花冠ブログ句会

主宰・選者/高橋正子 世話人/藤田洋子

●入賞発表/3月22日(日)~3月31日(土)

2009-03-31 18:57:26 | 入賞発表
■3月22日(日)~3月31日(土)
□高橋信之・高橋正子選

【最優秀/2句】
★一山の花明りして暮れゆけり/藤田洋子
一山が桜の花で見事であるが、暮れてゆくときは、花の色が発光するようように暮れ残る。「花明かり」にある華やかさと寂しさの混じった抒情がよく詠まれている。(高橋正子)

★辛夷咲く川辺晴れ晴れ風渡る/堀佐夜子
辛夷の咲いている景色がよい。川辺であり、晴れ晴れとして、風が渡っている。そういう景色がよく、作者の気持ちに一致している。(高橋正子)

【特選/6句】
★咲き初めし辛夷湖へと枝を張る/黒谷光子
この句の眼目は、景色がよいことである。「咲き初めし辛夷」も、「湖へ枝を張る」も、これからのさらに美しい景色を想像させて、芯にしっかりとした力の強さがある。(高橋正子)

★花の冷え纏いてさらの句集来る/臼井愛代
花がほころびはじめた日に届いた句集。新刊書は、花冷えのする空気を纏い、受けとられた著者の喜びが静かに、ゆたかに伝わってきます。「さらの句集」が、心に残ります。 (小川和子)

★風走る青麦畑を沖となし/柳原美知子(正子添削)
青麦畑を沖と見立てたところが素敵です。青麦畑の広さと波打つ様子に風の爽やかさが感じられます。(高橋秀之)

★白魚を掬いて透ける湖の水/河野啓一
白魚を掬うと、透き通った体から透き通った春の水が滴り、白魚も水も春の日にキラキラと輝いています。瑞々しい生命に触れた作者の喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)

★青天の高嶺まぶしき花辛夷/宮本和美
青空の下、花辛夷の白い花が咲き誇っています。遠くに望む高い峰もまぶしく聳えて、光あふれる大きな春の景色となっています。 (臼井愛代)

★富士見える斜面にさみどりふきのとう/古田敬二
遠望の富士と斜面のふきのとう、風景の遠近と色彩の対比が鮮やかに目に映ります。さみどりのふきのとうのみずみずしさに、春の訪れをしかと感じます。 (藤田洋子)

【入選Ⅰ/10句】
★ひかり得て闇より生れし春の雪/小西 宏
夜降り始めた春の雪であろう。闇から舞い落ちる雪は、身の丈あたりに来ると、白く光って、それが雪と分かる。それが「ひかり得て」、ゆっくりと降る春の雪である。(高橋正子)

★下萌えに一歩の弾み佇めり/志賀泰次
北国にも春が訪れ、おそらく雪のかたまりも残る地面に下萌えの草をみつけられた作者。春に寄せる思いが、遺憾なく伝わる好きな句です。(小川和子)

★ローカル線森抜け春田の広びろと/飯島治朗
瑞穂の国の春田の景が見える様で、思わず長閑な気分になりました。 (宮本和美)

★風吹けば大空に満つ花つぼみ/小川和子
春の風に大きく揺れ、青空いっぱいに桜の花の蕾がひしめき合っている。目を瞑り、この句を口ずさんでいると、豊かな自然のエネルギーを感じることができました。(井上治代)

★野花にも触れて揺らしてつくし摘む/祝恵子
つくしの出ている野原には、仏の座やおおいぬのふぐりなどの花が咲いていて、つくしを摘んでいると、自然にそのような花に触れることもあり、つくし摘みの楽しさが伝わってきました。(井上治代)

★林間に大きく懸かる春夕焼け/丸山美知子
木と木の間にまるで虹のように夕焼けの空があり、その空は少しずつ変わっていき、いつまで見ていても飽きない景色だったと思います。(井上治代)

★春風の集いしところ頂は/多田有花
遮るもののない頂に辿り着くと、春の日差しが溢れ、春風が四方から吹いてきて、解放感に溢れ、この上ない安らぎを感じます。その心地よさを「春風の集いしところ」と表現されたのは妙だと思います。 (柳原美知子)

★花こぶし映し水面の揺れ始む/川名ますみ
花こぶしを静かに映していた水面に生じた小さな動きにはっとした作者の心の動きが伝わってきました。水面の白い花が光にまぶされてゆらめくさまに、あたたかい春風のそよぎを感じます。 (臼井愛代)

★春ショールたたんで膝にさくら色/川名ますみ
春も半ばになると、冬の防寒の意味が薄れ、アクセサリーとして、色の明るいショールを和服の肩掛けに用いますが、特にこの二三日は寒さが戻り、春寒しの感があります。膝に春らしい桜色のショールを置いて春のぬくもりを感じている作者。とても素敵な光景ですね。(小口泰與)

★川端に七色十色風車/井上治代
川沿いの心地よい風が子どもたちのもつ風車をまわしています。七色なのか十色なのか、心地よく回る風車が春の爽やかさを感じさせてくれます。 (高橋秀之)

【入選Ⅱ/12句】
★夕闇に辛夷の占むる一ところ/藤田洋子
夕闇に包まれ白く咲く花辛夷の一所だけが、灯を点すように明るい。春の夕暮れ時の情景がよく見えます。 (飯島治朗)

★さえずりや田を賑わしき耕運機/小口泰與
鳥のさえずりが響く中、田を耕している耕運機の音も響いている。春先の穏やかな光景です。 (高橋秀之)

★菜の花や榛名に向かい深呼吸/小口泰與
田園地帯が菜の花に彩られる季節になりました。その明るさ、長閑さに、春が来たという実感が湧き上がります。思わず、榛名に向って深呼吸したくなるようなうれしい実感です。(臼井愛代)

★百合樹の芽吹く広場や版画館/渋谷洋介
広場の百合の樹のさみどりの芽吹きが、街に、春らしい明るい印象を与えています。版画の素朴な躍動感とも相通じる生命感があります。(臼井愛代)

★青空へ大きく開くチューリップ/高橋秀之(信之添削)
いかにも伸びやかな春の花壇です。陽光を受け、空に向けて大きく耀く、チューリップならではのシンプルな姿が描かれています。(河野啓一)

