震災復興事業と雇用対策の結合を! 全ての失業者に仕事を!

在日米軍「思いやり」予算に反対し、全ての労働者が安心して働き、生活できる「あらたな社会のしくみ」創りを目指して闘います

選挙権裁判について楠本さんからのメッセージ

2009年09月27日 | 日記

友人のみなさんへ

  10月23日の判決期日には出廷できそうにないので、10月23日の判決の構造について私が分かる範囲でみなさんに説明します。間違っていたらすいません(笑)。

  憲法15条3項は「公務員の選挙については成年者による普通選挙を保障」しています。Mさんは2007年の統一地方選、参議院選で萩之茶屋投票所まで赴き投票を求めましたが、選管職員らに投票を拒否されてしまいました。その結果Mさんは重大な精神的苦痛を受けました。

 憲法17条は「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる」と規定しています。憲法17条がいう法律である国賠法はその1条で「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずる」と規定しています。Mさんは投票を拒否したことによって生じた精神的苦痛の賠償(1万円)を求めて、国、大阪府、大阪市を提訴しました。私は、Mさんが投票を拒否されたことにより自身も精神的苦痛を負ったとして提訴しました(笑)。

  まずここで問題になることは投票を拒否されて生じる精神的苦痛が国賠法1条にいう「損害」になるのかということですが、この点について判例上争いがなく損害として認められており、最高裁ではその損害額を5000円と認定しています。(Mさんは2回拒否されたので10000円を請求しました)。自衛隊のイラク出兵により平和的生存権が侵害され精神的苦痛を受けたことの賠償を求めた国賠事件において、多くの裁判所はその精神的苦痛を「損害」とは認めずにイラク出兵の違憲・違法性ついての判断を避けていたように思います。

  次に問題になることは、日本国籍を有し,成年者であったMさんがなぜ投票を拒否されたか、ということです。それは地方選挙における選挙人の資格を想定した公選法9条2項、選挙人名簿への登録資格を規定した公選法21条1項が住所を有することを投票の要件としていたからです。したがって、貧困ゆえ住居を維持できず住所を有していなかったMさんの投票を拒否した選管職員の職務執行は正当であり違法がありません。

 つぎにMさんに住所を与えなかった(住民票を職権消除した)大阪市職員の職務執行に違法がなかったのかが問題になるのですが、この点につき、大阪地裁、大阪高裁は違法ではないと判断しています。

 ここまで進み、ようやくMさんの選挙権の行使を制限した法律の規定自体が憲法に違反しているのではないかということが問題になります。

 まず、貧困ゆえ住居を維持できないMさんに対して公選法が投票の要件とする住所を与えない住基法の規定の違法性が問題になるわけですが、みなさんもご存知のとおり最高裁はその点に関する住基法の規定は違憲ではないと判断しています(扇町公園住所裁判)。

 そうであるならば、問題は、投票を住所を有する者に限定する公選法の規定の違憲性に問題が絞られることになります。この点につき、最高裁は、選挙の公平さを確保できない止むを得ない事由がないにもかかわらず選挙権の行使を制限する事は違憲であると判断しています。

 したがって、Mさんに対する選挙権の行使の制限が合憲なのか、違憲なのかは釜ヶ崎に定住しながら貧困のゆえに住居を維持できなかったMさんが萩之茶屋投票所で投票すれば、選挙の公正さが確保できなかったのかが、唯一の争点となります。

 この点については長くなるので省略しますが裁判所は選挙の公正さは確保できたと判断するはずであり、よって10月23日の判決にはMさんに対する選挙権の行使の制限は違憲であると書かれているはずです。現在の国会の情勢では。一審の地方裁判所が違憲判決を書くだけで、貧困のゆえに住居を維持できない者であっても投票が可能となるよう法改正されると私は思います。

 野宿者を畳に上げることが国の方針であり、そのために国は自立支援センターや生活保護制度を用意していると国が主張して論点をずらせば、裁判所は国の立法政策に裁判所が関与すべきではないとして、違憲、合憲の判断を避ける可能性がありましたが、頭の固い総務省官僚どもは、最後まで選挙の公正が確保できないと主張し続けました。アホですねえ~~。

