隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

弱虫のロック論2 リリースパーティー ~奥田民生+NICO

2016年10月08日 03時07分43秒 | ライブリポート(音楽)

2016.10.4
弱虫のロック論2 リリースパーティー
at 豊洲 PIT



 東京とは言っても緑ばっかりの郊外から出てくると、夜の豊洲は別世界。広い舗道の脇には草むらがあったりして、その向こうの運河の対岸のノッポビルの灯りが揺れていたりする。

 

 開演も迫っているのでそんな雰囲気を味わうまでもなくウォーキングペースで進むと、汗が噴き出す。10月だというのにこの夜は暑いぞ!
 豊洲 PITの前は昼間だけど仕事でうろうろしたことがある。でも中に入るのは初めて。初めてのライブハウスって、それだけで気持ちが高まる。
 チープなつくりは、成り立ち(ココ)を思えば心地よい。そして中は・・・広い! 若い頃に狭くていかがわしいライブハウスデビューしてしまった私にはどのライブハウスも広いけれど、ここはすごいなあ。Zeppよりはるかに。しして縦長ではなく横にのびている感じ。あとでわかったのだけれど、後ろにいてもステージが案外見える。そんな気がした。音は? どうかな。

 ちょっと意外だったったのは、前のほうに椅子席があったこと。数列というわけではなくもっと。開演も迫っていたので席は埋まっていたけれど。あれは指定席?
 私はスタンディングゾーンの後ろに紛れ込む。
 奥田民生+NICO Touches the Walls の対バンということでお客さんはどんな感じ?と思ったら、私の周囲には30~40代の方、20代くらいの若い方、本当にいろいろ。ちょっと年配かな?と思われるカップルも何組か見られたなあ。

 平山さんのご挨拶(「長くやっていると、こんなこともある。好きなバンドのライブを見たければ本を1冊書きなさい」なんてコメントもあり(笑))のあと、いろいろなアーティストからのメッセージの画像、コメントの文面がスクリーンに。
 HPで見られるからいいけれど、音声が聞きにくくて音が割れちゃう感じで、それがちょっと残念。

 http://www.yuichihirayama.jp/yowamushirock/


★奥田民生★
 そして、平山さんがSEのスイッチを押して、いつものように最初から脱力な感じの奥田民生登場!
 最初に奥田民生?と驚いた人もいたと思うけれど(ステージ上のセッティングを見ればわかりますね)、私は一応「弱虫のロック論1」のリリースパーティーも経験しているので、十分予想していた(コチラにそのときのレポあります)。
 弾き語りversionの奥田民生です。
 先にセットリストを。

 01  野ばら
 02  解体ショー
 03  花になる
 04  たったった
 05  MOTHER
 06  息するように
 07  ロボッチ
 08  The STANDARD
 09  メリハリ鳥
 10  イージュー★ライダー
 11  風は西から
 
 ライブで聴き慣れた「野ばら」で一気に民生ワールドだ。私にとっても大好きな楽曲。90年代の後半でこの人の放浪性と土着性が一緒に感じられた、勝手にだけど。離れたところにいる彼女に向ける優しさと、適度な距離を楽しむ男の本質ってやつです。いつも言っているけれど、民生氏のアコギのうねりと声の張り具合が今夜も最高な出だしだった。