★朝の空気ひときわ澄みし初音聴く/藤田裕子
何とも言えない爽やかな気分。今日一日よいことがありますよ。私も嬉しくなつて参りました。(宮本和美)

★春水を筆にたっぷり風と書く/藤田荘二
「筆にたっぷり」という豊かな響き、「風」という字のおおらかな姿、これらを力強く縄なって春の気をどっしりと届けてくれています。(小西 宏)

★教会の門戸開かれ初音かな/桑本栄太郎
オルガンの音、讃美歌の声、あるいは手を組んで跪く祈り人に春の風が優しく触れています。そんな新鮮な鶯の声です。(小西 宏)

★手を振って春泥の庭児が過る/矢野文彦
ニコニコとした笑顔や上下に弾む脚の動きが(文字に直接書かれていないのに)元気よく伝わってきます。(小西 宏)

★山桜先に満開兄の家/甲斐ひさこ
一足先に山桜の咲き満つ兄の家。満開の山桜の明るさに、作者のお兄様へ寄せる優しさや敬意があらわれているようです。 (藤田洋子)

★柳の芽風のある日は風に添う/村井紀久子
柳の芽の柔らかなしなやかな動きが見てとれるようです。風のある日の柳の芽の揺れをよく捉えていると思います。 (藤田洋子)

★春光や千手観音しなやかに/篠木睦
千手観音像が春の日差しを浴びているのでしょう。しなやかにという表現が春の日の暖かさを感じさせてくれます。 (高橋秀之)

●今日の秀句/高橋信之・高橋正子選

2009-03-25 10:49:58 | 今日の秀句
■3月22日
★花の冷え纏いてさらの句集来る/臼井愛代
花がほころびはじめた日に届いた句集。新刊書は、花冷えのする空気を纏い、受けとられた著者の喜びが静かに、ゆたかに伝わってきます。「さらの句集」が、心に残ります。 (小川和子)

■3月23日
★咲き初めし辛夷湖へと枝を張る/黒谷光子
ほころびかけた辛夷の花の枝が湖へと張りだしていて、その湖には青空の中の辛夷の姿も映り、静かで美しい春の光景です。 (井上治代)

■3月24日
★辛夷咲く川辺晴れ晴れ風渡る/堀佐夜子
春の川べりの明るい光景が浮かんできます。大きく息を吸い込みたくなるようなそんな風景です。 (多田有花)

■3月25日
★一頻り屋根打ちし音雹と知る/黒谷光子
頻りに屋根を打つ音がある。何だろうと思えば時ならぬ、雹がふっている。思いがけずの雹にとまどいも感じられている作者が目にうかびます。 (小川和子)

■3月26日
★風走る青麦畑を沖となし/柳原美知子(正子添削)
青麦畑を沖と見立てたところが素敵です。青麦畑の広さと波打つ様子に風の爽やかさが感じられます。(高橋秀之)

■3月27日
★花ミモザ零れし先は日本海/河野啓一
広い日本海に小さな花モミザが零れ落ち流れていく様子に、冬の間は荒れた日が多い日本海も春になって穏やかになっていると感じます。(高橋秀之)

■3月28日
★一山の花明りして暮れゆけり/藤田洋子
すっかり日が長くなり、愛媛では山桜が満開でしょうか。桜色に染まった山肌、ゆるゆると暮れていく春の夕暮れの景色を思い、気持ちがゆったりしてきます。(多田有花)

★ひかり得て闇より生れし春の雪/小西 宏
夜降り始めた春の雪であろう。闇から舞い落ちる雪は、身の丈あたりに来ると、白く光って、それが雪と分かる。それが「ひかり得て」。ゆっくりと降る春の雪である。(高橋正子)

■3月29日
★遠目にも芽立つポプラに風生まる/志賀泰次
北国もゆっくりと春が近づいているのですね。吹く風もだんだんと温かく、それだけでも嬉しくなります。(古田敬二)

■3月30日
★夕闇に辛夷の占むる一ところ/藤田洋子
夕闇に包まれ白く咲く花辛夷の一所だけが、灯を点すように明るい。春の夕暮れ時の情景がよく見えます。 (飯島治朗)


<※コメントは準備中!>の句は、花冠同人であれば、どなたでもコメントを書くことができますので、下の<コメント>にお書きください。よろしくお願いします。
なお、一週間内で一人3句のコメントに限りますので、それ以上はご遠慮ください。


●今日の佳句/高橋信之・高橋正子選

2009-03-25 10:47:56 | 今日の佳句
■3月22日
★さえずりや田を賑わしき耕運機/小口泰與
鳥のさえずりが響く中、田を耕している耕運機の音も響いている。春先の穏やかな光景です。 (高橋秀之)

★雨上がりバケツに春の陽つかまえる/高橋秀之
バケツに溜まった雨水に陽光が写り光っているのを、「つかまえる」と軽くウイットに富む見方で表現された好きなくです。 (河野啓一)

■3月23日
★ローカル線森抜け春田の広びろと/飯島治朗
瑞穂の国の春田の景が見える様で、思わず長閑な気分になりました。 (宮本和美)

★風吹けば大空に満つ花つぼみ/小川和子
春の風に大きく揺れ、青空いっぱいに桜の花の蕾がひしめき合っている。目を瞑り、この句を口ずさんでいると、豊かな自然のエネルギーを感じることができました。(井上治代)

★白魚(シラウオ)を掬いて透ける湖の水/河野啓一
白魚を掬うと、透き通った体から透き通った春の水が滴り、白魚も水も春の日にキラキラと輝いています。瑞々しい生命に触れた作者の喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)

★野花にも触れて揺らしてつくし摘む/祝恵子
つくしの出ている野原には、仏の座やおおいぬのふぐりなどの花が咲いていて、つくしを摘んでいると、自然にそのような花に触れることもあり、つくし摘みの楽しさが伝わってきました。(井上治代)

■3月24日
★春日和田に陽を返す耕運機/飯島治朗
穏やかな日和に恵まれた春の田畑の景。いよいよ耕運機も出番なのでしょう。陽をあびてまぶしいほどです。(小川和子)

★林間に大きく懸かる春夕焼け/丸山美知子
木と木の間にまるで虹のように夕焼けの空があり、その空は少しずつ変わっていき、いつまで見ていても飽きない景色だったと思います。 (井上治代)