 ただ、問題はここで終わるわけではありません。国賠法1条はあくまで公務員が「その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたことに限定して損害の賠償を求めています。Mさんが憲法違反して不当に選挙権を行使できなかった理由は、憲法に違反して不当に選挙権の行使を制限する公選法の規定を唯一の立法機関である国会(国会議員)が違法に改正しなかったからです。

 ここで問題になることは、国会議員が公選法の規定を違憲と知っていたのか、知っていたとすればいつからか、ということです。判例では、法律の規定が原因となり国民の基本的人権が不当に制限されていることを国会議員が知りながら、10年程度その法律を改正しなかった場合に、その国会議員の不作為は国賠法1条にいう過失にあたると認定されます。

 この判例を基準とするのであれば、残念ながら本件の場合は、国会議員の過失までも認定させることはしんどいと思います(2018年ごろに提訴すればできたと思うのですが)。ただ、国会議員が住所を有する者だけに投票を限定する公選法の規定が違憲であることを知らなかった理由は、大阪市職員らが本来であれば住所を有することができないMさんのような者を、長年に亘って違法に住民登録してきたからであり、大阪府職員らが大阪市職員らの監督責任を怠ったからです。そこらへんを裁判所がどのように判断するかは全くの不明です。

 また。憲法81条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定しています。裁判所が公選法の規定の違憲性だけを認定して国会議員の過失を認定せずにMさんの請求を斥け、そしてMさんが控訴しなければ、地方裁判所の判断だけで、法律の規定の違憲性が確定してしまい、憲法81条の規定が形骸化してしまいます。

 貧困ゆえに住居を維持できない者に対する選挙権の行使の制限が違憲なのか、合憲なのか、のみの判断を裁判所に求めるのであれば、貧困ゆえに住居を維持できない者であっても選挙権を行使できる地位にいることの確認を求める訴訟を提起すればよかったのかもしれませんが、その訴訟の原告はあくまで貧困ゆえに住居を維持できない者という地位を訴訟が終結するまで継続しなければならず原告に多大な負担がかかるので、やはり、貧困ゆえに住居を維持できない者に対する選挙権の行使の制限の違憲性について確認を求めるには事後的に選挙権の行使を制限されたことを問題にして損害賠償を請求することがベストだったと考えています。

 というわけで、最終的にどのような判決になるのか私にはさっぱり分かりません。判決期日には笹沼先生も傍聴されるということなので、判決の詳細については判決言い渡し終了後に笹沼先生から説明があると思います。どちらにせよ、一万円を払うか、払わないかについて、ここまでケンケンガクガクした裁判も珍しいと思うので、是非みなさんも傍聴してください。

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住民票削除選挙権裁判の判決言い渡しは

  10月23日(金)午後1時15分から、大阪地裁1010号法廷。


9/19 あいば野日米合同演習反対闘争

2009年09月15日 | 日記

9/13 関西新空港反対 泉州現地集会 報告

 われわれ釜日労の盟友である「泉州沖に空港をつくらせない住民連絡会」の闘いはいまだに続いています。 集会では「空港が出来たら関西の経済も活性化するし、地元もうるおう、と行政や推進派が言っていたが現実は赤字の垂れ流しで府財政の足を引っ張るは、周辺地元自治体は財政再建団体の一歩手前の市町村ばかりになってしまった。」「年間発着回数も需要予測を大幅に下回り、けっして『必要性』のある空港ではない」ことが明らかになっています。

  いまだに地盤沈下は収まらず(海抜1m)、神戸空港、伊丹空港との複雑・危険な空域問題の解決もされずに、赤字垂れ流しのままⅡ期工事は完成し供用され、周辺関連事業はいまだに強行されているこの空港は、一部の資本が金儲けのために税金を食い荒らす事業であり、国から市町村までその役人が天下り先をつくるための事業であることが年を追ってはっきりとしてきたといわざるを得ません。と同時に、イラク派兵に使われたように、軍事的意味合いが強いことがわかります。

