■10月16日(木)~10月31日(土)
□高橋正子選
【最優秀】
★鶏頭の色が燃え立つ山畑に/古田敬二
秋冷の山の畑に咲く鶏頭は、澄んだ色よりも、もっと鮮やかで「燃え立つ」色となる。山の畑の鶏頭に昔と変わらない故郷の風景が見える。(高橋正子)
【特選/8句】
★詩をひとつ賜る雲や秋うらら/多田有花
うららかな秋空にぽっかり浮かんだ雲に、ふっと詩が湧いた。「ひとつ賜る」晴れやかな心がいい。(高橋正子)
★椎の実のかなたの海に造船所/柳原美知子
椎の実の生る丘に登ると、彼方に海が見えて、造船所がある。鉄の塊の巨大な重機や、できつつある鉄船は、穏やかなの景色のなかに、ひと際力強いものとして目に映る。椎の実と造船所の対比に、あざやかに瀬戸内の風景が蘇る。(高橋正子)
★河口まで風つなぎゆく芒原/藤田洋子
河土手に沿ってゆくと、一面の芒原。風は芒原を波立たせ、また次の芒原を吹いていく。「風つなぎゆく」は、的確な把握で、作者らしい表現となった。(高橋正子)
★赤とんぼ群れ離れしが湖の面に/黒谷光子
一つだけ、群れを離れて、羽をきらきらさせながら、湖の面を飛んいる赤とんぼ。湖のさざ波も美しく、ひとつ離れた赤とんぼの赤も印象的。(高橋正子)
★紅葉して滝一筋の白さかな/宮本和美
紅葉を割るように落ちる一筋の滝の白。鮮やかな紅葉の色と滝の白が明確なコントラストをなして、直截な句。(高橋正子)
★大空を確と映して芋の露/國武光雄
「確と映して」によって、固く結んだ大きな芋の露が想像できる。その露にまぎれもなく青い大空が映る。秋気澄明な世界。(高橋正子)
★星の夜は木犀いよよ香の高く/小川和子
星のきらめく夜は、大気も清冽で、木犀もますます高く香を放つ。品位のある句。(高橋正子)
★月冴えて蒼き干潟の静けさよ/篠木 睦
水の反射とはまたちがう、泥を照らす月の鈍い光が感じられます。「静けさ」もただ事ではありません。「蒼き干潟」の重量感に圧倒されます。 (小西 宏)
【入選Ⅰ/10句】
★秋澄めり船着き場まで醤の香/成川寿美代
醤油倉の立ち並ぶ、たまり醤油の噎せるような中を舟着場まで歩かれた際の句と存じます。秋の澄み切った空気とたまり醤油の澱んだ香りとの対比も面白く、素敵な句と思いました。(宮本和美)
★白鳥のきらきら過ぎる朝日受け/丸山美知子
朝のひかりの中に飛ぶ白鳥が、きらきらと輝きながら過ぎる。息をのむような、明るい、みずみずしい景が目に浮かびます。(小川和子)
★捥ぎたての柚子の香夕餉の吸い口に/佃 康水
柚子の香りが読み手にも、まっすぐ伝わってくるような、豊かな夕餉のひとときです。 (小川和子)
★天辺も揺れず銀杏は宙に伸び/河野啓一
恐らく風もない穏やかな秋晴れの下と拝察致しますが、青空を見上げ、どっしりと鮮やかな銀杏の木の梢が思われます。日毎に色が薄くなり、鮮やかな黄葉ももう間もなくですね。(桑本栄太郎)
★秋夕焼散歩の犬もその中に/祝恵子
夕焼けの中を連れて散歩されて居る詠者の姿が眼に見える様です。「散歩の犬もその中に」の措辞が秀逸で、秋夕焼けの散歩の景を素敵に表現されて居り、佳句と存じます。(宮本和美)
★新米のきらきら香り祭りずし/藤田裕子
新米の炊きたてはふっくらと輝き、粒も立ってそれだけで美味しいもの。まして祭りずしとあらば尚の事。祭りを迎えて弾む真情が「きらきら香り」との措辞に良く表われいて、素敵な句です。(桑本栄太郎)
★一灯や丹波高地の霧の中/前川音次
丹波は霧の多い所と聞きますが、高地の一軒家でしょうか。霧の中に幽かに見える灯火に美しい詩情を感じます。 (河野啓一)
★新駅のホーム過ぎれば草の絮/桑本栄太郎