★ほのぼのと捌くうぐいの桜いろ/黒谷光子
うぐいを上手に捌かれる作者。桜いろをしたうぐいに、ほのぼのとした春のおもむきを感じます。(小川和子)

■3月25日
★朝空を指せるかたちに白木蓮/臼井愛代
花冷えの朝の青空に開花を待つ純白の木蓮。1日の始まりの喜びと期待が清楚な白木蓮とともに大空にひろがってゆきます。作者の1日の充実を感じます。 (柳原美知子)

★下萌えに一歩の弾み佇めり/志賀泰次
北国にも春が訪れ、おそらく雪のかたまりも残る地面に下萌えの草をみつけられた作者。春に寄せる思いが、遺憾なく伝わる好きな句です。(小川和子)

★春風の集いしところ頂は/多田有花
遮るもののない頂に辿り着くと、春の日差しが溢れ、春風が四方から吹いてきて、解放感に溢れ、この上ない安らぎを感じます。その心地よさを「春風の集いしところ」と表現されたのは妙だと思います。 (柳原美知子)

■3月26日
★青天の高嶺まぶしき花辛夷/宮本和美
青空の下、花辛夷の白い花が咲き誇っています。遠くに望む高い峰もまぶしく聳えて、光あふれる大きな春の景色となっています。 (臼井愛代)

★百合樹の芽吹く広場や版画館/渋谷洋介
広場の百合の樹のさみどりの芽吹きが、街に、春らしい明るい印象を与えています。版画の素朴な躍動感とも相通じる生命感があります。 (臼井愛代)

★花こぶし映し水面の揺れ始む/川名ますみ
花こぶしを静かに映していた水面に生じた小さな動きにはっとした作者の心の動きが伝わってきました。水面の白い花が光にまぶされてゆらめくさまに、あたたかい春風のそよぎを感じます。 (臼井愛代)

■3月27日
★富士見える斜面にさみどりふきのとう/古田敬二
遠望の富士と斜面のふきのとう、風景の遠近と色彩の対比が鮮やかに目に映ります。さみどりのふきのとうのみずみずしさに、春の訪れをしかと感じます。 (藤田洋子)

★陽の躍る森に囀り続きけり/多田有花
森の明るい陽射しに、鳥たちの滑脱な囀りが聞こえてくるようです。春めいて生気づく森に入り、心も明るく快適な作者の心境を感じとれます。 (藤田洋子)

★春の陽や小さな旅を幾たびも/小西 宏
うららかな春の日和に誘われてつい出掛けたくなるこの頃。柔らかな春の陽射しの中での幾たびの小さな旅に、季節の快さや喜びを感じ、春なればこその季節の心理が表れていると思います。 (藤田洋子)

■3月28日
★川端に七色十色風車/井上治代
川沿いの心地よい風が子どもたちのもつ風車をまわしています。七色なのか十色なのか、心地よく回る風車が春の爽やかさを感じさせてくれます。 (高橋秀之)

★花冷えの京の寺へと路地曲がる/祝恵子
花の季節になっても、今年は寒く、花冷えの感が強いように思われます。そんな中を寺の参観。「路地曲がる」二詠者の思いの籠った、実感溢れる句と存じます。(宮本和美)

★春ショールたたんで膝にさくら色/川名ますみ
春も半ばになると、冬の防寒の意味が薄れ、アクセサリーとして、色の明るいショールを和服の肩掛けに用いますが、特にこの二三日は寒さが戻り、春寒しの感があります。膝に春らしい桜色のショールを置いて春のぬくもりを感じている作者。とても素敵な光景ですね。(小口泰與)

■3月29日
★青空へ大きく開くチューリップ/高橋秀之(信之添削)
いかにも伸びやかな春の花壇です。陽光を受け、空に向けて大きく耀く、チューリップならではのシンプルな姿が描かれています。(河野啓一)

★囀りの低く飛び交い葦の沼/丸山美知子
水辺に賑わう鳥の声。常ならば、頭上より降り注ぐ囀が、沼の畔では「低く飛び交」って聞こえます。まだ角状の葦へ群がる鳥達の呼びかけに、春の歓びも湧き上がることでしょう。 (川名ますみ)

★朝の空気ひときわ澄みし初音聴く/藤田裕子
何とも言えない爽やかな気分。今日一日よいことがありますよ。私も嬉しくなつて参りました。(宮本和美)

■3月30日
★すぐそばに鶯鳴けり美術館/古田敬二
鶯の澄んだ声がすぐそばに聞こえ、光降る森の芽吹きのみどりに包まれた美術館で至福の時を過ごされた感動が伝わってきます。 (柳原美知子)

★さらり着たセーターさみどり花の冷え/甲斐ひさこ
桜の咲く花時は陽気が変わりやすく、ふいに薄ら寒さが訪れる。若草色のセーターをさらりと着て、寒さにも負けず春を謳歌している作者。さらりきてとさみどりの音感が良く素敵な句ですね。(小口泰與)

★春寒し遠くの山の蒼さかな/丸山美知子
やわらかに春めきつつあった遠くの山が、少し季節が逆戻りしたかのような寒さに蒼く張り詰めたように見えています。春寒の、凛とした空気感が伝わってきます。(臼井愛代)

■3月31日
★菜の花や榛名に向かい深呼吸/小口泰與
田園地帯が菜の花に彩られる季節になりました。その明るさ、長閑さに、春が来たという実感が湧き上がります。思わず、榛名に向って深呼吸したくなるようなうれしい実感です。(臼井愛代)


<※コメントは準備中!>の句は、花冠同人であれば、どなたでもコメントを書くことができますので、下の<コメント>にお書きください。よろしくお願いします。
なお、一週間内で一人3句のコメントに限りますので、それ以上はご遠慮ください。


●3月投句選句箱④

2009-03-21 22:30:24 | 投句選句箱
※①3月22日(日)~31日(火)の投句は、こちらの<コメント欄>にお書きください。
※②投句は、1日3句以内です。好きな句(コメント付きの選句)は、1日1句です。投句された方は、必ず<好きな句>を選んでください。
※③3月31(火)午後6時から午後12時の間に今週の入賞発表があります。
※④31日(火)の午後6時から午後12時までの間は、入賞発表の作業中ですので、投句を禁止いたします。
※⑤花冠同人以外の方のご投稿は、ご遠慮ください。

