老麗・美しく老いる

「美しく老いる」を余生の目標として、そのあり方を探る。

NO.521拾う母

2009-06-05 07:53:44 | Weblog
詩集『月に吠える』を、
お父さんは庭に投げ捨てた、
という。

熊谷短歌会の文学散歩で、
萩原朔太郎記念「前橋文学館」へ行った。
清流広瀬川のほとりに聳える近代的な建物で、
朔太郎のコーナーが常設されている。
ガイドさんの説明も丁寧で、
2時間位かけて観賞したい所だ。

「光る地面に竹が生え」
で始まる「竹」という詩など
『月に吠える』の下書きや
自筆原稿が展示されていて興味深い。
下書きの多くがざら紙に
散らし書きのように書き散らしてある。
思いついた勢いで殴り書きされたようだ。
感興の趣くまま、
ほとばしり出る詩句を忙しく書きとめるためだろう、
判読不可能なような走り書きが目立った。

白秋の序文、犀星の跋文を得て
大好評の『月に吠える』だったが、
医院の後継者として期待していた父親は、
朔太郎から受け取るや、
その憤懣を晴らすかのように庭に投げ捨てた、という。

投げ捨てし父の心に母のゐて『月に吠える』を拾ひしならむや 貞雄