 「解体ショー」、ライブで初めて聴いたなあ。これはライブとしてはレアな楽曲なのかな。アルバムの中では歌詞がおもしろいなあと心に引っかかった曲。最後の「急いでくれ~はだかになってくれ」までの畳みかける「~くれ♪」がこの人らしい適度な高まりで気持ちいい。この夜もステキだった。
 「たったった」「息するように」の独自の世界(ボキャ不足です)もギター1本とあの声のコラボで作り上げてしまう。「息するように」が収録されたアルバム『O.T. Come Home』は結構好きなアルバムで、これが聴けるとは思わなかったな。力強さと脱力と書いてしまうと、「それって奥田民生のどの曲にも言えるんじゃない?」と返ってきそうだけれど。
 「花になる」「MOTHER」はソロ民生の有名楽曲。「MOTHER」はPUFFYの歌唱もいいけれど。聞き流しそうでいて、心の隅に微妙に引っかかって消えない言葉たち。「MOTHER」は久しぶりに聴いたような気がする。母と海を感じて、少し穏やかになれる。
 個人的にこの夜のすてきな贈り物は「ロボッチ」かな。「恋のかけら」のカップリングでLIVEバージョンを聴いたときに、かっこいい~と思った記憶がよみがえる。あのとき以来かも。あれから20年。大人の民生さんが聴かせてくれた「ロボッチ」。究極のラブソングだ~。「まかせなさい 君は寝てなさい♪」のところ。イントロと最後のギターがカッコよくて、それに対するお客さんの反応もよかったな。
 そしてしっとりと「THE STANDARD」。アルバム『E』の「CUSTOM」~「THE STANDARD」の流れがなぜか好きで、仕事しながら聴いていたとき、そこにくると3曲だけ手が止まったという日々を思い出す。「それはそれとして~♪」が耳に残る。
 「メリハリ鳥」は、MCの流れで「リクエストしてもいいですよ」なんて言って、会場のあちこちから曲名が上がって、そのなかで「メリハリ鳥」だけ応えてくれたという・・・。そのとき、飛び交う曲名を聞きながら当の本人が「タイトル、ダサいのばっかだね。考えなきゃね。でも、曲はいいよ! タイトルがよくても曲がよくないっていうのよりいいでしょ」なんてダラダラと(笑)。アルバム未収録だから、なかなか聴く機会がないけど、私の知り合いの民生ファンの間ではかなりの人気曲。ふざけたタイトルだけど、どこか深いことを言ってそうな歌詞とおさまりのいいリズムで「メリハリ」がある? 楽しい時間が流れる。
 そしてやっぱりいいなあ、「イージュー★ライダー」(「そこそこ有名なこの曲のタイトルもどーなの?」なんて言ってたっけ)。究極の(この表現は便利)青春ソング。年老いた誰かさんにとっても、永遠の青春ソング。「Aメロからどうぞ」と言う民生さんの声に促されて会場に歌声が。私の周囲の女性はみんな美声で、きれいな「イージュー★ライダー」だ! ときどき歌って盛り上げながら、伴奏に徹したり。こういう「イージュー★ライダー」は私には初体験でした。
 「あ、カープ、優勝しました」と正確ではないけれど、こんなふうに言うと、「おめでとう!」と会場から。そしてラストの曲は「風は西から」。まさしくマツダのCM曲。民生作品には珍しく?ひねりはない歌詞だから、西から変わっていく空の色や風の匂いが素直に見えてくる楽曲。
 そして、退場。弾き語りでも力強く、うねりを感じさせながら、圧巻のステージ。たくさんの「間」が、落ち着きと安心感とちょっと異質な高揚感を残して、そして終わりました。

 MCをたどると・・。相変わらず「まだ10分しかたっていない」とか「(持ち時間が)1時間もある」「3曲目くらいでダレる」とか、そんなつぶやきで曲の間を巧妙につないでいく。会場の緩い笑いや失笑もライブの要素?
 「最近はユニコーンのツアーをやっているからソロ曲は忘れちゃってる」と言いながら、曲前にコード進行を確認して始めたり。「ヘヘ」なんて笑いながら。
 「最近はひとりで3曲以上は続けて歌ってない。3曲もひとりで歌うってどうなの? カラオケでならヒンシュクもんよ(そりゃそうだ・・)」
 「飽きない? 飽きたら話とかしててもいいよ。こんなふうにシビアに聴かなくても。隣同士で話してていいよ。曲が始まったら、こっちのほうが声が大きいから」
 「そっちも座ってるし。気が楽」みたいなことも言ってたかな? 椅子席のみなさんは座っていらしたのでしょうか? ま、弾き語りだしね。私ならちょっと立ち上がってしまいたくなる曲も結構あったな。
 歌詞を間違えたところがあったみたいで、「口パクじゃない証拠だよ。最近ライブでも口パクってあるからね・・・。オレもうまく歌えてるな~というときは口パクだから(笑)」
 「ギターをこんなふうに並べてるのは、見せびらかしているわけじゃないよ。それぞれチューニングが違う・・・。口パクだけどね(笑)」
 こんなふうに書いても、字面ではおもしろさが伝わらないもどかしさ・・です。


 民生氏退場のあと、女性MCの方が平山さんにインタビュー。
 5000本のライブ体験、今でも1ヵ月に10本のライブ(すごいなあ)、と言ってらした。
 それから、震災後の楽曲では、「歌詞が長くなった」とも。メッセージということなのか、溢れる思いということなのか。


★NICO Touches the Walls★
 登場から一気に高まる空気。旬なバンドにふさわしい雰囲気。
 椅子席のお客さんが人の頭の間から見えるのだけれど、立っていたように思う。とすると、民生氏のときは弾き語りということで、あえて座って楽しんでいたんだろうな、と納得。
 セットリストはこんな感じ。

 01  ローハイド
 02  anytime, anywhere
 03  BAD ROBOT
 04  梨の花
 05  ページ1
 06  手をたたけ(with 奥田民生)
 07 
ラーメン食べたい(with 奥田民生)
 08 
マシ・マシ
 09  天地ガエシ
 10  THE BUNGY
 ENCORE
 11 
息子(with 奥田民生)


