花冠ブログ句会

主宰・選者/高橋正子 世話人/藤田洋子

●今日の秀句

2008-12-25 16:53:30 | 今日の秀句

■12月21日
□高橋信之選
★日の当たる水場に冬菜洗いおり/宮本和美
小春日和であろうか。「冬菜洗い」の水の冷たさにも快さを感じる。17字の中に切れ字がないので、言葉の流れがゆったりとして、そのリズムに小春の快さがある。(高橋信之)

□高橋正子選
★冬の雨東寺の塔の高きから/前川音次
「東寺の塔」の語感がよく、塔を籠めて降る冬の雨の印象がすっきりとして、むしろ明るい。(高橋正子)

■12月22日
□高橋信之選
★蝋梅の咲きつつ大き葉を落とす/黒谷光子
蝋梅が咲く頃には、葉を落としている。そこをうまく捉えた。(高橋信之)

□高橋正子選
★冬の夜や五右衛門風呂に薪を足す/小西 宏
冬の夜は、お湯も冷めやすい。湯加減を聞いて五右衛門風呂に薪をくべ足すのも、生活の楽しさやぬくもり。(高橋正子)

■12月23日
□高橋信之選
★地方紙にそれぞれ包まれ冬荷着く/甲斐ひさこ
暮の贈物、色々の里の実りものが地元の新聞に包まれて届けられた。荷を解きながら、里の新聞に思わぬ事柄を知る。お礼の電話が膨らんでゆく温かさが滲んでくる好きな句す。(志賀泰次)

□高橋正子選
★雨の音やがて無くなり雪の朝/篠木 睦
降っている雨の音が止んでしまって、雨があがったかと思うと、夜のうちに雪に変わっていた。今朝の雪の新鮮さが伝わってくる。(高橋正子)

■12月24日
□高橋信之選
★子らの声膨らんでメリークリスマス/志賀泰次
楽しいのがいい。明るいのがいい。「子ら」がいれば、なおのことである。(高橋信之)

□高橋正子選
★麦の芽や今朝の赤城は靄に起つ/小口泰與
麦の芽がまっすぐに伸び、靄の中に赤城山が起つ。麦の芽と、朝の靄にいい詩情がある。(高橋正子)

■12月25日
□高橋信之選
★下げてみる一匹の塩鮭の重さ/祝恵子
生活の実感があって、それがこの句の強みである。生活の重さをさりげなく背負い、さりげなくこなす。ときには、楽しささえもある。(高橋信之)

□高橋正子選
冬晴れを走る小鳥のグラウンド/下地鉄
冬晴れのひろびろと明るいグラウンドを、小鳥がチョチョチョッと走っている。小鳥もそれを見る作者も楽しそうだ。(高橋正子)

■12月26日
□高橋信之選
★ペダル漕ぐ冬至を過ぎし眩ゆさに/小川和子
「冬至を過ぎ」であれば、「眩ゆさに」がやや付き過ぎと思われるが、「ペダル漕ぐ」作者の「眩ゆさに」は、実感があり、「冬至を過ぎし眩ゆさに」にも偽りの無い実感を感じる。(高橋信之)

□高橋正子選
★吹き返す風は枯野の陽をゆらす/志賀泰次
「枯野の陽をゆらす」がいい。枯の中にある、「あかるさ」、「あたたかさ」、「ゆれる動き」が、相乗していい世界を作っている。(高橋正子)

■12月27日
□高橋信之選
★火の粉とぶ手締めの影や飾売/小西 宏
寒さを飛ばす様な歳の市の威勢の良い景が見えて来ます。上五がとても光景を引き立たせていて好きな句です。 (志賀泰次)
★風花や路面は青く光りつつ/桑本栄太郎
西日本でも、初雪となり、ちらちら雨と雪が降る日に出かけられたようですね。「路面は青く光り」で道路の冷たく濡れた様子、その日の寒さの厳しさの伺える句と思い選びました。 (小河原宏子)

□高橋正子選
★頂の枯れの中なる三角点/多田有花
頂上にある三角点が、枯の中に、しっかりと位置を占めて動かない。枯を引き締め、枯の大きさを示している。。(高橋正子)
★冬枯れの里の夕陽に分け入りぬ/藤田荘二(正子添削)
冬枯れの里の素朴さ、夕陽のまぶしさに郷愁があって、世を離れた一世界がある。(高橋正子)

■12月28日
□高橋信之選
牛小屋に大きな注連を飾りけり/宮本和美
日常的な風景だが、今の世のマスコミを喜ばす風景ではない。俗を抜け出たところが暖かい。見ている目が暖かい。(高橋信之)

□高橋正子選
牛小屋に大きな注連を飾りけり/宮本和美
平成21年の干支は丑。牛小屋にも大きな注連飾りを飾り、祝の気持ちと敬意を示す。ほのぼのとしてユーモアのある句。(高橋正子)