  集会参加者は、「公共性」の名の下に、税金という形で労働者・市民が大資本の金儲けのために利用され、さらに、武力による資本の海外進出のために、戦争に動員されていく世の中にするのか、みんなが安心して働き、生活できる世の中にしていくのか、生き方が問われる時代になってきたことを確認しました。われわれも政権交代がなった日本に本当の自民・公明党流の政治とは違う新たな政治を打ち立てなければならないという思いを込めてデモを最後までやり抜いてきました。

  今週の土曜日19日は、滋賀県高島市のあいば野でおこなわれる日米合同演習の反対闘争に出かけます。  


日雇労働者の味方のフリをする労働者の敵と闘うぞ!

2009年09月10日 | 日記

「釜ヶ崎解放」9月号外

  労働者の弱みにつけ込み、ダシにし、豪邸に住み、30年間も働かずに飯を食ってきた奴は誰だ!!    おまえだ! ○垣 ○!!
 

なかまのみなさん。
 この間われわれ釜日労となかまたちは、一体となって、労働者の味方のふりをしながら、特掃の事業潰しに躍起となり、あろう事かわれわれ釜ヶ崎労働者が自らの未来を賭けて闘いの中で創り出してきたNPO釜ヶ崎をウソ・デマ・デッチ上げで「悪者」にしたてあげようとし、「解散せよ」などと暴言を吐いてきた釜合労・稲垣浩に反撃をしてきました。

そして、「輪番労働者の賃金が一万円なのに三千円以上NPOがピンハネしている」が、「349円ピンハネしている」に変り、265円になり、「行政に返すな」(=NPOはその金を取っていない)に変ってきました。
次々とウソが暴露され、なかまたちの賢明な判断で「賃金不払い」「265円の実質的賃上げ」なる適用除外がたったの17人で行き詰まると、今度は「休日あけ6人問題」なるものを持ち出してきました。

「特掃輪番労働者の仕事が『休日明けは作業量が多くなる』という理由で12人増しとなっているにもかかわらず、NPO釜ヶ崎は6人しか求人していません。一人でも多くの労働者が特掃の仕事につけるようにしなければなりません。NPO釜ヶ崎は逆のことをやっています。口では『仕事を増やせ』と言いながら6人分減らして求人しているのです」と、いう主張です。

その6人分を彼らが言うように一部の人間のために不正流用しているのであれば、NPO釜ヶ崎がウラ(下)に示した「現場通信」のバックナンバーように6人X1年分を遙かに超える仕事を輪番に出すわけはありません。

もし、委託契約上の6人分を役所との取り決めで予備費か何かに使っているとして、それがコンプライアンス(法令遵守)上、不正だと言うならそのとおりで、同様に、ほうきやちりとり、その他の道具の経費を輪番労働者の仕事に廻すことも同様に不正となってしまいます。
 法令遵守(コンプライアンス)が、われわれにとってすべて正しいわけではありません。なかまたちの関心は、実際に仕事が出ることであり、なかまたちのために使われるべき金が、ちゃんとなかまたちのために使われているか、です。
なかまたちはNPO釜ヶ崎がなかまたちの要求にしっかりと応えていることを知っています。

ヤカラは自分が何をしているかにほっかむりし、正義漢ヅラして法令遵守をたてに騒ぎ立てて、特掃を壊そうとしているということです。

その結果、もし今年度、法令遵守(コンプライアンス)をたてに、12人になっても、来年から「今まで6人でやってこれたのだから」と、6人分を減らされ、予備費もなくなり、他の経費の浮いた分も仕事に廻せなくなることは許されません。
 もしそうなったら、釜合労・稲垣浩は責任をとれ!