 初期のころの曲やリリース前の曲、カップリング曲など、コアなファンも喜びそうなセットリスト。
 平山さんにリクエストしてもらったら、さすがにそういう曲が多かったようで、
 「リクエストに応えた曲も、そうでない曲も」両方混ぜ合わせて選んだ曲たちらしい。
 フェスやスピッツのイベントでちょこっとしかライブを見ていない、CDだけのNICO体験者ですが、光村くんの伸びやかな声と古村くんのギターをはじめとするバンドの音を十分に楽しめたライブだったな。
 メロディーはポップな座り心地のいいノリと進行で、でも言葉がどこかに引っかかってそれも気持ちよく、ボーカルの声がバンドの音を越えて耳に飛び込む感じが好きだ。ライブはCDより数倍弾む感じが強いんだな。アレンジもCDのままではないかもしれない。
 そして、インディーズの頃の作品という「梨の花」をライブで聴けるとは。まっすぐに伝わる繊細な恋心が切ない。恋心を直接的な単語は使わずに突き詰めていく。この曲が始まったとき、私の斜め前の若い女性二人が顔を見合わせて喜んでいました!
 「マシ・マシ」~「天地ガエシ」~「THE BUNGY」は会場が熱気で包まれて大盛り上がり。前のほうでもたくさんの手が上がっているように見えた。メロディアスにうねるベースも印象的だった。 


★そして奥田民生+NICOのコラボ3曲★
 どれもNICOからのリクエストで決まった曲らしい。ユニコーンのライブに行ったときに楽屋で「なんでもやるよ」という言質を取ったとか。「前座(笑)はオレ」ということも。
 「手をたたけ」はマジで盛り上がった! 両ボーカルの声質はまったく異なると思うのだけれど、それが幅を持たせるってこともあるんだな。この曲だったか、民生+古村のレスポールのギターバトルも楽しかった。サビで、民生氏にとっては高めのキーだったと思うけれど、歌い上げる感じがもう手放しでかっこよかった。彼は声は太いけれどキーは案外高いんだけれどね(本人がどこかで語っていたっけ)。若い光村くんも負けていないテクニックで応戦する感じ、見ていてうれしい。
 
 そして次の「ラーメン食べたい」。
 光村「僕らの曲じゃない。民生さんの曲でもない」
 民生「でもよく歌ってる」
 光村「聴いたことあります(笑)」
 正確じゃないけどこんな応酬があって、「ラーメン食べたい」。もちろん矢野顕子の曲。
 民生氏が一人股旅などでカバーしているのはもちろん知っていたけれど、NICOも「渦と渦」のカップリングでカバーしていたんだな。この夜の「ラーメン食べたい」はどちらのアレンジに近かったんだろうか? ロックな感じだったからNICO寄りかな。民生バージョンはもっと怠惰な?けだるい「ラーメン食べたい」だったと思う。
 
 アンコールは再び奥田民生も出てきて。笑っちゃうのは、NICOのメンバーも民生シャツを着ていたこと。「ラーメン食べたい」のときだったか、最後に「シャツがほしい~♪」「あげるよ~♪」みたいな掛け合いがあって。
 そのあと古村くんが光村くんに「びっくりした。ギターほしい・・とか言うのかと思った」なんて言ってたけど。
 それで本編で引っ込んだあと着替えてたんだな。おまけに民生自筆でそれぞれの名前入りだったらしい。それでアンコール前、ちょっと長めの時間だったのかな?
 そしてNICOのメンバーも大好きだという「息子」。「あこがれや 欲望や♪」から「ワイセツや ぼろもうけの罠や♪」の民生節の畳みかけの言葉が素晴らしくて、20年前から好きな曲。前にも書いたけれど、ツインボーカルの二人が、まったく異なる声とテクニックでありながら妥協せずに歌い、それでいて一つの糸のように何かを紡いでいく感じがちょっと胸に迫ったなあ。

 この前のアジカンと奥田民生のコラボでは、もう少し年齢差がなくて、ゴッチは民生氏を敬いながらも同業のヒトというスタンスで相手を見ている感じが伝わったけれど(ゴッチが思春期で音楽を聴き始めているときにユニコーンがあったわけで)、NICO光村にとっては、彼の音楽体験の記憶の始まりですでに奥田民生は大きなミュージシャンだったと思うし、そのあたりは対バンと言っても少し雰囲気も意味も違ったかもしれない。アジカンが醸し出していた火花はNICOにはなくて、もっと肩の力が抜けた「喜び」のほうが強く感じられたかな。
 それはそれで、どちらも十分におもしろいし楽しい。
 そして、奥田民生は内面はよく見えないけれど、いつも構えず、でもふらふらせずにそこにいる。どんな相手でも受け止め、でもそれだけではなく、弾む心と体で確実に今でも進化しているようすがあって、だから次のライブも見たくなる。
 楽しい夜でした!


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 秋です! | トップ | スピッツ﨑山龍男が語る~山... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。