▼投句・好きな句(コメント付きの選句)は、下の<コメント>にお書き込みください。

●入賞発表/3月15日(日)~3月21日(土)

2009-03-21 13:15:39 | 入賞発表
■3月15日(日)~3月21日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★希望なお地にありいぬふぐり咲けば/多田有花
一見、理屈が勝っているように見えるがそうではない。昨今の世情不安の世の中、どちらを向いても希望がないように見える。いぬふぐりの青い花が地上にきらきらと咲けば、やはり「地に」、言い換えれば、地球上に希望があると思えた。自然の小さな花によって希望が湧いたのだ。(高橋正子)

【特選/5句】
★涅槃西風空に来るもの去りしもの/藤田洋子
涅槃会の頃に吹く風に西方浄土からの風と古えの詠み人は人の心へ特別の思いを抱かせた。空に来るもの去り行くものと読者にとっても時の流れ、季節の移ろいの中に心の奥に思い起こさせてくれるものがあります。作者の思いは広くて深い句になった、好きな句です。 (志賀泰次)

★彼岸会の合図の鐘は星空へ/黒谷光子
彼岸会は、秋と春の彼岸の間に行われる寺の法会。俳句で彼岸会といえば、春の彼岸会を指す。この句では、お寺の鐘を合図に始まるようだ。星空へ向けて、村のみんなの家に届くようの鳴らす。昔ながら、彼岸会に集まる人たちがいて、寺がある。(高橋正子)

★滔々と坂東太郎下萌ゆる/小口泰與
奥深い雪の山々の上流からの雪解水。滔々と流れる蒼い川。下萌の草の青。景が実によく見えます。季語がよく効いています。 (飯島治朗)

★翔ぶかたちゆるり整え鳥雲に/志賀泰次
北へ帰る渡り鳥が、方向を見定めるためか、仲間が揃うのを待つのか、隊列を整えるまで旋回を繰り返し、その後逡巡なく真っ直ぐ飛び去る様は見飽きることはありません。この間の情景を「ゆるり」と表現されたのだとおもいます。春の空の明るさと、おおらかな気分が込められているとおもいました。(藤田荘二)

★一畝を外れ菜花の風に揺れ/甲斐ひさこ
畝を外れて、菜花が咲いている。種がこぼれて咲いたのだろうが、畝を外れているだけに、菜花の姿がよく見える。風を受けて揺れて、いかにも春を感じさせてくれる。(高橋正子)

【入選Ⅰ/10句】
★対岸の斑れの山が近くなる/志賀泰次
網走にもようやく遅い春がやってきました。雪解けが進む対岸の山、北国の春の訪れに寄せる喜びが「近くなる」からしみじみと感じられます。(多田有花)

★上州の辛夷咲く日の風素直/小口泰與
上州といえば空っ風が思い浮かびますが、この日の風は違ったのでしょう。辛夷咲く日がよく効いて春の風のやさしさが伝わってきます。(高橋秀之)

★花菜洗う小さき花の黄水に浮き/祝恵子
小さくても水に浮く花菜の黄色が鮮やかで、いそいそと食事の準備をしている作者の様子が目に浮かびました。花菜はおひたしになるのでしょうか。 (井上治代)

★注ぎ入る水音傍に蝌蚪の紐/臼井愛代
やわらかに注ぎ入る水の音に水底を覗き込めば、ぬるりとした蛙の卵。音と、水のゆらめきとに、春の到来をしみじみと感じさせてくれます。 (小西 宏)

★水草生う命の力湧き出でて/河野啓一
水温む季節なってきました。さまざまな水草が、まさに「命の力」として生え始めています。春の生命の張り、歓喜を感じるいきいきとした句です。 (多田有花)

★小さくともタンポポの黄は遠目にも/宮本和美
タンポポがあちらにもこちらにも咲き、明るく辺りを照らしてくれています。黄色は目立つ色で遠くからみても、はっきりその姿が分かります。小さな命の輝きのすばらしさを感じました。 (井上治代)

★木蓮の向こうに広がる空青し/高橋秀之
空の色に映える木蓮も、広がる青空も、ともにくっきりと際立つ美しさです。花も空も明るくみずみずしい風景の広がりに、心も晴ればれとします。 (藤田洋子)

★春の潮満ち来るものの静けさよ/志賀泰次
「満ち来るもの」の充実を作者が「静けさよ」と受けたのは、作者自身の心の「「静けさ」でもあって、そこが深い。(高橋信之)

★花辛夷空晴晴と雑木林/渋谷洋介
「晴晴と」した空の下の「雑木林」がいい。雑木林の中の「花辛夷」がいい。街中の「花辛夷」とは美しさが違うのだ。(高橋信之)

★山風の椿を吹きて露天湯に/柳原美知子
俗なところから開放され、いい風景だ。作者が「露天湯に」浸かっているかは、どちらでもいい。(高橋信之)

【入選Ⅱ/15句】
★山の春氷柱の滴のきらめきに/藤田荘二
柔らかく降り注ぐ日差しが、がっちりとした山の氷柱も溶かす頃となりました。その滴のきらめきや、滴の落ちる小さな音に、「山の春」の実感があります。(臼井愛代)

★春日和枝に幾つも子の上着/飯島治朗
春の日差しの暖かさに、子供たちが思わず脱いだ上着が、木の枝に無造作に掛けられているのでしょう。戸外で元気に遊ぶ子供たちの明るさや素朴さが感じられて微笑ましい御句と思います。(臼井愛代)

★空に揺る木蓮真白影揺らし/祝恵子
木蓮は中国原産の落葉高木で、玉蘭の別名もあるように僅かに陰影を帯び、白く風に揺れる豊かさは壮観です。偶然、箕面の山近くで綺麗な満開の木をみかけたばかりで、まさにそのとおりかの風情が印象的でした。(河野啓一)

★五輪咲き道後の桜大写し/藤田裕子
先日、全国にさきがけて開花した道後の桜の映像が流れました。クローズアップされた初々しい五輪の花びらが、ありありと目に映り、実に新鮮な明るい思いを抱かせてくれます。 (藤田洋子)

★離れつつ寄りつつ二人春田ゆく/小西 宏
二人の人が、「離れつつ寄りつつ」行く様子がのどかです。その場所が田んぼであるのですから、明るく平和な、まことに春らしい情景となっています。(臼井愛代)

