■大むかしの朝へ
夢の中で かすかな朝の気配
古い扇風機のモーター音
古ぼけた時代が 戻ってくる
にぎやかな休日の記憶
わたしの右には 弟の小さな腕
額の汗が 平和に光る
「朝だよ」小さく声をかけて
その腕を 揺らしてみる
母の声 父の足音
一日のはじまりの 優しい空気
天井をながめて 目を閉じて
家のにおいを 思い出す
しばらく こうやって 空っぽの心で
動かない時と戯れる
私の世界は 丸く尖って
少しずつ転がって 傷ついて
帰れない時間へと 旅を始める
忘れたつもりで 消えていない
普通の 当たり前の おぼろげな時間へ
長くて あっけない旅を始める
おはよう おはよう
暑い一日が始まるよ