※かなり昔に途中まで書いて放置していたものを書き上げてみました。
黒曜編終了後、「我儘な人。」の派生というか番外編的な設定になっております。
カタンっと微かな音が静かな病室に響く。
「こんな時間に何の用だ?ディーノ」
カチッと愛用の銃の安全装置を外し、照準を照らし合わせながら問答無用とばかりに侵入者である青年に言い放つ。
それに青年は苦笑で返しながら降参とばかりに両手をあげる。
「手厳しいな…、かわいい弟分を見舞いに来ただけじゃねぇか」
「病室はボスが狙われやすい場所だとツナに教えたやつのセリフとは思えねぇな」
「元教え子じゃねぇか。ちょっとは信頼して欲しいもんだね」
ひょいっと肩を竦めるように笑うが彼の家庭教師は器用にシニカルな表情のまま声の質だけ変えて皮肉げに問い詰める。
「少なくとも今のお前には無理だな。そんな葛藤して何しでかすか分かんねぇような面したやつには元教え子だろうがボンゴレの同盟ファミリ―のボスだろうが不用意にツナを近付けさせられねぇな」
リボーンの黒目がちの大きな瞳の奥からすべてを見透かすように鋭くディーノを射ぬく。断言されてしまったディーノは今だベットであどけなく眠る綱吉に何も複雑な視線を向け、溜め息を一つ吐いた。
ドア近くに鎮座していた足を綱吉が眠るベットへと足音ひとつ立てず近寄り、そのあどけない寝顔を見ながら誰に聞かすでもなく呟く。
「ツナのやつ…あの六道骸を倒したんだよな…」
「ああ…さすがはブラッド・オブ・ボンゴレを受け継ぐだけはある。些か覚醒するには遅かったがな」
「そうか…」
呟くディーノに喜色の色はない。
「そんなにツナをマフィアの道に入れるのが嫌なのか…これはツナに会う前から決定していた事だ。お前も承諾していたはずだろう」
何を今更、とリボーンは歯牙にもかけようとしない。
「ああ…了承したさ。お前をツナの所には送る時に。…でもそれはツナに会う前の話だろう?」
ボンゴレ初代の血を引くジャポネーゼ。
何も知らぬままこの世界に引き摺り込まれる事が一方的に決定された哀れな少年。
その過去の自分と似たような境遇の未だ見ぬ少年に同情し、もしあったら自分は優しくしてやろうと思ったのは事実。
けれどその少年は自分の想像以上の少年だった。
彼はこちら側の人間ではない。
そのどこまでもあたたかな他人を包む優しさは、決してこちらでは有益にはならない。
こんな闇い日陰の道を歩む自分に彼には光の道を歩んで欲しいと思うのはおこがましい事なのだろうか。
しばし綱吉の寝顔を見つめているディーノにリボーンは確認するように問う。
「ディーノ…、お前、わざわざランチアに9代目からの処分を言い渡しにいったらしいな」
その言葉に苦笑を零しながらリボーンには敵わねぇな、と呟く。
当たり前だ、と元家庭教師に手厳しく返されながらディーノは殊勝に肯定する。
「見ときたかったんだよ。ツナにあれ程の…まぁきっと本人はその意味を理解はしちゃいねーだろうか…覚悟をさせた男って奴がどんな奴なのか…」
「…で?どうだったんだ?」
リボーンの追求の手は緩まない。
「…どこまでも真っ直ぐな男だったよ」
文句の付けようが無い、と嘆息する。
「そうだ。骸のマインドコントロールに付け入られた甘さはあるが、それでも自我を崩壊せずに持ち堪えた精神力、ツナの死ぬ気モードにも匹敵する腕力…。かなりの好物件だ。幸いランチアにツナも懐いているしな」
考え込み始めたディーノにとどめとばかりにリボーンは言い放つ。
「無駄だぞ」
ディーノの心の中を覗いていたかのようにリボーンは容赦が無かった。
「例えランチアの罪を減刑させるためにツナが安易に9代目を頼った事を、今更それがこの世界に足を突っ込む発端になろうとももう遅い…。ツナの運命はもう動き出している。例えそうなる運命だと知っていてもツナはランチアのために自らその身を晒すだろう」
ゴットファーザーと呼ばれるマフィア界の神とも呼ばれるボンゴレ9代目。
今までは間接的なリアクションしかしなかったが、今回は直々に綱吉に対して六道骸を捕獲せよと明確な命令下し、さらにはボスしか動かせ無い医療チームをも動かしてみせた。そして何よりも綱吉の頼みにより、ランチアの罪状を軽減した。
