※久々過ぎる更新すみません(苦笑)
髑髏視点のお話です。
多少本誌のネタばれあり、ご注意ください。
それは、偶然のようなものだった。
そのとき、そこに、彼がいたから。
だから、聞いてみようと思った。
でなければ、口下手な自分が自ら彼に声を掛けるには聊か難しい問題ではあるし、それ以前に彼の周りには雨の守護者や、嵐の守護者が何時もいて早々気軽に声を掛け易い雰囲気ではない。
無論、あの嵐の守護者はともかく、雨の守護者や、京子やハルという髑髏にとっては未知の相手に気後れしている部分が大部分ではあったが。
でも。
その時は違った。
その時、彼は珍しく1人で。
あの家庭教師の赤子もおらず、何時もいるメンバーも見当たらず本当に1人きりだったから。
だから、つい。
これがチャンスだと思ったのだ。
「・・・ボス」
緊張の余り掠れた声になった呼びかけに、彼は意図も簡単に応じてくれた。
「・・・クローム?どうしたの、珍しいね」
一瞬、彼の大きな吸い込まれそうな瞳が驚いたように開き、しかしすぐにふわりと目元を染めて笑みを形どる。
そんな彼の動作を見ながら不意に好きだな、と思う。
それは、恋という名の甘酸っぱいものでもなく。
かといって、骸様に捧げるような崇拝するようなものでもなく。
ただ、純粋に綺麗なものを見たときのような心地がする。
彼の、男の子にしては大きめの幼さを残すその瞳が、余りに純粋で、綺麗で、見惚れてしまいそうになる。
一瞬、違う世界にのめり込みそうになる自分を叱咤して、本題を思い出す。
「ボス。・・・お話が、あるの」
「話?」
きょとん、とする彼の表情は何処までも幼い。
けれど、この瞳が炎を宿したとき、誰よりも力強く頼りになる事を、髑髏はもう知っている。
「うん、いいよ。なんの話?」
疑う事を知らぬような瞳。
柔らかな、声音。
今までの髑髏の世界にはなかった、眩しいもの。
命の全てを預けて崇拝している骸様にも、持ちえないもの。
だからいつも、この人の前にいるとほんの少し、緊張する。
それでも、髑髏は彼にどうしても聞きたい事があった。
命に関わる事じゃない。
どうしても聞かなくてはならないものではない。
けれど、髑髏は一度この人から直接聞いてみたかったのだ。
「骸様から、聞いたの」
「骸から?」
瞬間、眉根を寄せる綱吉に髑髏は少し目を伏せる。
「骸様が、ボス達にしたこと・・・」
「クローム・・・」
「骸様が、ボス達に酷い事をしたこと」
それは骸よりの髑髏としては、何ともいえないものだった。
骸は、骸の理想として彼らは本気で世界大戦を目論んでいたのだ。
髑髏としては、骸の理想を叶えてあげたい。
けれど、それが彼ーーー綱吉に阻止させられたからこそ、髑髏は骸達に出会えた。
綱吉が骸を倒してくれなければ、髑髏は今頃当の昔に死んでいただろう。
だから、本当ならば綱吉に感謝しなければならないのかもしれない。
そう考えれば、髑髏の複雑さがより一層増す。
けれど、極論を言えば、それはもう過去の話。
仮定の話をしても今現在こうして髑髏が骸に助けられ、綱吉と出会った事実は変わらない。
そして、髑髏も今その話をしたい訳ではないのだから。
「ボス、骸様のことをどう思ってる?」
「どう、って・・・・」
「憎んでる?嫌ってる?ボスの大切な人たちを傷つけたから・・・」
珍しく雄弁に言い募る髑髏に、綱吉が目を白黒させる。
「クローム・・・君は・・・」
一瞬黙り込んだ後、静かに綱吉が聞き返す。
「君は・・・何を聞きたいの?」
「私・・・は・・」
幾ら鈍い綱吉だとて、あの言葉が髑髏の本心だとは思わない。
彼女は、本当に骸の事を大切に思っているのだから。
だから問い返した。