 


NPO釜ヶ崎 機関紙 「現場通信」からの抜粋

2001年平成13年2月1日第14号

 

今年度内、残り2ヶ月についてだけだ。 大阪府の地域外就労35名分については、昨年9月の開始時点から、3月23日までということであった。4月1日からどうなるかはさておいて、3月24日から3月31日まで、35人分の仕事が減る(7就労日有るから245人分の減)。

世の中よくしたもので、というべきかどうか、もうひとつよくわからないが、大阪府の仕事がなくなる代わり(?)に、大阪市の地域外の仕事が増員となる。2月19日から3月31日までの35就労日、毎日20人だから、700人分の増。総数では大阪府の減を補って余りある数字となっている。

大阪市の増員は、輪番で働く皆さんやスタッフの日々の努力のおかげです。本来は年間予算というものが決まっているわけですから、年度途中での増員はないとしたものですが、皆さんが仕事で使う箒や塵取りなどを大事に使っていただいている結果、それらの消耗品をあまり買わなくてすみ、ちりも積もれば山となるで、増員する費用が捻出できたということです。今後ともよろしくお願いします。


2002年2月26日第28号

 

3月1日から3月一杯、1日あたりの就労数が37人増える。増えるのは地域外で、バスとか府の草刈りに振り分けることになる。26就労日×37=962人昨年も年度末に幾分か増員となったのと同様の事情で、作業にあたる輪番労働者全員が、道具を大事に使い、消耗品費が節約できたので、予算を人件費にまわすことができた。仲間の協力に感謝したい。


2003年2月12日第45号

 

3月1日から3月31日まで35名増員となります(26就労日×35名=910名)とりあえず一ヶ月だけの増員ですが、回りが早くなります。番号の飛びに注意してください。
毎年のことになりましたが、年度末増員のお知らせです。皆さんが道具を大事に使ってくださっているので、消耗品代を予定より低く押さえることができました。総額約一千万円です。チリも積もれば山となるとはよく言ったものだと思います。
 そのお金を、みんなの就労を増やすことに使うことは、大阪府と大阪市も大賛成ということで、三月一日から一ヶ月間だけですが、一日当り35人の増員が実現したのです。


2004年2月23日第68号

26就労日×25人=650名


3月の就労数増加について
3月については、一日当りの就労数が増える。
府の就労分については、当初3月4日までしか予算が無く、3月5日からは一日当り70人就労減となるところであったが、府の方で努力して予算を確保していただき、3月一杯継続することとなった。
市の方は、こちらも予算確保に努力していただき、すでに1月途中から年度内一日当り12人増員となっている。
3月の増員は、皆が経費節減に努めていただいた結果としてのもので、一日当りNPO道路で5名、市地域外で20名の増員となる。


第39回釜ヶ崎越冬闘争報告

2009年09月10日 | 日記

 

第39回釜ヶ崎越冬闘争報告

 

今年で39回目を迎えた越冬闘争も7日夜の医療パトロールをもって終わりました。

  

 昨秋のリーマンショック=アメリカ発の金融恐慌から世界大恐慌へと向かう中で、日本経済も不景気感を強め、史上初の長期大好況を謳歌してきたトヨタやキャノンなど巨大輸出製造業各社は、大量の派遣社員、期間工の契約解除、雇い止めが吹き荒れる中で行なわれました。
 政府が発表した大手企業を対象とした調査だけでも8万5000人の契約打ち切り、雇い止めという事態は氷山の一角だろうと誰もが予想できることであり、いったいどうなってしまうのか、日本中の人々が不安を感じる中での越冬でした。


医療センター前ふとん敷き
いたずらや路上強盗から身を守る集団寝床

 今年の特徴は、名古屋圏、首都圏で契約解除、雇い止めになり、野宿をせざるを得なくなった期間工、派遣労働者のことをマスコミが大々的に取り上げ、連日ニュースに流れる中で行なわれました。大阪でも反響は大きく、マスコミの取材が多数あり、失業した製造業の労働者の動向を探っていました。同時に報道を見たり、聞いたりした方々から、ボランティアの申し出や物資のカンパが例年より多く寄せられました。

 

三角公園の炊き出し

 我々、実行委員会も製造業からの新しい野宿者が増えるかも知れないと予想し、年末、大阪駅周辺の夜間パトロールを2回実施しましたが、未だ路上への影響はほとんど無いようでした。期間中の釜ヶ崎においては、若い野宿者の顔もチラホラ見受けられ、実際の相談活動では、中高年の釜ヶ崎を知らない新しい野宿者が増えたようです。