★薔薇の芽のチョコレート色して優し/井上治代
薔薇の芽の、まるでチョコレートの色のようだと思えるほどの深く濃く優しい赤。その芽には、薔薇が華やかに開花する時までの豊かな時間が詰まっているかのようです。(臼井愛代)

★マフラーの色淡くして美術館/村井紀久子
まだマフラーを巻きたくなる寒さの残るなか、それでも兆し始めた春の気配に、淡い色調のものが選ばれたのでしょう。マフラーを淡い色にして美術館へ出かけた楽しい一日に、春の明るさ、軽さが感じられます。(臼井愛代)

★一瞬の影置き初蝶遠ざかる/小川和子
一瞬の影を見せて遠ざかってしまった初蝶に心を残されている作者の心境が伝わってきます。春の到来を告げるかのような、初蝶とのうれしい出会いです。(臼井愛代)

★春半ばオリオン大きく西へ行く/古田けいじ
冬の代表的な星座であるオリオン座も西の空へ移動しました。季節の移ろいを星座で感じるところに楽しさがあります。(高橋秀之)

★茶話弾み叔母の手づくり桜餅/桑本栄太郎
桜餅をほおばりながら話が弾むひとときが春の暖かさ、のどかさを伝えてくれます。それがご親戚の手作りで、なおさら楽しいひとときだったのでしょう。(高橋秀之)

★水牛車手綱捌きの長閑なり/國武光雄
手綱捌きが長閑にみえる水牛車。実際はそんなことはないのでしょうが、それが長閑な感じるところに、春の楽しさがあります。(高橋秀之)

★春雲と湖面大きく天守閣/前川音次
静かな湖面の水色の空に白い春の雲がふんわりと浮き、天守閣がくっきりと映って漂う水に光っています。のどかで光溢れる春の到来です。 (柳原美知子)

★はこべらの萌えて懐かし産土の家/堀佐夜子
はこべらの柔らかいみどりが地面を覆い、星のような白い花がポツポツと春光に輝いている産土の家。佇んでいると過ぎ去った歳月を忘れてしまうかのようです。 (柳原美知子)

★全身の力を抜きて草青む/篠木 睦
春の陽光に、芽を出した草がいつの間にかすくすくと伸び、青々と輝きを放っている。そんな飾り気のない草を見ていると、自然に素に戻って、あるがままの姿でいられるような気がします。 (柳原美知子)

★小糠雨ふっくら包むふきのとう/丸山美知子
細かな雨に包まれるふきのとうが、ことさら柔らかくみずみずしく感じます。萌え出る春の息吹そのもののふきのとうへの、作者の優しい心情がうかがえます。(藤田洋子)

※コメントの無い句にコメントをお願いします。書き込みの場所は、下の<コメント>です。よろしくお願いします。
※入賞発表の作業中ですので、コメント以外は書き込みを禁止いたします。お礼などは、午後12時過ぎてからお書き込みください。

●今日の秀句/高橋正子選

2009-03-19 10:10:34 | 今日の秀句
■3月15日
★対岸の斑れの山が近くなる/志賀泰次
網走にもようやく遅い春がやってきました。雪解けが進む対岸の山、北国の春の訪れに寄せる喜びが「近くなる」からしみじみと感じられます。(多田有花)

■3月16日
★上州の辛夷咲く日の風素直/小口泰與
上州といえば空っ風が思い浮かびますが、この日の風は違ったのでしょう。辛夷咲く日がよく効いて春の風のやさしさが伝わってきます。(高橋秀之)

■3月17日
※該当作なし

■3月18日
★五輪咲き道後の桜大写し/藤田裕子
先日、全国にさきがけて開花した道後の桜の映像が流れました。クローズアップされた初々しい五輪の花びらが、ありありと目に映り、実に新鮮な明るい思いを抱かせてくれます。 (藤田洋子)

■3月19日
★翔ぶかたちゆるり整え鳥雲に/志賀泰次
北へ帰る渡り鳥が、方向を見定めるためか、仲間が揃うのを待つのか、隊列を整えるまで旋回を繰り返し、その後逡巡なく真っ直ぐ飛び去る様は見飽きることはありません。この間の情景を「ゆるり」と表現されたのだとおもいます。春の空の明るさと、おおらかな気分が込められているとおもいました。(藤田荘二)

★空に揺る木蓮真白影揺らし/祝恵子
木蓮は中国原産の落葉高木で、玉蘭の別名もあるように僅かに陰影を帯び、白く風に揺れる豊かさは壮観です。偶然、箕面の山近くで綺麗な満開の木をみかけたばかりで、まさにそのとおりかの風情が印象的でした。(河野啓一)

■3月20日
★涅槃西風空に来るもの去りしもの/藤田洋子
涅槃会の頃に吹く風に西方浄土からの風と古えの詠み人は人の心へ特別の思いを抱かせた。空に来るもの去り行くものと読者にとっても時の流れ、季節の移ろいの中に心の奥に思い起こさせてくれるものがあります。作者の思いは広くて深い句になった、好きな句です。 (志賀泰次)

★彼岸会の合図の鐘は星空へ/黒谷光子
彼岸会は、秋または春の彼岸の間に行われる寺の法会。俳句で彼岸会といえば、春の彼岸会を指す。この句では、お寺の鐘を合図に始まるようだ。星空へ向けて、村のみんなの家に届くようの鳴らす。昔ながら、彼岸会に集まる人たちがいて、寺がある。(高橋正子)

■3月21日
※該当作なし

●今日の佳句/高橋正子選

2009-03-19 10:08:34 | 今日の佳句
■3月15日
★水草生ふ命の力湧き出でて/河野啓一
水温む季節なってきました。さまざまな水草が、まさに「命の力」として生え始めています。春の生命の張り、歓喜を感じるいきいきとした句です。 (多田有花)

★注ぎ入る水音傍に蝌蚪の紐/臼井愛代
やわらかに注ぎ入る水の音に水底を覗き込めば、ぬるりとした蛙の卵。音と、水のゆらめきとに、春の到来をしみじみと感じさせてくれます。 (小西 宏)

