても生憎綱吉は覚えていなかったが)


この男を、殺さなければ元の世界には帰れないと告げられて。


正直、躊躇した。

しかし、それは彼――入江正一云々がどうという訳ではなく、ただ単に自分が誰かを傷つけるとこを嫌がっただけであった。

正直、第一印象は最悪。

それもそのはずだろう。

敵として、そして自分達がこの世界へ来てしまった原因のような話を聞かされればいくら綱吉だとて良い感情なんて沸くはずがない。



しかし、ここにきてその全てが崩壊してしまった。



幻騎士を辛くも撤退させてたどり着いた例の装置の下、入江正一がいたのは想定内。
その正一の下に仲間が人質に取られていたのは想定外。

そして、その入江正一が実は味方だと知ったのは本当に想定外の驚きだった。



初めは、俄かには信じられなかった。

当然だろう。

今まで敵として、彼に到達するために頑張っていたのにその彼自身に味方だと言われてしまえば今までの戦いはなんだったのかと言いたくなる。

しかし、彼曰くこの戦いが、俺達を成長させるとことこそが必要だったのだという。


・・・そのためには、犠牲も必要だと。


そのためだけに、京子ちゃんやハル、イーピンといった無関係な人間を巻き込んだという彼に瞬間的に反発した。

しかし、彼から意外な言葉を聞くことになる。


その計画を立てた片翼を担っていたのが、未来の自分だという。


信じられなかった。


信じたくなかった。



この未来の、果てしない希望のなさに愕然とした瞬間だった。



そこまでしなければならないのか。


そうまでにしなければ俺たちの未来は絶望的なのか。




イタリアにいるザンザスたちの勝利報告に一先ずの安堵に心落ち着かせた瞬間。


それまでの綱吉の不安を肯定するようにミルフィオーレの首魁、白蘭と初めて合間見えた。



白蘭の印象はひたすらに何を考えているのか分からない人、というものに尽きた。

彼曰く、イタリアの総力戦も、正一による裏切りも、全て想定内の出来事だという。

仮にも、副官だった正一に対する、感情のなさ。


裏切られたというなら、怒りを見せてもいいのに彼は常に笑顔で接して見せた。

それすらも、どうでも良いように。

自分達をこの場で簡単に殺せるだろうに、それじゃあつまらないとまるで玩具を見下すように。


そんな彼に怒りを、否定をぶつける正一の方が感情的だった。


そして、思った。




そう。

白蘭の言葉は間違っていない。


それなのに何故、彼は自分に全てを預けてくるのだろう。


確かに、この戦いで強くなれた自信はある。

けれど、この目の前の出来過ぎたゲームの采配者であるような白蘭に、綱吉は不気味な恐怖を感じる。

そもそも、自分は臆病なダメツナであり多少のことがあろうと変わり映えはしないのである。

そんな自分に、何故彼は自分の命の危険さえ省みず信頼してくれるのだろう。


これが、自分の守護者――友人達ならば分かる。
骸や髑髏、雲雀さんは想像出来ずともそれでもこれまでの戦いで多少の意思疎通は可能だ。

しかし、入江正一に関しては綱吉は全く情報を持っていない。

持っていてもそれは敵だと勘違いしていただけ。

自分は全く正一のことを知らないのだ。

それなのに・・・・。


一体、未来の自分と彼は一体どういう繋がりをしていたのだろう。

しかも、あの雲雀さんまで巻き込んで。




不謹慎だが、この時、この白蘭の言葉によって初めて綱吉に『入江正一』という人間が本当の意味で刻み込まれた瞬間だった。


今まで敵として認識していて、それがすぐに味方だなんていくらなんでも綱吉も簡単に許容できない。
今まで散々甘いと言われ続けてきた綱吉ではあるが、さすがにこう何度も戦闘続きで、厳しいこの状況では簡単に警戒を緩めることは出来なかった。


けれど、この時。


綱吉は不思議に正一を簡単に信じることが出来た。


それは、彼の感情が図らずも白蘭が言ったように真正直で(恐らく、彼も元々は嘘はつけない性格なのだろう)彼の言葉に嘘はないと『直感』してしまったからか。

それとも、彼が『入江正一』だからか。


真偽の程は分からない。


だが、この時綱吉は正一の言葉を信じることに決めた。



この、未熟な自分に全てを賭けてくれた青年に。




「あの、入江・・・さん?」


一方的な通信の後、頭を抱え込むように苦悩する正一に、何と呼んでいいものか躊躇しながら綱吉は声をかける。
まさか綱吉から声を掛けてもらえるとは思わなかった正一はばっ、と勢い良く頭を上げて綱吉を見下ろしてしまう。

そんな必死の正一に、逃げそうになる綱吉だったがなんとか踏ん張ってその視線を逸らさないようにと努力する。


そんな綱吉の様子に気がついた正一はふわりと目元を緩める。

(あ・・・こんな笑い方、する人なんだ)


「さんはいらないよ。僕と君は本来なら同い年なんだし。・・・まあ、かといっても君の事だし言い難いか」

苦笑する正一に、綱吉は好感を持つ。

そして同時に彼の言葉を信じれば。


「あの、未来の俺は・・・あなたと、その・・仲が良かったんですか?」


くすり、と正一はついつい噴出してしまう。

本当に、彼は昔から変わらない。

ここで、白蘭を倒すために共闘しているだけの関係や利用し利用されるだけの関係だとは微塵も思わない辺り、本当に『沢田綱吉』だと思う。

笑われたことに不快感は感じないものの、彼の真意が分からない綱吉はただ困惑するだけだ。

それに謝罪して、正一は先ほどまでの絶望的な気持ちが払拭されていることに気がつく。


(ああ・・・彼は、本当に変わらない)




『綱吉君・・・正気か!?みすみす自分の命を代償にするなんて・・!!』

『だから?どの道この計画が失敗すれば俺も君も、雲雀さんも皆も・・・死ぬんだよ』

『だからって・・・!だからって、僕は・・・そんなこと、望んじゃいなかった!』

『・・・ありがとう。でも、俺は死ぬよ』

『綱吉君っ!!』




『でも・・・・』








「・・・どうして、そこまで俺を信じてくれるんですか?命の危険すら、犯して」




分からない、と困惑した表情の綱吉の問いに正一は穏やかに笑って見せた。


こんなに気持ちが凪いだのは、最後に彼に会ったとき以来か。






「それは君が、『沢田綱吉』だからだよ」











『でも、俺は死なないよ、正一』





『・・・・・・』




『今の俺は死んでも、過去の俺は死なない』




『それは・・・詭弁です!』




『うん。だから・・・信じて欲しい。過去の俺を。・・・新しい未来を紡ぐ未熟で、愚かで、ダメダメなダメツナの俺を』



『貴方は・・・残酷だ』



『それでも・・・』



『・・・それでも、信じますよ。未来でも、過去でも。貴方が・・・沢田綱吉である限り』









それは嘗ての、約束―――――。














コメント:今回正一と綱吉(と、スパナ)が同じコマに頻繁にいたなぁ・・と(笑)しかもちょっと綱吉が正一に意識を向けている?とか思った末の妄想が(苦笑)やりすぎですね、うん(反省しろ)





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