隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

8月15日に思う

2007年08月15日 20時37分41秒 | 日記
■2007年8月15日

○母の誕生日と…
 今日は母の誕生日。出勤前にゼリーを持って寄ってみたら、「病院に行きます」のメモ。一人暮らしの母の家はいつもきれいで整然としている。
 「検査の結果は異常なしだったわ」と、事務所に電話が入る。珍しく「きれいな美味しそうなゼリーね」と、私のみやげを褒めてくれる。
 母の日と終戦の日。どちらかを思い出せば、この日を忘れることはない。小学生の頃からの習慣。
 母が戦争を語ることはない。

○父と息子 
 ホームで久しぶりに出会った父子連れ。息子は知的障害者で、中学生の頃からの知り合い。今は父親の勤務先の作業所で働いている。
 毎朝、父と子は並んで電車を待ち、同じ電車に乗って、そして同じ時間に帰ってくる。
 「暑いのに大変ね」と笑って話しかける青年。そう、もうすっかり青年になった。それでも、しぐさや言葉づかいは昔とあまり変わらない。
 炎天下に出て電車を待とうとする息子の背中をそっと抱いて、日陰に入らせる父親。
 いつ会っても、父親の目は優しい。息子に対してだけではなく、通りすがりの私にも優しい。
 倒れることは許されないから、そう自分に課しているから、強くて優しい人ができあがったのか。
 「お盆が終わったら、郷里に帰って墓参りをしてきます」
 そう言って、次の次の駅で降りていった。
 ホームを歩きながら、息子の帽子を直してあげる父親の腕が、前より少し細くなったように見えた。
 息子は27歳、父親は来年、定年を迎えるそうだ。


○夏空の青
 都心の歩道橋の上から見えた青空。白い雲がぽっかり浮いている。
 夏の空の色ほど、美しいものはないと思う。「何色が好き?」と聞かれたら「黄色」と答える私だけれど、本当は「新緑の葉」と「夏空の青」に勝てる色はないと思っている。
 とくに夏空の青は私を、過去の街や過去の人や過去の物語に引き戻す。ときどきそれがたまらなくイヤで、目をつむりたくなることもある。
 でも今日は、心が自由にはばたいて、私は初めて「幸せ」を感じた夏の日に思いを馳せた。
 悪くない朝の数分間の立ちくらみだった。BGMは『群青』で。




○想像すること
 かつて、この国に起こったことを想像してみる。語る人の少なくなった日々のことを想像してみる。
 多くの資料や映像や証言を総動員しても、私たちの想像力はたやすく限界を見せて、そこから伸びてはいかない。
 「戦争を美化し、散っていった若者たちの行動に青春を描く映画を決して許さない」と言った映画監督がいる。
 「死にたくなんかなかったですよ。生きたかったですよ」と遠い目で語った元特攻隊員がいる。
 「母の死は犬死にでした」と泣いた、年老いた原爆孤児がいる。
 そういう言葉の一つ一つを道連れにして、私たちはあの頃を想像するしかない。それを続けていけば、おのずと「当たり前の結論」に達するような気がする。
 原爆の唯一の被災国であり、一方、戦場で残虐な行為をした国である日本に生まれた私たち、である。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 空がきれい | トップ | 来年もここで!~8月16日... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。