★木蓮の向こうに広がる空青し/高橋秀之
空の色に映える木蓮も、広がる青空も、ともにくっきりと際立つ美しさです。花も空も明るくみずみずしい風景の広がりに、心も晴ればれとします。 (藤田洋子)

■3月16日
★小さくともタンポポの黄は遠目にも/宮本和美
タンポポがあちらにもこちらにも咲き、明るく辺りを照らしてくれています。黄色は目立つ色で遠くからみても、はっきりその姿が分かります。小さな命の輝きのすばらしさを感じました。 (井上治代)

★離れつつ寄りつつ二人春田ゆく/小西 宏
二人の人が、「離れつつ寄りつつ」行く様子がのどかです。その場所が田んぼであるのですから、明るく平和な、まことに春らしい情景となっています。(臼井愛代)

★過ぎる影追えば初蝶戻り来る/古田けいじ
初蝶はふつうあまり大きなものではない。その動きは細かく、せわしないものである。初めて目にした蝶をそっと追ってみれば、もう向きを変えてこちらへ戻ってくる。春の到来をいとおしげに眺めている目が優しく感じられます。 (小西 宏)

■3月17日
★播磨灘播州平野とつちぐもり/多田有花(正子添削)
作者のいる地域に大量の黄砂が降り注いだことが、播磨灘から播州平野の表現で広い範囲をうまくとらえられました。 (高橋秀之)

★揚げ雲雀己の声に乗りにけり/宮本和美
高く飛び交う雲雀を、まるで自らのさえずりに乗って羽ばたいているようだと詠われる。まことに納得のいく表現であり、またその新鮮なとらえ方に情景が眼前のものとなります。 (小西 宏)

★山の春氷柱の滴のきらめきに/藤田荘二
柔らかく降り注ぐ日差しが、がっちりとした山の氷柱も溶かす頃となりました。その滴のきらめきや、滴の落ちる小さな音に、「山の春」の実感があります。(臼井愛代)

★春日和枝に幾つも子の上着/飯島治朗
春の日差しの暖かさに、子供たちが思わず脱いだ上着が、木の枝に無造作に掛けられているのでしょう。戸外で元気に遊ぶ子供たちの明るさや素朴さが感じられて微笑ましい御句と思います。(臼井愛代)

■3月18日
★希望なお地にありいぬふぐり咲けば/多田有花
空色の小花ながら、地に這うように拡がり踏まれても咲く逞しさのいぬふぐりです。その明るいいとおしさに、希望を見出す作者の、明るく前向きな意志をもうかがえます。 (藤田洋子)

★花菜洗う小さき花の黄水に浮き/祝恵子
小さくても水に浮く花菜の黄色が鮮やかで、いそいそと食事の準備をしている作者の様子が目に浮かびました。花菜はおひたしになるのでしょうか。 (井上治代)

■3月19日
★ミモザ咲く下を帰りしランドセル/多田有花
ミモザの花の黄は春の明るさを引き立てます。その下を元気よく不規則に、あるいは勢いよく通り過ぎるランドセルの列。表現はされていませんが子どもたちの明るい顔、しぐさが目に浮かびます。 (藤田荘二)

★登園時桜のつぼみ数える子/高橋秀之
桜の開花も間近か。蕾を一つ二つと数えている園児の姿に目を細め、眺めて居られる詠者が目に浮かびます。微笑ましい情景で、好きな句です。 (宮本和美)

★きらめける風青麦を翻す/黒谷光子
この時期の麦の畑にわたる風、葉のかがやきが風になびいて鮮やかに波のようにかわる様子を見ることができます。風がきらめくのか、葉がきらめくのか、春が満ち溢れている感じがするすてきな句とおもいます。 (藤田荘二)

■3月20日
★ひげそりの跡青々と卒業す/宮本和美
精悍さと初々しさを備え、逞しく成長した青年の旅立ちへの祝詞。愛と希望に溢れています。(柳原美知子)

★滔々と坂東太郎下萌ゆる/小口泰與
奥深い雪の山々の上流からの雪解水。滔々と流れる蒼い川。下萌の草の青。景が実によく見えます。季語がよく効いています。 (飯島治朗)

■3月21日
★春の潮満ち来るものの静けさよ/志賀泰次
「満ち来るもの」の充実を作者が「静けさよ」と受けたのは、作者自身の心の「「静けさ」でもあって、そこが深い。(高橋信之)

★花辛夷空晴晴と雑木林/渋谷洋介
「晴晴と」した空の下の「雑木林」がいい。雑木林の中の「花辛夷」がいい。街中の「花辛夷」とは美しさが違うのだ。(高橋信之)

●3月投句選句箱③

2009-03-15 05:50:09 | 投句選句箱
※①3月15日(日)~21日(土)の投句は、こちらの<コメント欄>にお書きください。
※②投句は、1日3句以内です。好きな句(コメント付きの選句)は、1日1句です。投句された方は、必ず<好きな句>を選んでください。
※③3月21(土)午後6時から午後12時の間に今週の入賞発表があります。
※④土曜日の午後6時から午後12時までの間は、入賞発表の作業中ですので、投句を禁止いたします。
※⑤花冠同人以外の方のご投稿は、ご遠慮ください。

▼投句・好きな句(コメント付きの選句)は、下の<コメント>にお書き込みください。

●入賞発表/3月8日(日)~3月14日(土)

2009-03-14 07:11:23 | 入賞発表
■3月8日(日)~3月14日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★きらめきの水面一巡鳥帰る/篠木 睦
冬を過ごした水面を見納めるかのように、帰る鳥は、一巡する。「きらめきの水面」の印象が、読者にとっても、帰る鳥にとっても鮮やかである。(高橋正子)

【特選/5句】
★花あしび谷吹き下る風のなか/臼井愛代
小さい鈴がいっぱい下がっているような馬酔木の花、谷を下りてくる風に揺れて、かわいい音を奏でているようです。(黒谷光子)

★草萌を幾度と踏み行き幼き子/上島祥子
萌え出でる草々の柔らかくみずみずしい、春の生気を生き生きと感じられる光景です。幼子への温かな眼差しとともに、「幾度と踏み行く」幼子の姿に、逞しい成長を願う思いも込められているようです。(藤田洋子)

★梅咲けるそこに明るく谷戸の道/藤田荘二
谷沿いに咲いた紅白の梅がほのかに香り、春の光が水辺に射して、きらめいている。梅が咲くと谷戸に一気に春が来て、道も心も明るくしてくれるようです。 (柳原美知子)