■12月29日
□高橋信之選
年の花とて水引を巻かれけり/前川音次
多くを語っていないが、新年を迎えるという、歳末のあわただしさとは違った、ゆく年の静けさが伝わってくる。私の好きな句だ。(高橋信之)

□高橋正子選
年の花とて水引を巻かれけり/前川音次
新年を迎える花、とくに松などには、金銀の水引をかけて目出度さを格をもって祝う。水引をかければ、年の花となるゆかしさ。(高橋正子)

■12月30日
□高橋信之選
碑に無窮の空と山茶花を/藤田荘二
現実を踏まえた、風景のいい写生があり、そこからの作者の眼は、その奥を見た。単なる写生ではない、本質的なところを見た。(高橋信之)

□高橋正子選
朝の陽をまつすぐ通す枯木立/川名ますみ
朝日がまっすぐに枯木立を通って差している冬の朝が快く読まれている。「まつすぐ」は、枯木立だから感じられること。(高橋正子)

■12月31日
□高橋信之選
千両の零れやすさよ花活ける/黒谷光子
「零れやすさ」に命があって、その命を大事に「花活ける」作者である。(高橋信之)

□高橋正子選
晴れわたる子の忌どこかに冬雲雀/柳原美知子
子の忌であれば、深い悲しみにまた沈むときであろうが、晴れ渡った空のどこかに魂の歌声のような冬雲雀の声を聞いた。天上の魂となった子ではないかとふと思う。(高橋正子)

●12月投句選句箱④

2008-12-24 20:52:37 | 投句選句箱
※12月21日(日)~31日(水)の投句は、こちらの<コメント欄>にお書きください。
(入賞発表は、2009年1月1日以降となります。)
※投句は、1日3句以内です。好きな句(コメント付きの選句)は、1日1句か、1週間まとめての5句です。投句された方は、必ず<好きな句>を選んでください。
※高橋正子先生選の入賞発表が週一回あります。
※花冠同人以外の方のご投稿は、ご遠慮ください。

▼投句・好きな句(コメント付きの選句)は、下の<コメント>にお書き込みください。

●12月伝言板

2008-12-23 17:27:33 | 伝言板

■年間賞・月間賞/new!
http://blog.goo.ne.jp/npo_suien105/

■オンライン新年句会のご案内/1月4日(日)new!
投句受付は、1月1日(木)~1月3日(土)です。
http://blog.goo.ne.jp/kakan15/

■新年オフ句会のご案内/1月17日(土)!
参加者は、その旨を下記ブログにお書きください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan115/

■花冠2月号/校正中!
http://blog.goo.ne.jp/kakan12/
■第89回オンライン句会/入賞発表!
http://blog.goo.ne.jp/kakan15/
■新刊ネット版 ブログ句集/志賀泰次・川名ますみnew!
http://www.suien.org/0003/blog/kusyu.htm
■高橋正子の俳句日記/毎日更新!
http://blog.goo.ne.jp/kakan02/
■インターネット俳句センター
http://www.suien.ne.jp/haiku/



■花冠2009年度の同人費(前納3万円)を受け付けていますので、よろしくお願いします。
みずほ銀行日吉支店 普通預金1080862
名義 水煙事務局(スイエンジムキヨク)

■今日の秀句/花冠ネット句会new!
今日の秀句を発表しましたので、このブログの下方をご覧ください。

▼伝言などがありましたら、下の<コメント>にお書き込みください。花冠同人以外の方のご投稿は、<談話室>にお願いします。
花冠発行所IP電話:050-3641-8827(横浜)

●入賞発表/12月14日(日)~12月20日(土)

2008-12-21 20:50:28 | 入賞発表

■12月14日(日)~12月20日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★短日の車窓灯りの過ぎるのみ/黒谷光子
日の短さが「過ぎるのみ」で、はっきりと言い表されている。暮れ急ぐ日に、人は、車窓の灯りに思いを入れるゆとりもなく、淡々と行き過ごさせる。(高橋正子)

【特選/5句】
★冬畑の水路へ三歩の橋渡し/甲斐ひさこ
冬の畑と畑の間に小さい水路があって、渡ればたった三歩終る板橋だろうがかけられている。それが一人前の橋であるので楽しい。肥料を運んだり、農機具を運んだりするのに、役目も大きいのだ。(高橋正子)

★裏の庭農家のかたちに冬日影/飯島治朗
農家には、裏の庭もあって、野菜なども植えられている。冬の日が差すと、農家のかたちのとおりに影が生まれる。面白いところに目が行き俳句の良さが出た。(高橋正子)

★櫨紅葉散りしばかりの坂を海へ/柳原美知子
櫨の紅葉はあざやかで、海と対比されて、その美しさが際立つ。坂道を海へと歩くと気持ちにも広がり生まれる。(高橋正子)

★毛糸帽畑の畝を往復す/祝恵子
畑のなかに毛糸の帽子が目だって、畝を往復している。それが面白いので句となった。麦踏みとか、肥料を撒くとかといった農作業なのであろうが、毛糸帽が擬人化され、生かされた。(高橋正子)