きっと、彼女が本当に聞きたいことは、それではないだろうから。
「どうして」
「どう・・・して」
「どう・・・」
その先が、見つからない。
感情と言の葉が、接続しない。
もどかしげに、自分の思考をぐるぐると掻き回す。
「大丈夫」
瞬間。
もやもやとした、髑髏の中の混沌としたものが、その一言で波打つように収まった。
思わず、俯いていた頭を上げて彼を見返せば穏やかに、日溜りのような笑みを浮かべる綱吉がいた。
「大丈夫。例えそれがどんな事だとしても、俺は聞くよ。だから、ゆっくりと口に出してくれればいいよ」
そんなことを、言ってくれるから。
甘えてしまう自分がいた。
「骸様、ボス達に酷い事・・・したの」
「うん」
「ボス、骸様・・・嫌い?」
「・・・そうだなぁ。正直、好きとか嫌いとかで分けられないけど・・・今は、無事でいてくれれば良いと、思うよ」
「・・・どうして」
「え?」
「どうして、酷いことしたのにボスは・・・骸様を憎まないの?」
その言葉に、綱吉は朧げながらクロームが何を言いたいのか解ったような気がした。
「うん、そうだね。・・・俺も、ただの人間だから正直に言えば、皆を傷つけて町をめちゃくちゃにした骸を好きだとは、言えない」
気まずげに、俯く髑髏にけれど綱吉は苦笑を零す。
「でもね、少しは・・・知っているから」
「何を・・・?」
その質問に、綱吉は初めて沈黙を持って拒絶した。
けれど、骸と深層意識上で繋がっている髑髏には、そして犬や千種の言葉の端々からある程度彼らの過去を推測できる立場にいる髑髏には、彼が飲み込んだ言葉の続きが理解できるような気がした。
「それは・・・同情?」
「あはは、そんなことしたら殺されるよ・・・骸に」
笑いながら物騒な事を言う綱吉に、けれどあながち間違いではない事だと髑髏も思う。
「なんだろうな・・・確かに、同情という感情もあったと思う」
「・・・・・」
髑髏自身、その境遇は決して良いものではなかった。
それを哀れまれる事がどれほど惨めか、少しは骸達の気持ちも解る。
けれど、困ったように今度は自身が悩み始めた綱吉を見ると何故だか許せるような気がするのだ。
「でもさ。きっと・・・骸たちには骸たちの生き方があったんだと思う。だから・・・」
「・・・だから?」
「うん、そうだな。・・・幸せに、なって欲しいと思うよ。勿論、クロームにも」
どうして。
解らない。
きっと、クロームが一番聞きたかった事は、それなのだ。
「ボスはどうしてそんなに簡単に私達を受け入れてくれるの?」
血の繋がった母親は、凪を見捨てた。
血の繋がらない父親は、凪を見ようとしなかった。
クラスメイト達は、凪の存在を許さなかった。
それなのに。
何故。
それなのに何故、他人の、しかも元は敵であった骸の僕である自分にまでどうしてそんなに優しくしてくれるのか。
何故、敵であり、今もまた仲間とは言いがたい骸の心配をしてくれるのか。
今まで誰も凪の存在を許容してくれなかった。
見てくれる事すらなかった。
唯一、自分を見つけてくれたのは骸様だけ。
それなのに、何故。
気づけば髑髏は激情のまま全てを口に出していた。
何時もの髑髏らしからぬそれに、綱吉は最初どう答えていいものか悩んでいたようだ。
それを見ながら髑髏は自分が激情のまま叫んだとこを後悔し始めていた。
そんなことを髑髏に言われても優しすぎる彼には迷惑にしかならないだろう。
解っているのに、なのにこうして彼に甘えてしまう。
「ごめんなさい、ボス」
囁くような小さな声で謝る髑髏に、寧ろ綱吉が慌てた。
「ま、待って待って!髑髏が謝るような事じゃないから!!」
「でも・・・」
「いや、でもさ。嬉しかったんだよ俺は」