★傾きて摘草の籠草の上/宮本和美
傾斜した土手沿いでしょうか。おかれたままの、摘草を入れる籠が心に残ります。草あおむ春の訪れです。 (小川和子)

★それぞれの雑木に囀降らせつつ/柳原美知子
それぞれの雑木から、春の鳴禽類のいろいろな囀が聞こえてきます。明るい囀の降る自然の中で、季節の喜びに浸るひとときを感じます。(藤田洋子)

【入選Ⅰ/15句】
★凍滝に時うごきだす水の音/志賀泰次
凍っていた滝も、時計の針が動きだすかのように溶け出して水音がするようになった。北国の春はすぐそこまで来ている。景がよく見えます。(飯島治朗)

★地の息吹き集めて浅間木の芽かな/小口泰與
春の息吹をいっしんに集めて芽吹く木々。「浅間」の地名が一句を生かしているように思います。(小川和子)

★フラミンゴ彩添え春の動物園/河野啓一
フラミンゴの鮮やかな華やぎを添え、心躍るような明るさの満ちた春の動物園です。にわかに春めく気配に、動物たちの生き生きとした表情も見てとれるようです。(藤田洋子)

★マラソンや丹波篠山木の芽風/堀佐夜子
山深い丹波篠山の木の芽風の吹く中、爽やかな空気を吸って走る、丹波篠山の市民マラソンの長閑な光景がリズミカルに詠われて、素敵な句です。(桑本栄太郎)

★春月にきれいと洩れて消ゆる声/川名ますみ
思わず「きれい!」と洩れる春月ですね。私も先日きれいな朧月を見てました。(丸山美知子)

★野の香り溢る草餅届けられ/黒谷光子
持つて来られた手作り草餅。その好意に感謝しながら、食されている詠者の姿を添想像致しました。ご近所付き合いの深さを感じさせる微笑ましい句と存じます。(宮本和美)

★菜の花や一反畑の黄のさかり/桑本栄太郎
「黄のさかり」が菜の花の鮮やかな広がりを目の前に見せてくれるようです。黄色一色ですね。(多田有花)

★谷戸山の緋寒桜に迎えられ/渋谷洋介
山道を登っていくと、緋寒桜が美しく咲いていて、ほっと一息ついて、静観していると、まるで、作者がくるのを心待ちにしていたような桜の姿に「迎えられ」という下五の言葉が浮かんできたのではないでしょうか。 (井上治代)

★生きていく限りは別離鳥雲に/多田有花
何度も読み返すうちに詩の情感がよく伝わり好きな句です。 (篠木 睦)

★せせらぎの音に傾ぎて野ばらの芽/甲斐ひさこ
心地よいせせらぎの音に耳をすますかのように川岸に枝垂れている野ばらの芽。春の野の光に包まれて生命が輝いています。 (柳原美知子)

★水を得てげんげ卓上の花となる/小川和子
野に摘むげんげが水を上げて、生き生きと可憐に開く嬉しさ。げんげのつつましやかな春の彩りの卓上に、作者の優しい心遣いも感じられます。(藤田洋子)

★池の面に青き空あり土筆摘む/宮本和美
一読して春の長閑さを感じました。さらに土筆を摘まれている作者が、春の恵みに感謝するとともに春を謳歌している様子が眼に浮かんできます。 (飯島 治朗)

★角島や灯台までを花大根/宮本和美
大根の一つ一つの花は素朴ですが、一面の花大根になれば、集団の美しさに感動します。角島というところに行ってみたいと思いました。(井上治代)

★畑芹に声の弾みて青き空/小口泰與
みずみずしい芹の育つ畑、畑仕事の声も明るく青空へと響き、伸びやかな春田の光景に心も晴ればれとしてきます。 (藤田洋子)

★花馬酔木花も樹も揺れ風の中/河野啓一
風に揺れる花は、風情のあるものですね。可憐な花馬酔木だとなおさらだと思います。また、「花も樹も揺れ」とたたみかけて詠まれたことで、詩情が豊かに広がっていき、読む人にとって臨場感のある句になったと思います。 (井上治代)

【入選Ⅱ/12句】
★梅見かな香に包まれて上る坂/飯島治朗
「上る坂」がいい。梅の香に包まれ、「上る坂」の少しの緊張に、ゆったりとした時間が流れる。偶然であろうが、いい時を与えられた。(高橋信之)

★パンジーを植える小さなスコップで/高橋秀之
「パンジー」に春の喜びがある。「小さなスコップ」に子ども達の嬉しい声が聞こえてくるようだ。(高橋信之)

★春月や狭庭の試歩となりにけり/前川音次
わが家の庭の「春月」である。病癒えて、日常の風景が嬉しい。日常の生活が嬉しい。(高橋信之)

★供花挿して山の初音を聞きとめし/藤田洋子
山のお寺へお墓参りでしょうか。お花を供えていらっしゃるときに鶯が啼きました。初音の新鮮な音に山の空気が一瞬ひきしまったようです。 (多田有花)

★雲間より春月すっきり光り出づ/藤田裕子
すこし気温が下がり、今夜の月の姿はすっきりとしています。先ほどまで雲に
覆われていましたが、明るい月が姿を見せました。 (多田有花)

★二人してキリンを眺む春の雲/小西 宏
奥様とお二人並んで動物園のキリンを眺められているのでしょうか。
なんどもほのぼのとした雰囲気です。キリンの優しい目、その上の春の空和みます。 (多田有花)

★生まれきて初めに春の陽を握る/川名ますみ
春生まれのみどり児が産声をあげながら最初に握るものは、生命力と希望に満ちた、明るい春の陽なのでしょう。生まれてきたひとつの命へのきよらかな讃歌と存じます。(臼井愛代)

★豌豆の花芽を待ちぬプランター/祝恵子
プランターでたいせつに育て始めた豌豆に、花芽を見つけたときのうれしさ。ささやかではありますが、このような瞬間も、普段の生活の中で出会う幸せですね。(臼井愛代)

★遠足の弁当なつかし母の味/井上治代
母のお弁当に定番で入っていたものの味は忘れられません。遠足という心浮き立つ思い出にまつわる素朴で優しい「母の味」を詠まれて、しみじみとした御句と思います。(臼井愛代)