★雪つぶて満月に向け抛うてみる/志賀泰次
全き満月に雪つぶてを抛ってみる。満月の光りのなかで、宙を飛んだ雪つぶては、どこかぱっと散るだろう。思いっきり抛って見たい気持にさせた満月である。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★植替えを待つ葉牡丹の積まれおり/多田有花
植替えを待って葉牡丹が積まれている。「積まれる」は無造作なようであるが、それが却って、丈夫で、生きのよい葉牡丹であることを教えてくれている。植えられれば霜の季節のいい彩りとなる。(高橋正子)

★雨やみて水滴溜める辛夷の芽/村井紀久子
雨がやむと、銀色の辛夷の芽を包むように、水滴ついて輝いている。芽ぐむものの、綺麗な、生きいきとした光景。(高橋正子)

★字三戸寒灯あとは野の闇満つ/大西 博
字村の三戸に灯がともり、そのほかは、野の、全くの闇となっている。「野の闇満つ」に、生きた闇が感じられる。(高橋正子)

★畑土の乾かぬ大根隣より/宮本和美
新鮮な大根をお隣の方が持ってきてくださったのですね。畑から抜いてそのまますぐに土がついたままの大根を届けてくださった、ご近所の親しいおつきあいがしのばれます。 (多田有花)

★ブナの森落葉を土に返しつつ/河野啓一
ブナがすっかり葉を落してしまいました。やがて腐葉土となり、春には新しい葉となるのでしょう。自然の営みの素晴らしさを感じる句と思いました。 (小河原宏子)

★自転車のかごより出でし冬野菜/堀佐夜子
自転車のかごからはみだすほどの冬野菜の葉や茎に、冬の寒さの中で元気に生育した野菜の力強さを感じます。温かい食卓に上るであろう優しさもあります。(臼井愛代)

★利根激つ雪雲山を離れけり/小口泰與
利根川のわきたつような流れと山を離れる雪雲という冬らしい情景。日々の生活の中にある親しい景色だからこそ、山や川や空の変化を敏感に、そして感慨深く受け取っておられる作者の姿があります。(臼井愛代)

★冬日和畝の一筋ふくらめる/藤田洋子
耕された畑に、畝が高々と整っています。作物が育つその場所が、明るく晴れた冬の一日に、いっそう豊かに感じられます。(臼井愛代)

★冬温し屋並の近き森を行き/小西 宏
冬にしては穏やかな一日に、森を散策された楽しい時間を感じます。近くに家並が見えて、人が居る温かみもあります。(臼井愛代)

★花時計針指す葉ぼたん光りおり/小河原宏子
花時計の針の指す先で、柔らかな冬日を浴びている葉ぼたん。公園や駅のロータリーのような、人々の憩いの場所の和やかな情景を思い浮かべます。(臼井愛代)

【入選Ⅱ/12句】
★チカチカとクリスマスツリーに動きあり/高橋秀之
クリスマスの頃の電飾に動きありと読まれたのが楽しいです。マンションの玄関にもクリスマスツリーが飾られました。 (村井紀久子)

★神の杜冬雲大きく動きけり/前川音次
冬の雲は寒々と垂れ込め、寒い空に滞って動かぬことが多いが、さすが社の杜の雲は、神の力で大きく動いた。その驚きを素敵に詠っていると思います。 (小口泰與)

★霜柱立ちて青菜の畝あたらし/小川和子
霜柱の畑に、緑濃い冬の野菜が元気に育っているようすが冬清清しく感じられます。(小西 宏)

★靴底の当たり柔らか散り紅葉/吉川豊子
紅葉が散って積もっている場所なのでしょう。ふんわりとした紅葉の嵩を靴底で感じられた時の、はっとうれしい発見があります。(臼井愛代)

★飴色に大根炊きあげ灯の下に/井上治代
炊きあがった大根が、灯の下でつややかな飴色を見せています。この季節、美味しくなってきた大根の、あたたかくうれしい一品です。(臼井愛代)

★きらきらと溶け行く朝の薄氷/丸山美知子
夜の間に張った薄氷が、朝の日に溶けてきらめいています。薄氷のうつくしい変化に目を留められた感動があります。(臼井愛代)

★マフラーを口まで巻いて少女駈く/川名ますみ
寒さに負けまいと、口の辺りまでマフラーに顔を埋めて元気に駈けてゆく少女を微笑ましく目で追う、作者の楽しげでやわらかな眼差しを感じます。(臼井愛代)

★谷戸の田の静まりまぶし冬木立/小西 宏
谷戸は丘陵地が侵食されてできた谷間の低地。規模も大きくなく、動植物の豊かな生態系をもつといわれている。その谷戸の田が今しずかで、まぶしい日があたっている。周りに冬木立が見える。(高橋正子)