何故、と顔に出ていたのか無言で綱吉を見上げた髑髏の目に苦笑しながら笑う綱吉が飛び込んでくる。
「俺は、さ。骸の事も、髑髏の事も・・・本当に何も知らないから。こうして一緒に戦ってくれて入るけど本当にいいのかなってたまに思ってたんだ」
「ボス・・・」
「そりゃ、元々敵同士だったんだから・・・特に、骸にとって見ればその、言い方は悪いけど負けた相手・・・しかも大嫌いなマフィアに加担するなんて本当に嫌なんだと思う」
違う、と言いたい。
けれど、それを口にしていいのは髑髏ではないから。
少し寂しそうに笑う綱吉に髑髏は沈黙を貫く。
「だから骸や髑髏が何を考えているのか・・・正直、分からなかった。仲間なのにって思っているのは俺だけなのかなって悩んだりもした」
確かに、仲間というにはいささか自分たちの関係は複雑だろう。
骸様と目の前の気弱な少年は、過去命のやり取りをしたのだから。
それで直ぐに仲間とはそう簡単には行かないのだろう。
髑髏自身も、その事件自体には関与していないものの今の骸の仮初の肉体を提供している立場と、綱吉の仮の守護者という立場が複雑すぎて、何とも言えない。
「本当は・・・どこか心の中で骸を許せない気持ちもある。けど、それも全て受け止めたいと思ったんだ。だから知りたかった。だから心配だった。勿論、偽善的で独善的な気持ちだって分かってるよ」
それでもーーー、と呟く綱吉の姿に、髑髏は泣きそうになる。
分からなかった。
どうしてここまで自分たちを気に掛けてくれるのかが。
嬉しい反面、怖かった。
どう反応していいか。
もし嫌われたらどうしうようと。
けれど、きっとそれは彼も同じだったのだろう。
「それでも、俺は。こうして出逢えた以上は骸や、髑髏達と歩んで生きたいよ。過去の事がどうとか、同情だとか、取引だとか。全部ひっくるめて、それでも俺はこうして出逢って、名前を呼び合って、会話して、一緒にご飯を食べて、一緒に闘っていきたい」
過去を、許したわけじゃない。
けれど、それすら全てを許容して。
新しい関係を築きたいと。
そう、綱吉はいうのだ。
(骸様、骸様・・・!こんな時、なんて言えば良いんですか。こんなに無防備に私達を受け入れてくれる存在を、そんな奇跡を、2度も貰った私は贅沢者ではないのですか)
溢れそうになる目尻に力を入れて、只管彼の人へ呼びかける。
髑髏を受け入れてくれた、初めての人に。
骸に命を助けられ、存在を望まれた。
・・・例えそれが彼の都合だとしても、望まれるそれだけで歓喜に奮えた。
それなのに。
目の前のこの人はそんな奇跡を簡単に起こしてしまう。
本当は、骸様の事を聞きたかったんじゃない。
それに託けて、自分が・・・骸様の仮初に過ぎない自分を、どうして受け入れてくれるのか聞きたかった。
ただ、それだけだったのだ。
(ごめんなさい、ごめんなさい骸様!こんなずるい私を、許してください・・・!)
慟哭する髑髏に、優しい言葉が振ってくる。
「だからさ、改めてクロームと、仲間として・・・友達として仲良くしたいな」
いいかな、なんて控えめな笑顔で彼が言うから。
だからつい、顔を綻ばせた。
「こちらこそ、よろしく・・・お願いします」
だってそんなの。
断るはずが、ないのだから。
《凪、僕の可愛い凪》
《はい、骸様》
《全く君は、ボンゴレに甘すぎる》
《そう、ですか?》
《だから彼が付け上がるんですよ。まったく》
《ごめんなさい。・・・・でも》
《でも?なんですか》
《でも、私、幸せです。骸様と、千種と、犬と、ボスと・・・皆といられる今が一番、幸せ》
《本当に、困ったものだ》
苦笑する骸が柔らかな笑みを浮かべていた事は、髑髏だけの秘密。
コメント:久々の更新ですみません!