草の蘂の飛ぶような場所に作られた新駅。「ホーム過ぎれば」に発見があり、映画の一コマを見る様な気分にさせて呉れる句。素敵と存じます。(宮本和美)
★秋嶺に雨は固体の音で鳴る/川名ますみ
秋嶺はなだらかな山ではなく、尖った鋭い稜線を見せる山でしょう。雪が来るのを待っているそんな雰囲気です。すでに晩秋の冷たい雨、冬の接近を感じさせる音を「固体」と表現されたのが新鮮です。(多田有花)
★藁塚のみな南へと倒れけり/小口泰與
刈田に強い北風が吹き、南へと倒れている藁塚。秋もいよいよ終わりを告げようとしている野山の風景がしんとして身に迫ってきます。(柳原美知子)
コンバインで刈り取るようになったせいか、田を訪ねても藁塚を見かけることが少なくなったような気がします。農家の方々はたいへんなのでしょうが、たまに訪れる者が藁塚に出会うと、心慰められるものがあります。みな南へと傾いている藁塚の姿に御地の冬の厳しさの前兆がうかがわれます。(小西 宏)
【入選Ⅱ/11句】
★青空は欅黄葉のうえにあり/多田有花
秋の空は青く、天空の高さがない様に思われる程たが、「秋の欅黄葉の上にあり」の措辞がバツチリで、その様子を的確に詠まれて居り、佳句と存じます。 (宮本和美)
★野を行けば野菊の露に濡れにけり/古田敬二
二つの「野」がよりリズムを生んでいる。野を行くと、野菊がふれて、露に濡れてします。野の風情がしずかに、快く詠まれている。(高橋正子)
★桜紅葉散れば夕空広がれり/小川和子
桜紅葉が散ると、夕空がひろびろと感じられる。遠いものへの憧憬を持ちながらも、ものさびしい思いがする景色である。(高橋正子)
★海からの風の高さに伊勢大根/篠木 睦
「海からの風の高さ」とは、どのくらいの高さかというと、伊勢大根を干している高さであると、意表をついて、下五で納得させられる。「伊勢大根」が伊勢の海を想起させて効果的。気持のよい句である。(高橋正子)
★露草や青の清しき今朝の道/飯島治朗
朝の散策の菜の句と想像いたします。緑色の包葉と朝やかな藍色の花を「青き清し」と詠まれた巧さに感心致しました。(宮本和美)
★廃材の置かれて久し草紅葉/桑本栄太郎
状況の把握が抜群で、しかも、季語「草紅葉」を十二分に生かしきった佳句と存じます。(宮本和美)
★灯を消して予備校寮の秋深む/成川寿美代
受験の近いこの時期の受験生は、深夜まで頑張っています。 秋の深まりとともに灯が消えて眠りにつく時間も遅くなっているのでしょう。(高橋秀之)
★天空に星ひとつあり日蓮忌/渋谷洋介
何度も法難にあいながら不屈の信念を持ってそれに立ち向かった日蓮。宗教的巨人の存在が天空のひとつの星に象徴されています。(多田有花)
★澄み渡る秋の夜空に星ひとつ/高橋秀之
秋気澄む大空に、星ひとつの美しく明るい輝きがありありと伝わり、秋の夜空のさやけさを感じます。(藤田洋子)
★見上げればぬけるような空白い月/迫田和代
仰ぐ高空の広やかさに際立つ白い月、爽やかな秋の状景に心も晴ればれと澄みわたるようです。(藤田洋子)
★鵯のしきりに来たる庭の水/小西 宏
鵯のしきりにやってくる庭園の透明な水音や木の実の落ちる音が聞こえてきそうです。小鳥の声を聞きながら、美しい秋の庭園を眺める至福のひとときです。(柳原美知子)
ヒヨドリは冬は暖かな住宅地へ渡ってきます。庭の山茶花の蜜や蜜柑を食べに来ます。ヒヨドリが来るともうすぐやってくる冬の到来を感じます。野原でなく庭へやってくる鳥には愛着を感じます。(古田敬二)
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□高橋正子選
