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いつだって明日はいい日

リアル面会

3日の朝、早朝からの勤務、1件目終わり携帯を見ると着信アリ。
登録してない電話番号は無視なんだけど…なんとなく胸騒ぎ。
折り返し連絡してみる。
病院からだった。

看護師長さんに替わる。
「先日のオンライン面会でもお分かりかと思いますが…」
ここ数日で急激にレベルが落ちているようだ。
先生から現状をお伝えしておくように、いよいよ覚悟しろってことか……。
遠くからではあるが会わせてくれるとのこと。

仕事は抜けられないので姉に連絡すると直ぐに会いに行ってくれた。
面会の様子を聞き、仕事が終わってから洗濯物を取りに病院に行く。
病棟を訪ねると快く病室まで案内してくれた。「他の患者さんにわからないようにね、見つかったら叱られますけどね
看護師長さんの気づかいがとても嬉しい。

母はウトウトしていてベッドをギャッジアップすると「なにするの」と少し怒った口調。
「だ〜れだ?」顔を覗き込む。
「誰?」名前が出てこない。
「娘さんだよ、名前なんだっけ?」
「娘?嘘だろ?こんな大きい子いないよ」「名前、忘れちゃったな。なんだっけ…」
姉の名前は出てくるが私の名前は出てこない。姉が来たときは私の名前ばかり呼んでいたそうだ。
「食べたいものある?お煎餅食べたいって言ったでしょ」と看護師さん。
「歯がないのに煎餅?」と私。
「煎餅?あぁ磯部煎餅ね…」と母。
磯部煎餅とは温泉水で作った炭酸煎餅で、母の生地、磯部温泉の名物だ。出掛けるときのお土産に好んで買っていた。
人は最期を迎えるとき段々と昔に戻って行く。今は生まれ故郷の風景が浮かぶのだろうか。

家で看てあげられたら良かったけど…ごめんね…
言葉が震える前に「もうお時間です、いいですか?」と看護師長さんが言う。
5分ほどの時間も目を開いてることは出来なかった。
会えるのも会話できるのもこれが最後かな?次のオンライン面会は朦朧としているかもしれない。
「意識があるうちに、お話できるうちにお会いになった方が…」と先生と看護師さんの配慮が心に染みる。

顔を見れば分かる。
いよいよ終が近いな。
意識が無くなり心臓がどれだけ持ちこたえるか本人の体力次第だ。

話ができてよかった。
声が聞けてよかった。
顔が見れてよかった。

介護に100%の満足は無い。
思いを残すことばかりが増えていく。
終が近くなれば近いほど良い事など忘れて悔いばかりだ。
こんなことなら喧嘩なんかするんじゃなかったな…。
優しくしてあげればよかったな…。

そんな思いとは裏腹に、何もないように普通に過ごす。
ご飯も食べるし笑いもするし遊ぶことを考える。

生きているって残酷なことなんだな。







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