不意に、髑髏は綱吉と骸の戦いを知っているのかな?知ってるなら今の状態をどう感じているのだろうと妄想・・・(し過ぎました・・・例の如く)反省はサルでも出来るが霜月には無理のようです・・・はい(遠い目)
最近女の子達が可愛いですね、髑髏然りユニ然り。
しかし私ユニはγ→←ユニ派なので書いてもいいものやら・・・(汗)
髑髏視点のお話です。
多少本誌のネタばれあり、ご注意ください。
それは、偶然のようなものだった。
そのとき、そこに、彼がいたから。
だから、聞いてみようと思った。
でなければ、口下手な自分が自ら彼に声を掛けるには聊か難しい問題ではあるし、それ以前に彼の周りには雨の守護者や、嵐の守護者が何時もいて早々気軽に声を掛け易い雰囲気ではない。
無論、あの嵐の守護者はともかく、雨の守護者や、京子やハルという髑髏にとっては未知の相手に気後れしている部分が大部分ではあったが。
でも。
その時は違った。
その時、彼は珍しく1人で。
あの家庭教師の赤子もおらず、何時もいるメンバーも見当たらず本当に1人きりだったから。
だから、つい。
これがチャンスだと思ったのだ。
「・・・ボス」
緊張の余り掠れた声になった呼びかけに、彼は意図も簡単に応じてくれた。
「・・・クローム?どうしたの、珍しいね」
一瞬、彼の大きな吸い込まれそうな瞳が驚いたように開き、しかしすぐにふわりと目元を染めて笑みを形どる。
そんな彼の動作を見ながら不意に好きだな、と思う。
それは、恋という名の甘酸っぱいものでもなく。
かといって、骸様に捧げるような崇拝するようなものでもなく。
ただ、純粋に綺麗なものを見たときのような心地がする。
彼の、男の子にしては大きめの幼さを残すその瞳が、余りに純粋で、綺麗で、見惚れてしまいそうになる。
一瞬、違う世界にのめり込みそうになる自分を叱咤して、本題を思い出す。
「ボス。・・・お話が、あるの」
「話?」
きょとん、とする彼の表情は何処までも幼い。
けれど、この瞳が炎を宿したとき、誰よりも力強く頼りになる事を、髑髏はもう知っている。
「うん、いいよ。なんの話?」
疑う事を知らぬような瞳。
柔らかな、声音。
今までの髑髏の世界にはなかった、眩しいもの。
命の全てを預けて崇拝している骸様にも、持ちえないもの。
だからいつも、この人の前にいるとほんの少し、緊張する。
それでも、髑髏は彼にどうしても聞きたい事があった。
命に関わる事じゃない。
どうしても聞かなくてはならないものではない。
けれど、髑髏は一度この人から直接聞いてみたかったのだ。
「骸様から、聞いたの」
「骸から?」
瞬間、眉根を寄せる綱吉に髑髏は少し目を伏せる。
「骸様が、ボス達にしたこと・・・」
「クローム・・・」
「骸様が、ボス達に酷い事をしたこと」
それは骸よりの髑髏としては、何ともいえないものだった。
骸は、骸の理想として彼らは本気で世界大戦を目論んでいたのだ。
髑髏としては、骸の理想を叶えてあげたい。
けれど、それが彼ーーー綱吉に阻止させられたからこそ、髑髏は骸達に出会えた。
綱吉が骸を倒してくれなければ、髑髏は今頃当の昔に死んでいただろう。
だから、本当ならば綱吉に感謝しなければならないのかもしれない。
そう考えれば、髑髏の複雑さがより一層増す。
けれど、極論を言えば、それはもう過去の話。
仮定の話をしても今現在こうして髑髏が骸に助けられ、綱吉と出会った事実は変わらない。
そして、髑髏も今その話をしたい訳ではないのだから。
「ボス、骸様のことをどう思ってる?」
「どう、って・・・・」
「憎んでる?嫌ってる?ボスの大切な人たちを傷つけたから・・・」
珍しく雄弁に言い募る髑髏に、綱吉が目を白黒させる。
「クローム・・・君は・・・」
一瞬黙り込んだ後、静かに綱吉が聞き返す。
「君は・・・何を聞きたいの?」
「私・・・は・・」
幾ら鈍い綱吉だとて、あの言葉が髑髏の本心だとは思わない。