【最優秀】
★鶏頭の色が燃え立つ山畑に/古田敬二
秋冷の山の畑に咲く鶏頭は、澄んだ色よりも、もっと鮮やかで「燃え立つ」色となる。山の畑の鶏頭に昔と変わらない故郷の風景が見える。(高橋正子)
【特選/8句】
★詩をひとつ賜る雲や秋うらら/多田有花
うららかな秋空にぽっかり浮かんだ雲に、ふっと詩が湧いた。「ひとつ賜る」晴れやかな心がいい。(高橋正子)
★椎の実のかなたの海に造船所/柳原美知子
椎の実の生る丘に登ると、彼方に海が見えて、造船所がある。鉄の塊の巨大な重機や、できつつある鉄船は、穏やかなの景色のなかに、ひと際力強いものとして目に映る。椎の実と造船所の対比に、あざやかに瀬戸内の風景が蘇る。(高橋正子)
★河口まで風つなぎゆく芒原/藤田洋子
河土手に沿ってゆくと、一面の芒原。風は芒原を波立たせ、また次の芒原を吹いていく。「風つなぎゆく」は、的確な把握で、作者らしい表現となった。(高橋正子)
★赤とんぼ群れ離れしが湖の面に/黒谷光子
一つだけ、群れを離れて、羽をきらきらさせながら、湖の面を飛んいる赤とんぼ。湖のさざ波も美しく、ひとつ離れた赤とんぼの赤も印象的。(高橋正子)
★紅葉して滝一筋の白さかな/宮本和美
紅葉を割るように落ちる一筋の滝の白。鮮やかな紅葉の色と滝の白が明確なコントラストをなして、直截な句。(高橋正子)
★大空を確と映して芋の露/國武光雄
「確と映して」によって、固く結んだ大きな芋の露が想像できる。その露にまぎれもなく青い大空が映る。秋気澄明な世界。(高橋正子)
★星の夜は木犀いよよ香の高く/小川和子
星のきらめく夜は、大気も清冽で、木犀もますます高く香を放つ。品位のある句。(高橋正子)
★月冴えて蒼き干潟の静けさよ/篠木 睦
水の反射とはまたちがう、泥を照らす月の鈍い光が感じられます。「静けさ」もただ事ではありません。「蒼き干潟」の重量感に圧倒されます。 (小西 宏)
【入選Ⅰ/10句】
★秋澄めり船着き場まで醤の香/成川寿美代
醤油倉の立ち並ぶ、たまり醤油の噎せるような中を舟着場まで歩かれた際の句と存じます。秋の澄み切った空気とたまり醤油の澱んだ香りとの対比も面白く、素敵な句と思いました。(宮本和美)
★白鳥のきらきら過ぎる朝日受け/丸山美知子
朝のひかりの中に飛ぶ白鳥が、きらきらと輝きながら過ぎる。息をのむような、明るい、みずみずしい景が目に浮かびます。(小川和子)
★捥ぎたての柚子の香夕餉の吸い口に/佃 康水
柚子の香りが読み手にも、まっすぐ伝わってくるような、豊かな夕餉のひとときです。 (小川和子)
★天辺も揺れず銀杏は宙に伸び/河野啓一
恐らく風もない穏やかな秋晴れの下と拝察致しますが、青空を見上げ、どっしりと鮮やかな銀杏の木の梢が思われます。日毎に色が薄くなり、鮮やかな黄葉ももう間もなくですね。(桑本栄太郎)
★秋夕焼散歩の犬もその中に/祝恵子
夕焼けの中を連れて散歩されて居る詠者の姿が眼に見える様です。「散歩の犬もその中に」の措辞が秀逸で、秋夕焼けの散歩の景を素敵に表現されて居り、佳句と存じます。(宮本和美)
★新米のきらきら香り祭りずし/藤田裕子
新米の炊きたてはふっくらと輝き、粒も立ってそれだけで美味しいもの。まして祭りずしとあらば尚の事。祭りを迎えて弾む真情が「きらきら香り」との措辞に良く表われいて、素敵な句です。(桑本栄太郎)
★一灯や丹波高地の霧の中/前川音次
丹波は霧の多い所と聞きますが、高地の一軒家でしょうか。霧の中に幽かに見える灯火に美しい詩情を感じます。 (河野啓一)
★新駅のホーム過ぎれば草の絮/桑本栄太郎