★昇る陽に残りて高き冬の月/桑本栄太郎
東からは太陽が昇ってきているのに、冬の月がまだたかいところに白く浮かんでいる。陽も残る月もある景色。(高橋正子)

★陽当たれば丸き色濃し竜の玉/古田けいじ
竜の玉は、リュウノヒゲの実で、小さく丸い青が美しい。陽があたると、つやつやとしてなお色を濃くするようである。(高橋正子)

★裸木や小鳥の声の透き通る/篠木 睦(正子添削)
冬は人里に小鳥が多くやって来る。葉を落としてしまった裸木の間を抜けて聞こえる小鳥の声は、晴れた日の空気のように透き通っている。(高橋正子)

★日を包み日差し弾きぬ水仙花/渋谷洋介
水仙に日があたっている。日を溶け込ませ、また日に輝いて日差しを弾いている水仙の花である。(高橋正子)

投句選句箱③/12月

2008-12-14 00:24:09 | 投句選句箱
※12月14日(日)~20日(土)の投句は、こちらの<コメント欄>にお書きください。
※投句は、1日3句以内です。好きな句(コメント付きの選句)は、1日1句か、1週間まとめての5句です。投句された方は、必ず<好きな句>を選んでください。
※花冠ネット第2句会に投句された句を再度投句することも許されます。
※高橋正子先生選の入賞発表が週一回あります。
※花冠同人以外の方のご投稿は、ご遠慮ください。

▼投句・好きな句(コメント付きの選句)は、下の<コメント>にお書き込みください。

●入賞発表/12月7日(日)~12月13日(土)

2008-12-14 00:21:19 | 入賞発表
■12月7日(日)~12月13日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★登校す列の中より咳聞こゆ/祝恵子
登校の子どもたち列に、咳をする子がいる。その咳が気がかりになり、具合を思いやる作者がいる。平明な言葉だが、訴える力がある。(高橋正子)

【特選/5句】
★風荒れて山の眠りを深くする/多田有花
風が吹き荒れると、山は目覚めるどころか、ますます眠りを深くして鎮まる。山がさびさびとした色になるからだ。(高橋正子)

★そら深く晴れたる谷戸の初氷/小西 宏
谷戸という特異な地形に見られた初氷。空は、「深く」というほどによく晴れている。明け方の急な冷却がもたらした初氷だが、そのままを詠んでよい句となった。(高橋正子)

★毛糸帽の少女見え来る今朝の霧/甲斐ひさこ
今朝の霧は深く、見通せないが、やがて人影が見えるようになると、毛糸の帽子を冠った少女である。あたたかそうで、頬もぽっとあかく、笑顔なのだろう。思いがけずも毛糸帽のかわいい少女だったのはよかった。(高橋正子)

★朽ち葉踏む早や幾つかの冬の芽に/志賀泰次
朽ち葉を踏みつつゆくと、幾つかの冬の芽を見つけた。葉を落とすときには、すでに次の芽をはぐくんでいる。生命の強かさへの驚き。(高橋正子)

★木蓮の冬芽月光に包まれて/黒谷光子
木蓮の冬芽は、すでに銀色となってふくらんでいる。それを月光が包み、なおさら美しく育んでいる。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★枯木立木登りする子丸見えに/飯島治朗
枯木立の中の一本の木にに登る子がいて、木登りの様子が丸見え。見守る作者も楽しそうである。(高橋正子)

★療苑の銀杏落葉を掌に眠る/川名ますみ
療苑に銀杏があって、きれいな落葉を落とした。その銀杏の落葉を一枚掌にして、葉柄を持ってくるくる回したり、葉の形や色を楽しんだりしていると、いつの間にか眠ってしまった。病床の慰みとなった銀杏落葉である。(高橋正子)

★枯芝の丘まろやかに沖の見ゆ/藤田洋子
枯芝の丘は、まろやかに、なだらかであって、やさしい曲線を描いて、そこからは沖が見える。こういった景色は、瀬戸内の細やかな風景として印象的である。(高橋正子)

★大雪やきりりと青き今朝の空/桑本栄太郎
大雪の日は姫路でもいいお天気で青空と日差しが心地よかったですね。「きりりと青き」でこの日の空の晴れ渡った爽快さが伝わってきます。 (多田有花)

★真っ青な冬空広き奈良春日/高橋秀之
その日作者が立たれた奈良の春日の地の、青々と澄んだ冬の空が目に浮かぶようです。前書きにあるマラソン大会に臨む、作者の楽しい心の広がりも重なっているような御句と思います。(臼井愛代)

★裸木を越えれば真直ぐ月昇る/藤田荘二
裸木を越え、もう遮るもののない空を、冴え冴えとした月がまっすぐに昇る様子には、時間の経過に伴う大きな情景の広がりを感じてリアルです。(臼井愛代)

★初霜の畑地一枚陽にひかる/小川和子
初霜がおり、日を浴びて、畑一面をきらきらと光らせています。その美しさに触れた作者の、初霜ならではの感動があります。(臼井愛代)

