隠れ家-かけらの世界-

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大人への道、親になるということ~映画 『ある子供』

2008年01月06日 19時38分52秒 | 映画レビュー
■『ある子供』 (2005年制作) ベルギー=フランス

2005年度カンヌ国際映画祭パルムドール大賞受賞

  監督/脚本  ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
  出    演  ジェレミー・レニエ/デボラ・フランソワ

●ワルじゃない、単なる「子供」
 定職も自覚もない若者ブリュノ(20歳らしい)が父親になる。恋人は18歳(らしい)のソニア。
 赤ん坊を抱いて病院から出てくるソニア。悲しいほどに若いけれど、でもソニアには強さも母親としての自覚も、出会って間もない子供への愛情もある。そこがなんともたくましい。
 問題は父親となったブリュノ。その日暮らしで、まだ幼い子供のような子分を使ってのせこい商売の毎日。子供の顔をのぞく優しさもない。自覚なんて、そんなものは影も形もない、そんな感じだ。
 お金に困って子供を売ってソニアを失神させたり、その子を取り戻したために違約金を払えと脅されたり。悪気もない代わりに、人の心の傷を思いやる気持ちもない。
 悪党じゃないってこと。単なる「子供」なんだよな。子供が子供を作ってしまった、そういうよくある話、といえばいいのか。
 チンピラまがいの暮らしでは、本物の困難を乗り越えるほどの強さもワルな部分も育ってはくれない。ブリュノはただ途方に暮れて、子分の少年とともにひったくりをするくらいが関の山だ。
 刑務所の面会室にソニアが訪れる。泣き崩れるブリュノとソニア。涙がせつない。

●大人って…
 誰だって、大人になるのはたやすいことじゃない。計算どおりに?スムーズにいったはずなのに、ある日ちっとも大人になっていなかったことに気づいて愕然とすることもある。ひょっとすると、そういう不安定に気づかずに「大人になったつもり」のままの人もいるかもしれない(私もそうかも)。
 でもきっとたいていは、足取りのスピードに合わせて、出会った人々を見ながら、ああでもないこうでもないと行きつ戻りつしながら、普通に大人というゲートをくぐっていくんだろう。
 さて、このブリュノは、この先大人になっていくんだろうか、父親になっていくんだろうか。
 そして、そもそも「大人」って、どんな生き物なんでしょうね…、と、こんな年齢になって、ときどき考えてしまいます。



 原題はフランス語で『L'Enfant』、そのまま「ある子供」です。最初、あの二人の生まれたばかりの赤ん坊のことかと思ったけれど、まさしくブリュノのことだったのでしょうね。
 映画の中では、ブリュノの軽さと落ち着きのなさと、赤ん坊を抱いて行動するソニアのたくましさが対照的。ブリュノと戯れるときのソニアの幼さに、なんだかせつなくなってしまう。こんなに若くして背負い込んだ重たい荷物。この荷物がソニアを幸福の世界に導いてくれますように、とそんなことを祈ってしまいました。

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