草の蘂の飛ぶような場所に作られた新駅。「ホーム過ぎれば」に発見があり、映画の一コマを見る様な気分にさせて呉れる句。素敵と存じます。(宮本和美)
★秋嶺に雨は固体の音で鳴る/川名ますみ
秋嶺はなだらかな山ではなく、尖った鋭い稜線を見せる山でしょう。雪が来るのを待っているそんな雰囲気です。すでに晩秋の冷たい雨、冬の接近を感じさせる音を「固体」と表現されたのが新鮮です。(多田有花)
★藁塚のみな南へと倒れけり/小口泰與
刈田に強い北風が吹き、南へと倒れている藁塚。秋もいよいよ終わりを告げようとしている野山の風景がしんとして身に迫ってきます。(柳原美知子)
コンバインで刈り取るようになったせいか、田を訪ねても藁塚を見かけることが少なくなったような気がします。農家の方々はたいへんなのでしょうが、たまに訪れる者が藁塚に出会うと、心慰められるものがあります。みな南へと傾いている藁塚の姿に御地の冬の厳しさの前兆がうかがわれます。(小西 宏)
【入選Ⅱ/11句】
★青空は欅黄葉のうえにあり/多田有花
秋の空は青く、天空の高さがない様に思われる程たが、「秋の欅黄葉の上にあり」の措辞がバツチリで、その様子を的確に詠まれて居り、佳句と存じます。 (宮本和美)
★野を行けば野菊の露に濡れにけり/古田敬二
二つの「野」がよりリズムを生んでいる。野を行くと、野菊がふれて、露に濡れてします。野の風情がしずかに、快く詠まれている。(高橋正子)
★桜紅葉散れば夕空広がれり/小川和子
桜紅葉が散ると、夕空がひろびろと感じられる。遠いものへの憧憬を持ちながらも、ものさびしい思いがする景色である。(高橋正子)
★海からの風の高さに伊勢大根/篠木 睦
「海からの風の高さ」とは、どのくらいの高さかというと、伊勢大根を干している高さであると、意表をついて、下五で納得させられる。「伊勢大根」が伊勢の海を想起させて効果的。気持のよい句である。(高橋正子)
★露草や青の清しき今朝の道/飯島治朗
朝の散策の菜の句と想像いたします。緑色の包葉と朝やかな藍色の花を「青き清し」と詠まれた巧さに感心致しました。(宮本和美)
★廃材の置かれて久し草紅葉/桑本栄太郎
状況の把握が抜群で、しかも、季語「草紅葉」を十二分に生かしきった佳句と存じます。(宮本和美)
★灯を消して予備校寮の秋深む/成川寿美代
受験の近いこの時期の受験生は、深夜まで頑張っています。 秋の深まりとともに灯が消えて眠りにつく時間も遅くなっているのでしょう。(高橋秀之)
★天空に星ひとつあり日蓮忌/渋谷洋介
何度も法難にあいながら不屈の信念を持ってそれに立ち向かった日蓮。宗教的巨人の存在が天空のひとつの星に象徴されています。(多田有花)
★澄み渡る秋の夜空に星ひとつ/高橋秀之
秋気澄む大空に、星ひとつの美しく明るい輝きがありありと伝わり、秋の夜空のさやけさを感じます。(藤田洋子)
★見上げればぬけるような空白い月/迫田和代
仰ぐ高空の広やかさに際立つ白い月、爽やかな秋の状景に心も晴ればれと澄みわたるようです。(藤田洋子)
★鵯のしきりに来たる庭の水/小西 宏
鵯のしきりにやってくる庭園の透明な水音や木の実の落ちる音が聞こえてきそうです。小鳥の声を聞きながら、美しい秋の庭園を眺める至福のひとときです。(柳原美知子)
ヒヨドリは冬は暖かな住宅地へ渡ってきます。庭の山茶花の蜜や蜜柑を食べに来ます。ヒヨドリが来るともうすぐやってくる冬の到来を感じます。野原でなく庭へやってくる鳥には愛着を感じます。(古田敬二)
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