彼女は、本当に骸の事を大切に思っているのだから。
だから問い返した。
きっと、彼女が本当に聞きたいことは、それではないだろうから。
「どうして」
「どう・・・して」
「どう・・・」
その先が、見つからない。
感情と言の葉が、接続しない。
もどかしげに、自分の思考をぐるぐると掻き回す。
「大丈夫」
瞬間。
もやもやとした、髑髏の中の混沌としたものが、その一言で波打つように収まった。
思わず、俯いていた頭を上げて彼を見返せば穏やかに、日溜りのような笑みを浮かべる綱吉がいた。
「大丈夫。例えそれがどんな事だとしても、俺は聞くよ。だから、ゆっくりと口に出してくれればいいよ」
そんなことを、言ってくれるから。
甘えてしまう自分がいた。
「骸様、ボス達に酷い事・・・したの」
「うん」
「ボス、骸様・・・嫌い?」
「・・・そうだなぁ。正直、好きとか嫌いとかで分けられないけど・・・今は、無事でいてくれれば良いと、思うよ」
「・・・どうして」
「え?」
「どうして、酷いことしたのにボスは・・・骸様を憎まないの?」
その言葉に、綱吉は朧げながらクロームが何を言いたいのか解ったような気がした。
「うん、そうだね。・・・俺も、ただの人間だから正直に言えば、皆を傷つけて町をめちゃくちゃにした骸を好きだとは、言えない」
気まずげに、俯く髑髏にけれど綱吉は苦笑を零す。
「でもね、少しは・・・知っているから」
「何を・・・?」
その質問に、綱吉は初めて沈黙を持って拒絶した。
けれど、骸と深層意識上で繋がっている髑髏には、そして犬や千種の言葉の端々からある程度彼らの過去を推測できる立場にいる髑髏には、彼が飲み込んだ言葉の続きが理解できるような気がした。
「それは・・・同情?」
「あはは、そんなことしたら殺されるよ・・・骸に」
笑いながら物騒な事を言う綱吉に、けれどあながち間違いではない事だと髑髏も思う。
「なんだろうな・・・確かに、同情という感情もあったと思う」
「・・・・・」
髑髏自身、その境遇は決して良いものではなかった。
それを哀れまれる事がどれほど惨めか、少しは骸達の気持ちも解る。
けれど、困ったように今度は自身が悩み始めた綱吉を見ると何故だか許せるような気がするのだ。
「でもさ。きっと・・・骸たちには骸たちの生き方があったんだと思う。だから・・・」
「・・・だから?」
「うん、そうだな。・・・幸せに、なって欲しいと思うよ。勿論、クロームにも」
どうして。
解らない。
きっと、クロームが一番聞きたかった事は、それなのだ。
「ボスはどうしてそんなに簡単に私達を受け入れてくれるの?」
血の繋がった母親は、凪を見捨てた。
血の繋がらない父親は、凪を見ようとしなかった。
クラスメイト達は、凪の存在を許さなかった。
それなのに。
何故。
それなのに何故、他人の、しかも元は敵であった骸の僕である自分にまでどうしてそんなに優しくしてくれるのか。
何故、敵であり、今もまた仲間とは言いがたい骸の心配をしてくれるのか。
今まで誰も凪の存在を許容してくれなかった。
見てくれる事すらなかった。
唯一、自分を見つけてくれたのは骸様だけ。
それなのに、何故。
気づけば髑髏は激情のまま全てを口に出していた。
何時もの髑髏らしからぬそれに、綱吉は最初どう答えていいものか悩んでいたようだ。
それを見ながら髑髏は自分が激情のまま叫んだとこを後悔し始めていた。
そんなことを髑髏に言われても優しすぎる彼には迷惑にしかならないだろう。
解っているのに、なのにこうして彼に甘えてしまう。
「ごめんなさい、ボス」
囁くような小さな声で謝る髑髏に、寧ろ綱吉が慌てた。
「ま、待って待って!髑髏が謝るような事じゃないから!!」
「でも・・・」
「いや、でもさ。嬉しかったんだよ俺は」
何故、と顔に出ていたのか無言で綱吉を見上げた髑髏の目に苦笑しながら笑う綱吉が飛び込んでくる。