★冬満月仰ぐ人みな静かなる/藤田裕子
煌々と下界を照らす冬満月の、それを仰ぐ人を圧倒するような迫力、神々しさが伝わってきます。(臼井愛代)

★蜜柑剥く瀬戸の潮騒聞こえくる/宮本和美
蜜柑にある温かいイメージと、瀬戸内の潮騒の穏やかなイメージとが相まって、冬でありながらほっとあたたかな、優しいひと時が伝わってくるようです。(臼井愛代)

★水辺へと下る斜面も団栗/臼井愛代(信之添削)
原句は「団栗の水辺へ下る斜面にも」であったが、俳句では「も」や「ごとし」の使用が難しい。添削では、「も」を抑え、「団栗」を強調し、下五に置いた。リズムは、単調な五七五では無いが、リアルな景を求めた。(高橋信之)

【入選Ⅱ/14句】
★花菜育つ畝のみどりや冬の晴れ/柳原美知子
冬晴れの明るさに田畑を眺めまわしてみれば、畝畝にはすでにみどりが兆し、花菜の育つ気配があるとのことです。このように闊達に明るい冬景色を届けてくれるこの句に、季節の移り変わりの孕む強い力を感じます。(小西 宏)

★茶箪笥の引手ことこと寒気来る/前川音次
日本列島を寒気が覆い、身の動きにもなんとはなしの重たさが感じられる。「茶箪笥の引手ことこと」の措辞に、冷たい日本家屋の暮らしぶりがしみじみと伝わります。(小西 宏)

★初氷空の青さを映しけり/小河原宏子
初氷をえた朝のきりりと引き締まる空気に、まっさらな青空を見る喜びが新鮮です。(小西 宏)

★瀬の早し縋るもの無き冬の空/小口泰與
水量の乏しくなった冬の川瀬の流れの速さに、捉えて頼りとする当てを見つけることのできない寒々とした冬空の情景を思い起こすことができます。(小西 宏)

★落葉焚く児らに真っ直ぐ煙立ち/大西 博
掻き集めた落ち葉に火が付けられ、まっすぐに煙が立ち昇るという描写に、子どもらの広々とした心の情景が映し出されています。(小西 宏)

★詩を吟ず言葉は白き息となり/渋谷洋介
詩吟をされたのか、句を声を出して読まれたのか、わかりませんが、「詩を吟ず」は美しい言葉で、「白き息」で辺りの静かな冷やかさが感じられる句と、思います。 (小河原宏子)

★冬雀ふくらむ胸を電線に/堀佐夜子
寒雀 冬雀は愛らしいもの、着ぶくれて電線に止まっている様子を分りやすい言葉で詠んでいるところに好感が持てます。冬の朝の気持ちの良さを感じます。(前川音次)

★枯枝を揺らせ小鳥の群れ立ちぬ/河野啓一
一斉にに鳴いて、一度に飛び立つ小鳥たちにふと目をやると小鳥たちの居た枝は未だ揺れを残しています。情景がよく伝わる好きな句です。(甲斐ひさこ)

★たんねんにはたはた寿しの仕込みする/丸山美知子
はたはた寿しは、秋田の郷土料理です。下処理して塩漬けにしたハタハタを水に漬けて塩出し、麹を混ぜた飯とカブやニンジンなどの野菜、昆布などとともに桶に詰めて重石をして漬け、3~4週間くらいで食べられるようになるとか。まだ食べたことはありませんが、おいしそうです。 (多田有花)

★時雨来て風邪をひくなと遠ざかる/吉川豊子(正子添削)
冷たい時雨がやって来た。しばらく降ると、遠くに行ってしまった。一言「風邪をひくな」と言い残されたような気がした。そう気づいたのだが、時雨を擬人化して面白い。(高橋正子)

★満天星紅葉四角に刈られて燃えにけり/古田けいじ
満天星は「どうだん」と読む。赤く燃えた満天星つつじが、四角に刈り込まれて、さっぱりとした景色が出来上がっている。(高橋正子)

★師の句碑の台座に積る落葉かな/篠木 睦
師の句碑を訪ねると台座に落葉が積もっている。特に掃かれた様子もなく、自然の為すままに句碑がある。師への敬慕があたたかい。(高橋正子)

★こぼれ花そっと手にのせ日向ぼこ/井上治代
日向ぼこをする無為の時間。こぼれ花をそっと手にのせてみたりする。小さい影も生まれて、いとおしい。(高橋正子)

★仏前に最後の賞与供えけり/國武光雄
定年を迎える作者であろう。もらうことが最後となった賞与を仏前に供え、これまで勤めあげることができたことを先祖に感謝する。一入思いのある賞与である。(高橋正子)

投句選句箱②/12月

2008-12-07 00:22:03 | 投句選句箱
■今週の秀句
今週の秀句8句を選び、コメントをしています。下記のアドレスをクリックしてご覧ください。
http://www2.ezbbs.net/07/kakan4/