それはすべからくボンゴレの後継者と言う立場を確固たるものとし、綱吉にはボンゴレ9代目さえ動かせる力と権力があると認識されたのだ。
これにより、ボンゴレの内と外に綱吉の存在が決定打とされたと言っていだろう。
そこにはもう逃げ場は無い。
未だ幼い少年に残されたのは修羅の道。
それが今、現実となって綱吉の元にひたひたと迫りくる。
綱吉が、望むと望まないと関係なく。
「ツナは…耐えられると思うか?」
何が、とはディーノは口にしない。
それだけでこの家庭教師が全てを理解すると知っているから。
無駄な心配ばかりをしていると理解している。
自分が心配するべきことではないと理解している。
それでも、どうしても割り切れない。
どうしても、納得出来ない。
否、納得したくはない。
「このダメディーノが…!」
はあ、と疲れたように溜め息を溢す嘗ての家庭教師に苦笑する。
そうだ。
結局のところ自分は昔のダメディーノから変わっちゃいない。
だから、恐い。
ツナが変わってしまうことが、一番恐いのだ。
「…お前が一番恐いのは、自分が『置いていかれること』だろう」
本当は、知っているのだ。
綱吉が強いことを。
だから、恐い。
綱吉が自分の知る綱吉でなくなってしまえば、…綱吉が、自分から離れていってしまいそうで。
「恐いんだ…リボーン」
脳裏に浮かぶのは弟弟子の幼い笑顔。
その笑みが今、ディーノには遠い。
「…無駄だ。ツナは望むと望まずとも、ボンゴレの業が付きまとう。逃げることなんて、不可能だ」
結果的にいえば、リボーンの言葉は正鵠を射ていたわけで。
この後、慌ただしく黒曜の事件の後まるで平和の日常を感受する時間は与えられず、ヴァリアーの連中の猛攻を受けることになる。
…そして、綱吉はディーノの思いとは裏腹に、ザンザスに勝利する。
ディーノの葛藤だけを、残して…。
コメント:黒曜事件の直ぐに書いた記憶が。
だから凄い古いんですが…ヴァリアー終わった後と繋げようとして、失敗してしまいました(苦笑)
というか、ディーノ本誌にもう随分出てませんよね;
ディーノは何故かヘタレのままです(苦笑)
黒曜編終了後、「我儘な人。」の派生というか番外編的な設定になっております。
カタンっと微かな音が静かな病室に響く。
「こんな時間に何の用だ?ディーノ」
カチッと愛用の銃の安全装置を外し、照準を照らし合わせながら問答無用とばかりに侵入者である青年に言い放つ。
それに青年は苦笑で返しながら降参とばかりに両手をあげる。
「手厳しいな…、かわいい弟分を見舞いに来ただけじゃねぇか」
「病室はボスが狙われやすい場所だとツナに教えたやつのセリフとは思えねぇな」
「元教え子じゃねぇか。ちょっとは信頼して欲しいもんだね」
ひょいっと肩を竦めるように笑うが彼の家庭教師は器用にシニカルな表情のまま声の質だけ変えて皮肉げに問い詰める。
「少なくとも今のお前には無理だな。そんな葛藤して何しでかすか分かんねぇような面したやつには元教え子だろうがボンゴレの同盟ファミリ―のボスだろうが不用意にツナを近付けさせられねぇな」
リボーンの黒目がちの大きな瞳の奥からすべてを見透かすように鋭くディーノを射ぬく。断言されてしまったディーノは今だベットであどけなく眠る綱吉に何も複雑な視線を向け、溜め息を一つ吐いた。
ドア近くに鎮座していた足を綱吉が眠るベットへと足音ひとつ立てず近寄り、そのあどけない寝顔を見ながら誰に聞かすでもなく呟く。
「ツナのやつ…あの六道骸を倒したんだよな…」
「ああ…さすがはブラッド・オブ・ボンゴレを受け継ぐだけはある。些か覚醒するには遅かったがな」
「そうか…」
呟くディーノに喜色の色はない。
「そんなにツナをマフィアの道に入れるのが嫌なのか…これはツナに会う前から決定していた事だ。お前も承諾していたはずだろう」
何を今更、とリボーンは歯牙にもかけようとしない。
「ああ…了承したさ。お前をツナの所には送る時に。…でもそれはツナに会う前の話だろう?」
ボンゴレ初代の血を引くジャポネーゼ。
何も知らぬままこの世界に引き摺り込まれる事が一方的に決定された哀れな少年。