 もう一つの特徴は、例年減少傾向にあった大阪市の南港無料臨時宿泊所の利用人数が10%ほど増加に転じたことです。
この秋から、大不況の先取りかのように労働センター寄り場の求人車の数が減り、全く求人の声がかからない状態(顔見知りの人だけ求人する『顔付け』手配)になっていたからだと考えられます。
 事実、西成労働福祉センターの調査では、仕事が少なかった前年と比べても、9月以降毎月20~30%減となっています。また、キロ170円ほどだったアルミ缶の値段も9月以降2ヶ月間で一気に60円まで値下がりしたこともその一因と考えられます。


 こうした新たな大失業時代を迎えつつあるとき、越年対策の転換を迫られている大阪市が、財政難を優先させ、昨年から進め始めた「あいりん越年対策」の「高齢者対策」化路線に固執したことです。具体的には40歳未満の切り捨てと開所期間の短縮をおこないました。

 越年期の問題は年齢には関係ありません。稼働能力があっても仕事がなければ稼働できないからです。同時にムリをしてでも年越し資金を稼ごうと、業者を選ばなかったりすると、行政の目の届かない寄せ場では、悪徳業者に引っかかり、脅され、デタラメな賃金計算を突きつけられたり、支払ってもらえなかったりと年末に放り出されることが昔から後を絶たないからです。これは年齢に関係なく、寄せ場経験の浅い労働者によく見受けられます。
 財政問題も含めて「越年対策」を転換するのであれば安易な切り縮めや足切りではなく、根本的な問題を見つめつつ、費用対効果で考えて貰わなければなりません。
 期間を短縮し、仕事の出具合と関係なく、行政窓口が閉まっている間だけというのなら、行政窓口が開くと共に、野宿しなくていいような施策に乗せるべきです。


夜の炊き出し
やっぱり大勢います。

今年の炊き出しの配食数は、昨年並みに終わリました。これは一度作った物がなくなるまで何度でもおかわりして貰う、というスタイルが配食数に変化をもたらさなかったのだと思います。


医療パトロール報告

 医療パトロールでは地域内で野宿をする仲間が増えていることが判りました。そして1月2日の日に、私たちが医療パトのとき手渡した毛糸の帽子と毛布をもって、野宿の仲間が亡くなっていたことは越冬実全体にとって大きなショックでした。


 地域外で野宿する仲間のところへは人民パトロール(昔からの呼び方の名残)で、釜ヶ崎に来れば炊き出しやふとんがあるよと宣伝し、激励します。梅田やなんば、天王寺への人パトでは参加者が例年より多かったことに加え、若者の襲撃で殺された藤本さん(道頓堀)、小林さん(天王寺)の現場追悼式のときも関心が強く、熱心にビラや立て看板を読んでくれました。


藤本さん追悼式
野宿者襲撃、虐殺は許さないぞ!

 例年、教会関係の方たちを主に多大な物資、資金の協力をして頂き越冬闘争をやっていますが、今年は泉大津市の地域産業が全国シェア98%の毛布の製造ということで、泉大津市長の呼びかけで同地の工業界、連合町会、市民の皆様方のご協力を得て5000枚を超える大量の毛布を手に入れることが出来ました。例年の毛布不足を解消できたと共に各地の支援団体に配布することが出来そうです。


 39回目の越冬闘争は1月5日に大阪府、大阪市への要請行動を行ない、7日の医療パト、8日の炊き出しをもって終わりました。来年はほんとうの失業の嵐が吹き荒れる越冬になりそうです。


 今回の実行委員会のスタートした頃に「39回も回を重ね、そろそろ『越冬闘争』から闘争をとってもいいんじゃないか」というような議論をみんなでしました。しかし「仲間うちから一人の餓死・凍死者も出さない」と続けられてきた越冬は、目の前で仲間が息絶えてしまうと「まさに闘いなんだなぁ」と再認識させられます。