※12月7日(日)~13日(土)の投句は、こちらの<コメント欄>にお書きください。
※投句は、1日3句以内です。好きな句(コメント付きの選句)は、1日1句か、1週間まとめての5句です。投句された方は、必ず<好きな句>を選んでください。
※花冠ネット第2句会に投句された句を再度投句することも許されます。
※高橋正子先生選の入賞発表が週一回あります。
※花冠同人以外の方のご投稿は、ご遠慮ください。

▼投句・好きな句(コメント付きの選句)は、下の<コメント>にお書き込みください。

●入賞発表/12月1日(月)~12月6日(土)

2008-12-07 00:18:51 | 入賞発表
■12月1日(月)~12月6日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★猪狩を外れし犬と出会いけり/多田有花
猪狩をしてきた犬と山道で出会った。「外れし」が犬をうまく言いえている。猪を追い、山中を駆け回った犬と、今は静かに山を下る犬との対比が読み取れるのである。(高橋正子)

【特選/5句】
★朝市の大根洗い立ての色/古田けいじ
朝市には新鮮な野菜が出されるわけだが、泥を洗い落として、白さも際立つみずみずしい大根が積まれている。「朝市」がよい。(高橋正子)

★一棟をきらきらと越す落葉風/川名ますみ
落葉を連れて風がマンションの一棟を越えていった。きらきら光るのは、落葉も、風も。明るく、高みのある句だ。(高橋正子)

★木枯らしの過ぎゆくままに山の色/河野啓一
木枯らしが吹き過ぎてゆくが、山は泰然として、木枯らしよ、勝手に吹けと、吹かれるままの色である。「融通」の心境。(高橋正子)

★花柊こぼるる時や香るとき/小河原宏子
もとの句は、「柊」だけであったが、それでは、句意がはっきりしないので、「花柊」とした。柊の花は、銀のような清らかな香りをこぼす。こぼれるときに香る。(高橋正子)

★淀川にすずろに昇る冬陽かな/桑本栄太郎
淀川に冬の陽がすずろに昇る。太陽は天体の運行にしたがって動く。これとは別に、読み手の気持ち、風景のありよう、つまり、淀川に白い湯気がゆらぎ、靄がかかったような風景によって、「すずろに」と感じられる。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★からからに太陽枯野を照らしけり/飯島治朗
枯野に存分に日が当り、からからと乾いた印象になった。「からからに」と「照らしけり」の呼応にややねじれがあるが、いい心境が出ている。(高橋正子)

★冬ぬくし歳の鉢梅花芽ふく/志賀泰次
正月用に鉢に植えられた梅が、ぬくさに花芽をふいた。小さな花芽にほっとする希望がある。(高橋正子)

★きらきらと銀杏大樹は青空へ/大西 博
青空に聳え立つ銀杏大樹。きらきら輝く眩しさが美しい。(高橋正子)

★昏れかかりどさつと落つるかりんの実/前川音次
「かりんの実」の色には、「昏れかかり」と言う時間、暗さが良く似合う。「どさっと」は、かりんの実の重さである。(高橋正子)

★六甲の上に雲なし冬ざれる/高橋秀之
「六甲山」の地名が効いている。六甲の山容と空。雲もないところが「冬ざれる」を感を強めた。(高橋正子)

★雪嶺を越せば雪国日本海/篠木 睦
雪嶺の向こうは、との思いに嶺を越えれば、ありありと眼前に広がる雪国日本海。その景色に目を瞠る。(高橋正子)

★冬の月明るき星を引きつれて/矢野文彦
冬の月が引き連れている明るいふたつの星は、金星と木星であろう。 冬の夜空のなかでも、まことに静かに輝いている。(高橋正子)

★冬晴れや赤き実と実の光り合う/井上治代
赤い実は寄り合っている。冬晴れの陽につぶらな赤い実が光りあって小さな世界が生まれている(高橋正子)

★紅葉散る水一筋に流れゆく/藤田洋子
紅葉が散り、水は紅葉を連れて、そうそうと、ただ一筋に流れる。その流れに「時」もひたすらに流れてゆく思いだ。(高橋正子)

★荒縄の男結びや雪囲/宮本和美
「荒縄」だから「男結び」が似合う。雪囲ががっしりとでき、その中はあたたかそうである。(高橋正子)

【入選Ⅱ/12句】
★山茶花の白によろこび溢れている/臼井愛代
山茶花の花弁は一つ一つがはなれている。この山茶花は八重咲きなのだろう。清純な白い花びらによろこびが溢れているように思える。(高橋正子)

★楢の葉の穏やかに照る冬の晴/小西 宏
冬晴れに楢の黄葉した葉が穏やかに照っている。穏やかにはうららかな気持ち。(高橋正子)