その過去の自分と似たような境遇の未だ見ぬ少年に同情し、もしあったら自分は優しくしてやろうと思ったのは事実。
けれどその少年は自分の想像以上の少年だった。
彼はこちら側の人間ではない。
そのどこまでもあたたかな他人を包む優しさは、決してこちらでは有益にはならない。
こんな闇い日陰の道を歩む自分に彼には光の道を歩んで欲しいと思うのはおこがましい事なのだろうか。
しばし綱吉の寝顔を見つめているディーノにリボーンは確認するように問う。
「ディーノ…、お前、わざわざランチアに9代目からの処分を言い渡しにいったらしいな」
その言葉に苦笑を零しながらリボーンには敵わねぇな、と呟く。
当たり前だ、と元家庭教師に手厳しく返されながらディーノは殊勝に肯定する。
「見ときたかったんだよ。ツナにあれ程の…まぁきっと本人はその意味を理解はしちゃいねーだろうか…覚悟をさせた男って奴がどんな奴なのか…」
「…で?どうだったんだ?」
リボーンの追求の手は緩まない。
「…どこまでも真っ直ぐな男だったよ」
文句の付けようが無い、と嘆息する。
「そうだ。骸のマインドコントロールに付け入られた甘さはあるが、それでも自我を崩壊せずに持ち堪えた精神力、ツナの死ぬ気モードにも匹敵する腕力…。かなりの好物件だ。幸いランチアにツナも懐いているしな」
考え込み始めたディーノにとどめとばかりにリボーンは言い放つ。
「無駄だぞ」
ディーノの心の中を覗いていたかのようにリボーンは容赦が無かった。
「例えランチアの罪を減刑させるためにツナが安易に9代目を頼った事を、今更それがこの世界に足を突っ込む発端になろうとももう遅い…。ツナの運命はもう動き出している。例えそうなる運命だと知っていてもツナはランチアのために自らその身を晒すだろう」
ゴットファーザーと呼ばれるマフィア界の神とも呼ばれるボンゴレ9代目。
今までは間接的なリアクションしかしなかったが、今回は直々に綱吉に対して六道骸を捕獲せよと明確な命令下し、さらにはボスしか動かせ無い医療チームをも動かしてみせた。そして何よりも綱吉の頼みにより、ランチアの罪状を軽減した。
それはすべからくボンゴレの後継者と言う立場を確固たるものとし、綱吉にはボンゴレ9代目さえ動かせる力と権力があると認識されたのだ。
これにより、ボンゴレの内と外に綱吉の存在が決定打とされたと言っていだろう。
そこにはもう逃げ場は無い。
未だ幼い少年に残されたのは修羅の道。
それが今、現実となって綱吉の元にひたひたと迫りくる。
綱吉が、望むと望まないと関係なく。
「ツナは…耐えられると思うか?」
何が、とはディーノは口にしない。
それだけでこの家庭教師が全てを理解すると知っているから。
無駄な心配ばかりをしていると理解している。
自分が心配するべきことではないと理解している。
それでも、どうしても割り切れない。
どうしても、納得出来ない。
否、納得したくはない。
「このダメディーノが…!」
はあ、と疲れたように溜め息を溢す嘗ての家庭教師に苦笑する。
そうだ。
結局のところ自分は昔のダメディーノから変わっちゃいない。
だから、恐い。
ツナが変わってしまうことが、一番恐いのだ。
「…お前が一番恐いのは、自分が『置いていかれること』だろう」
本当は、知っているのだ。
綱吉が強いことを。
だから、恐い。
綱吉が自分の知る綱吉でなくなってしまえば、…綱吉が、自分から離れていってしまいそうで。
「恐いんだ…リボーン」
脳裏に浮かぶのは弟弟子の幼い笑顔。
その笑みが今、ディーノには遠い。
「…無駄だ。ツナは望むと望まずとも、ボンゴレの業が付きまとう。逃げることなんて、不可能だ」
結果的にいえば、リボーンの言葉は正鵠を射ていたわけで。
この後、慌ただしく黒曜の事件の後まるで平和の日常を感受する時間は与えられず、ヴァリアーの連中の猛攻を受けることになる。
…そして、綱吉はディーノの思いとは裏腹に、ザンザスに勝利する。
ディーノの葛藤だけを、残して…。
コメント:黒曜事件の直ぐに書いた記憶が。
だから凄い古いんですが…ヴァリアー終わった後と繋げようとして、失敗してしまいました(苦笑)
というか、ディーノ本誌にもう随分出てませんよね;
ディーノは何故かヘタレのままです(苦笑)