 今回の越冬闘争は短い期間ではありましたが、久しぶりに社会から隔離され、押し込められた釜ヶ崎の中でもがくだけでなく、社会とのつながりの中で生き、闘っていけるという希望の見える越冬でした。
 と同時に、今注目を集めている野宿をせざるを得ない失業者は、派遣事業法の「原則自由化」(99年)、花形産業の輸出「製造業の解禁」(04年)によって新しく登場した「景気の調節弁」であり、彼らに救済の手がある程度伸びても、バブルの崩壊以降、長期にわたって失業・野宿状態におかれてきた、使い古され、スクラップとされた「古い調節弁」¬=建設日雇(最終的な職場として)は取り残されてしまうのではないかという不安も感じました。


 かつては不況期の安全弁として建設業がその受け入れ先となってきました。産業構造の転換によって大量に失業した炭坑労働者や政府の農業政策によって過剰となった農村からの出稼ぎ者、離職者、他産業からトコロテン式に押し出され、最下層へこぼれてきた労働者をここ釜ヶ崎のような“寄せ場”や飯場が受け入れ、調節弁としての機能を果たしてきたのです。

 この調整弁は、ひたすら右肩上がりに成長を続けてきた日本経済が欧米と肩を並べ、高度成長経済が止まると、その機能を失い、バブル経済の破綻以降、建設業がその力を失うと共に、全国的に失業者が野宿者として溢れる事態となりました。


 この10年ほどの間に、大手資本は、「構造改革」で派遣事業法を作り、労働法をちょっとだけいじり、「新しい時代の新しい働き方」とスマートなイメージだけのCMを垂れ流すだけで、雇用保険も、健康保険も、厚生年金も、あらゆる社会保障も負担もしないでいい、継続して働く権利も、職場で使用者と交渉する権利も無い、かつて労働者が持っていたあらゆる権利をも持たない、正規雇用の半分の賃金で働き、いつでも好きなときにクビを切れる大量の労働者=「新しい景気の安全弁」を手に入れたのです。

 そして、恐慌の声を聞くと同時に、経団連会長の出身企業のように、3兆3000億の内部留保を抱え、5800億の営業利益を見込み、750億の株主配当をする力を持ちながら、赤字でもなんでもないのに無情にも大量の労働者のクビを切り、失業させ、野宿へと追い込むのです。


 かつて大企業は、終身雇用制を軸にして会社に忠誠を誓う「日本型経営」で、一定程度労働者を庇護し、下請け構造の中で景気調整を行なってきました。下へ行くほど条件は悪くなり、最末端の寄せ場があったのです。上から押し込まれ寄せ場からこぼれ落ちた者が野宿生活へと追いやられてきました。
 それが「構造改革」以降、「景気の調節」を自ら自由に行えるように、企業の社会的責任を放棄し、一定の利益を派遣会社に与えるのと引き替えに、雇用責任を押しつけ、一足飛びに「調節弁」を内に抱え込んだのです。この大量解雇で企業はかなりのリスクを回避できるでしょう。無傷でいられるかも知れません。


 しかし、これだけ大規模になると誰の目にも問題が明らかとなり、野宿問題の一つの本質が見えてきます。ここに私たちは野宿問題の解決の一つの糸口を見つけることが出来ます。野宿問題が、単に「同情されるべき」、あるいはお金を与えて(生活保護)屋根の下に寝床を作ればすむ問題ではなく働く者すべてに共通の問題であることが。保護は、もちろん、取り敢えず緊急対策として重要なことですが…。


 まだまだ野宿問題には、課題があります。病院、製薬会社、福祉施設だけが儲け、当該は野宿で身体がボロボロになってから、病院-施設-野宿の生活をたらい回しという現行の保護・支援のあり方では、税金がかかって仕方がありません。また、営利目的の仕事とは違う、高齢になっても、身体が多少言うことをきかなくなっても、社会に貢献しながら、食べていけるような仕組みを作っていくことも、必要となるでしょう。


 「安心して働き、生活できる釜ヶ崎を」目指して、いろいろ考えながら、目の前にある現実に一つ一つ向き合い、来年も越冬闘争をやっていきたいと思います。

                第39回釜ヶ崎越冬闘争実行委員会