★散り敷いて紅葉やわらか靴底に/吉川豊子
散り敷いた紅葉を踏むとやわらかな感触が靴底に伝わる。散り敷いた紅葉を感触で捉えた。(高橋正子)

★大根のどさりと置かれ無人売場/渋谷洋介
無人売場らしく、大根が無造作にどさりと置かれている。「どさり」の自然体がいい。(高橋正子)

★初雪を幼なの瞳映しおり/藤田裕子
初雪に目を瞠る幼子の純真な様子がよく窺える。(高橋正子)

★星瞬く柊の花零しつつ/柳原美知子
柊の花は小さく粒のような白い花で、品のある清らかな香りをもつ。星の瞬く光りにも似ている。そんな瞬く星と柊の花の取り合わせが清らか。(高橋正子)

★冬夕焼け河川敷をば染め尽くす/堀佐夜子
川の流れはそのままに、枯葦も突っ立って、広々とした河川敷が一日の終わりに輝いている。(高橋正子)

★泥濘を避けつつ仰ぐ冬紅葉/黒谷光子
冬紅葉のころは、また時雨の降るころで、紅葉の陰の地面はぬかるんでいることがある。紅葉を仰ぎ見るには、足元の泥濘に気をつけなければいけない。これも紅葉の愛で方。(高橋正子)

★ねぎ摘みて夫は持ちくる朝餉用/祝恵子
朝食の準備に忙しい主婦に、早起きの夫は、葱を摘んでもって来てくれた。味噌汁に匂う葱の香が冬の朝はうれしい。(高橋正子)

★夕映えの雲を離して雪浅間/小口泰與(添削)
雪の浅間に離れて夕映えの雲が浮かんでいる美しい光景。「離して」は、浅間を擬人化しての表現だが、浅間の山容がよく目に浮かぶ。(高橋正子)

★霜柱ざっくり踏んで朝出かな/國武光雄
早朝家を出る。霜柱を「ざっくり踏んで」は、男らしい様子で、霜の強い朝が想像できる。(高橋正子)

★樹の隙間日ごとに増して十二月/小川和子
樹が一枚一枚葉を落とし、枝の間に空が増える。十二月はそういう季節。(高橋正子)

投句選句箱①/12月

2008-12-01 00:08:21 | 投句選句箱
■今週の秀句
今週の秀句8句を選び、コメントをしています。下記のアドレスをクリックしてご覧ください。
http://www2.ezbbs.net/07/kakan4/


※12月1日(月)~6日(土)の投句は、こちらの<コメント欄>にお書きください。
※投句は、1日3句以内です。好きな句(コメント付きの選句)は、1日1句か、1週間まとめての5句です。投句された方は、必ず<好きな句>を選んでください。
※花冠ネット第2句会に投句された句を再度投句することも許されます。
※高橋正子先生選の入賞発表が週一回あります。
※花冠同人以外の方のご投稿は、ご遠慮ください。

▼投句・好きな句(コメント付きの選句)は、下の<コメント>にお書き込みください。

●入賞発表/11月23日(日)~11月30日(日)

2008-12-01 00:02:16 | 入賞発表

■11月23日(日)~11月30日(日)
□高橋正子選

【最優秀】
★一片の雲なき空よ波郷の忌/多田有花
波郷の忌日は、11月21日。肺結核を病んだ波郷に、一片の雲もない空と空気が、何よりの手向けと感じられる。(高橋正子)

【特選/5句】
★門灯を消す静けさに今朝の雪/志賀泰次
門灯を消そうと外を見ると雪が積もっている。朝の静けさが雪をもってなお静かになった。(高橋正子)

★夕闇を銀杏黄葉の黄を尽す/藤田裕子
「黄を尽くす」に銀杏黄葉の渾身のかがやきが表現されている。冷えてくる夕闇に銀杏黄葉の強さをみる。(高橋正子)

★対岸の水を均して葦枯るる/藤田洋子
「水を均して」はいい表現で、句に格が生まれた。向こう岸の水の平らかな光りが目に見えて、こちら側の水の葦も「枯るる」と表現され、かるい動きが言葉にも感じられる。(高橋正子)

★初雪や静まる林光満つ/丸山美知子
初雪なので、静まる林が鮮明な印象。「光満つ」で林に喜びがあるような明るさがある。(高橋正子)

★晴れし日の鶺鴒白き胸を張り/大西 博(添削)
もとの句は、季重なりなので添削した。鶺鴒は、地面を歩いていることもしばしば。いい天気なので、鶺鴒も胸を張って歩いているようだ。胸の白が印象的。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★大根干す空気甘しと思いつつ/宮本和美
ほどよい風があり、小春日和の日差しに空気が甘いと感じられる。こんな日に大根を干すと日と風に甘く干しあがるだろうと思う。(高橋正子)

★若狭きて鄙びた宿の松葉蟹/小河原宏子
若狭の鄙びた宿で出された松葉蟹。ただそのことだが、いい詩情がある。(高橋正子)

