公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反
推定65歳 職業不詳 前科不明
同じ法廷の、次の裁判を傍聴するつもりで まだ終了していないうちに傍聴席に座っておく、ということは、よくある。
そして「しまった! こんなに面白そうならこの公判、はじめから見るべきだった! と、取り返しのつかない思いをしてしまうことが、“ボーチョー生活”には ときたまあるものなんである。
ワシにとっては、この公判が そうだった。
どうやら電車内で痴漢をした オジさん(推定65歳)の裁判なのだが、裁判官の前で股を大きく広げて立ち、両手を振りかぶる。まるで野球のアンダースローのような動きをしながら「こうやって下からすくいあげるような感じで乳をさわったんです」とオーバーアクションで“痴漢の再現”をしているのだ。
裁判官(こっちも やぱり60がらみの? オジさん)も「ほお~、それから ど~した?」なんて感じの“合いの手”を入れたりしている。
何なんだ、この明るさは! 痴漢ってもっと陰湿なものだったのでは…? 裁判の冒頭で述べられたはずのこのオジさんの生い立ち、経歴、痴漢歴などを、ぜひ聞いておきたかった…!
公判直後、そんな思いでいるワシに、オジさんは「今ごろ来たってダメだよ」という感じでチラリと一瞥をくれながら両手に手錠をかけられ、拘置所につれていかれたのだった…。
〔ある日、ある時の埼玉地方裁判所にて〕
なお『ボーチョーですよ』とは、これよりもう少し長いコラムとイラストを『週刊実話』で1ページ連載していたもので、当文章は連載の きっかけとなった“パイロット版”です。
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