「俺は、さ。骸の事も、髑髏の事も・・・本当に何も知らないから。こうして一緒に戦ってくれて入るけど本当にいいのかなってたまに思ってたんだ」
「ボス・・・」
「そりゃ、元々敵同士だったんだから・・・特に、骸にとって見ればその、言い方は悪いけど負けた相手・・・しかも大嫌いなマフィアに加担するなんて本当に嫌なんだと思う」
違う、と言いたい。
けれど、それを口にしていいのは髑髏ではないから。
少し寂しそうに笑う綱吉に髑髏は沈黙を貫く。
「だから骸や髑髏が何を考えているのか・・・正直、分からなかった。仲間なのにって思っているのは俺だけなのかなって悩んだりもした」
確かに、仲間というにはいささか自分たちの関係は複雑だろう。
骸様と目の前の気弱な少年は、過去命のやり取りをしたのだから。
それで直ぐに仲間とはそう簡単には行かないのだろう。
髑髏自身も、その事件自体には関与していないものの今の骸の仮初の肉体を提供している立場と、綱吉の仮の守護者という立場が複雑すぎて、何とも言えない。
「本当は・・・どこか心の中で骸を許せない気持ちもある。けど、それも全て受け止めたいと思ったんだ。だから知りたかった。だから心配だった。勿論、偽善的で独善的な気持ちだって分かってるよ」
それでもーーー、と呟く綱吉の姿に、髑髏は泣きそうになる。
分からなかった。
どうしてここまで自分たちを気に掛けてくれるのかが。
嬉しい反面、怖かった。
どう反応していいか。
もし嫌われたらどうしうようと。
けれど、きっとそれは彼も同じだったのだろう。
「それでも、俺は。こうして出逢えた以上は骸や、髑髏達と歩んで生きたいよ。過去の事がどうとか、同情だとか、取引だとか。全部ひっくるめて、それでも俺はこうして出逢って、名前を呼び合って、会話して、一緒にご飯を食べて、一緒に闘っていきたい」
過去を、許したわけじゃない。
けれど、それすら全てを許容して。
新しい関係を築きたいと。
そう、綱吉はいうのだ。
(骸様、骸様・・・!こんな時、なんて言えば良いんですか。こんなに無防備に私達を受け入れてくれる存在を、そんな奇跡を、2度も貰った私は贅沢者ではないのですか)
溢れそうになる目尻に力を入れて、只管彼の人へ呼びかける。
髑髏を受け入れてくれた、初めての人に。
骸に命を助けられ、存在を望まれた。
・・・例えそれが彼の都合だとしても、望まれるそれだけで歓喜に奮えた。
それなのに。
目の前のこの人はそんな奇跡を簡単に起こしてしまう。
本当は、骸様の事を聞きたかったんじゃない。
それに託けて、自分が・・・骸様の仮初に過ぎない自分を、どうして受け入れてくれるのか聞きたかった。
ただ、それだけだったのだ。
(ごめんなさい、ごめんなさい骸様!こんなずるい私を、許してください・・・!)
慟哭する髑髏に、優しい言葉が振ってくる。
「だからさ、改めてクロームと、仲間として・・・友達として仲良くしたいな」
いいかな、なんて控えめな笑顔で彼が言うから。
だからつい、顔を綻ばせた。
「こちらこそ、よろしく・・・お願いします」
だってそんなの。
断るはずが、ないのだから。
《凪、僕の可愛い凪》
《はい、骸様》
《全く君は、ボンゴレに甘すぎる》
《そう、ですか?》
《だから彼が付け上がるんですよ。まったく》
《ごめんなさい。・・・・でも》
《でも?なんですか》
《でも、私、幸せです。骸様と、千種と、犬と、ボスと・・・皆といられる今が一番、幸せ》
《本当に、困ったものだ》
苦笑する骸が柔らかな笑みを浮かべていた事は、髑髏だけの秘密。
コメント:久々の更新ですみません!
不意に、髑髏は綱吉と骸の戦いを知っているのかな?知ってるなら今の状態をどう感じているのだろうと妄想・・・(し過ぎました・・・例の如く)反省はサルでも出来るが霜月には無理のようです・・・はい(遠い目)
最近女の子達が可愛いですね、髑髏然りユニ然り。
しかし私ユニはγ→←ユニ派なので書いてもいいものやら・・・(汗)