★朝日受け霜の白菜かがやけり/小口泰與
白菜がしっかりと巻いて立派に育っている。その白菜に霜の降り、朝日が差すと、きらきらかがやいて、生きいきとしている。(高橋正子)

★渡り来て白鳥散歩する岸辺/河野啓一
はるかシベリアから渡って来た白鳥も少し羽を休めたのだろう。この地で暮らし始めた余裕に岸辺を散歩する姿が見られる。(高橋正子)

★鐘の音や紅葉黄葉の谷降る/渋谷洋介
山寺へ詣でたか。谷を降りてゆくと、寺の鐘の余韻に、赤や黄のもみじがしきりに降って来る。鐘の音ともみじの取り合わせが日本的。(高橋正子)

★菜園の冬菊芳し朝晴れに/小川和子
菜園の隅に菊が植えられているのをよく見かける。その菊も冬に入ると、朝の晴れに芳しい香をあげる。これこそ冬菊の香。(高橋正子)

★一村に鎮守いずこも銀杏の黄/黒谷光子
一つの村には、鎮守の杜が一つずつ。どの鎮守の杜にも銀杏があって黄葉している。それが点在するので、日本の原風景があって、うれしい。(高橋正子)

★木枯に黄昏さそう紺の海/篠木 睦
木枯が吹くと、紺色の海にさえ、黄昏が来るのが早まるようだ。目にある紺が次第に色薄れてさびしくなるときである。(高橋正子)

★鬼ごっこ落ち葉踏みしむ音高く/高橋秀之
落葉も気にせず、元気に鬼ごっこをする子たちを詠んでいて、読めばたのしくなる。「音高く」に子どもの動きが見える。(高橋正子)

★雨の日の落葉の嵩の仄紅し/臼井愛代
積もった落葉に雨が降ると、枯色が仄あかく見える。その「仄かなあか」を捉えた感覚がいい。(高橋正子)

【入選Ⅱ/14句】
★シクラメン窓辺に咲いて朝日射す/堀佐夜子
華やかなシクラメンの花を窓辺に置けば、朝日がさして、心地よい日当たりに華やぎを増してくる。明るい窓辺に生活も楽しくなる。(高橋正子)

★冬晴れにハンドベルの音透き通る/飯島治朗
ハンドベルの音色が特に透き通って聞こえるのは、クリスマスが近いころ。冬晴れの日には、音に透明感が増す。(高橋正子)

★洋館を丘にとどめて冬きたる/藤田荘二
洋館は変わりもせず、丘の上に。冬も変わりもせずやって来た。こうして幾年も過ぎて来たのだろうし、また過ぎてゆくのだろう。(高橋正子)

★山の幸熟れ色揃わぬ柿一盛り/柳原美知子
山の幸のありがたみ。熟れ色が一様ではないところが、自然のままで絵になる。(高橋正子)

★霜柱踏みふみ行くや小学生/吉川豊子
小学生の登校時間は早い。霜柱を踏み、ざくざく鳴る音を楽しんで登校。寒い朝も元気な小学生。(高橋正子)

★冬晴れの屋上みあげ観覧車/祝恵子(添削)
冬晴れの屋上に、観覧車がゆっくりと回っている。冬うららかな光景。(高橋正子)

★遙かなる鎮守の杜の銀杏の黄/國武光雄
「遙かなる」は、単なる写生とは違って、作者の思いがある言葉。下五の「銀杏の黄」に季感があって、句を引き締めた。(高橋信之)

★顔見世のまねき見あぐや国訛り/前川音次
京都南座の十二月の興行の顔ぶれが貼り出される。「国訛り」が、昔ながらに例年の顔見世を楽しみにしているものがいることを知らせてくれる。歳晩らしい句。(高橋正子)

★ひとり行く小春の風の心地よさ/矢野文彦
小春日和の風に吹かれながら、ひとり気ままにゆくことは、気持ちが開けて快いこと。(高橋正子)

★冬菊のたわわに白く束ねらる/桑本栄太郎(添削)
寒さの中にも白い冬菊が咲いている。枝が乱れてくるので、束ねてくくると、その白色のゆたかなこと。(高橋正子)

★寒き夜のぶり大根のやわらかし/小西 宏(添削)
「かな」を使うと句が古い印象をもつので、添削した。大根とぶりの出会いを楽しむ旬の料理。寒い夜のご馳走。(高橋正子)

★凍雲のその先まばゆい光あり/井上治代
凍雲は寒空にじっと動かずにいる雲だが、その雲の先にはまばゆい光りがある。こういった空の景色も美しい。(高橋正子)

★葉脈の赤鮮やかに木の葉散る/上島祥子
散る木の葉のなかに、鮮やかな赤色の葉脈のものがある。葉脈まで鮮やかな赤であることの驚き。(高橋正子)

★人影も声も飲み込む芒原/村井紀久子
広がる芒原。その荒涼としたさびしさが「人影も声も飲み込む」と表現された。(高橋正子)