★わかさぎの細波のうえ雲流る/丸山美知子
ワカサギ釣りの釣り糸の動きで波が立っているのでしょう。その上をゆったりと雲が流れる風景に、春の穏やかさがあります。(高橋秀之)

★春眠やベートーベンのソナタ「春」/古田敬二
春眠暁を覚えずといいますが、クラッシック音楽が心地よい眠りをさらに気持ちよくさせてくれているのでしょう。(高橋秀之)

★空青く次々さくや花えんどう/小河原宏子
大空の青さが春の深まりを、次々と咲くに春の喜びを感じます。春がきて嬉しいという心情がよく伝わってきます。(高橋秀之)

●今日の秀句/高橋正子選

2009-03-09 08:38:11 | 今日の秀句
■3月8日
★花あしび谷吹き下る風のなか/臼井愛代
小さい鈴がいっぱい下がっているような馬酔木の花、谷を下りてくる風に揺れて、かわいい音を奏でているようです。(黒谷光子)

■3月9日
★きらめきの水面一巡鳥帰る/篠木 睦
北からやってきていた冬の渡り鳥たちが帰る季節になりました。「きらめき」という言葉に日ごと明るさを増していく日差しの様子が感じられ、遠くへ旅する鳥たちの無事を願っていらっしゃるお気持ちも感じられます。(多田有花)

■3月10日
※該当作なし

■3月11日
★草萌を幾度と踏み行き幼き子/上島祥子(正子添削)
萌え出でる草々の柔らかくみずみずしい、春の生気を生き生きと感じられる光景です。幼子への温かな眼差しとともに、「幾度と踏み行く」幼子の姿に、逞しい成長を願う思いも込められているようです。(藤田洋子)

■3月12日
★池の面に青き空あり土筆摘む/宮本和美
一読して春の長閑さを感じました。さらに土筆を摘まれている作者が、春の恵みに感謝するとともに春を謳歌している様子が眼に浮かんできます。 (飯島 治朗)

■3月13日
★角島や灯台までを花大根/宮本和美
大根の一つ一つの花は素朴ですが、一面の花大根になれば、集団の美しさに感動します。角島というところに行ってみたいと思いました。 (井上治代)

■3月14日
★生まれきて初めに春の陽を握る/川名ますみ
※コメントは準備中!


<※コメントは準備中!>の句は、花冠同人であれば、どなたでもコメントを書くことができますので、下の<コメント>にお書きください。よろしくお願いします。
なお、一週間内で一人3句のコメントに限りますので、それ以上はご遠慮ください。


●今日の佳句/高橋正子選

2009-03-09 08:35:34 | 今日の佳句
■3月8日
★凍滝に時うごきだす水の音/志賀泰次
凍っていた滝も、時計の針が動きだすかのように溶け出して水音がするようになった。北国の春はすぐそこまで来ている。景がよく見えます。(飯島治朗)

★地の息吹き集めて浅間木の芽かな/小口泰與
春の息吹をいっしんに集めて芽吹く木々。「浅間」の地名が一句を生かしているように思います。(小川和子)

★フラミンゴ彩添え春の動物園/河野啓一
フラミンゴの鮮やかな華やぎを添え、心躍るような明るさの満ちた春の動物園です。にわかに春めく気配に、動物たちの生き生きとした表情も見てとれるようです。(藤田洋子)

■3月9日
★マラソンや丹波篠山木の芽風/堀佐夜子
山深い丹波篠山の木の芽風の吹く中、爽やかな空気を吸って走る、丹波篠山の市民マラソンの長閑な光景がリズミカルに詠われて、素敵な句です。(桑本栄太郎)

★春月にきれいと洩れて消ゆる声/川名ますみ
思わず「きれい!」と洩れる春月ですね。私も先日きれいな朧月を見てました。(丸山美知子)

★野の香り溢る草餅届けられ/黒谷光子
持つて来られた手作り草餅。その好意に感謝しながら、食されている詠者の姿を添想像致しました。ご近所付き合いの深さを感じさせる微笑ましい句と存じます。(宮本和美)

■3月10日
★梅咲けるそこに明るく谷戸の道/藤田荘二
谷沿いに咲いた紅白の梅がほのかに香り、春の光が水辺に射して、きらめいている。梅が咲くと谷戸に一気に春が来て、道も心も明るくしてくれるようです。 (柳原美知子)

★傾きて摘草の籠草の上/宮本和美
傾斜した土手沿いでしょうか。おかれたままの、摘草を入れる籠が心に残ります。草あおむ春の訪れです。 (小川和子)

★菜の花や一反畑の黄のさかり/桑本栄太郎
「黄のさかり」が菜の花の鮮やかな広がりを目の前に見せてくれるようです。黄色一色ですね。(多田有花)

■3月11日
★それぞれの雑木に囀降らせつつ/柳原美知子
それぞれの雑木から、春の鳴禽類のいろいろな囀が聞こえてきます。明るい囀の降る自然の中で、季節の喜びに浸るひとときを感じます。(藤田洋子)

★花馬酔木花も樹も揺れ風の中/河野啓一
風に揺れる花は、風情のあるものですね。可憐な花馬酔木だとなおさらだと思います。また、「花も樹も揺れ」とたたみかけて詠まれたことで、詩情が豊かに広がっていき、読む人にとって臨場感のある句になったと思います。 (井上治代)

★SLの入替を見て山笑う/篠木 睦
早春にSLをのんびりと眺めて居る己に気がついて、苦笑いされて居られる詠者の姿を想像致しました。季語とSLの入れ替えの取り合せが、面白く愉快な句と存じます。 (宮本和美)

■3月12日
★谷戸山の緋寒桜に迎えられ/渋谷洋介
山道を登っていくと、緋寒桜が美しく咲いていて、ほっと一息ついて、静観していると、まるで、作者がくるのを心待ちにしていたような桜の姿に「迎えられ」という下五の言葉が浮かんできたのではないでしょうか。 (井上治代)

★生きていく限りは別離鳥雲に/多田有花
何度も読み返すうちに詩の情感がよく伝わり好きな句です。 (篠木 睦)

★茎立や吾に青雲ありし日よ/桑本栄太郎
野の茎が伸び始め、空の青い雲を眺めて、若かりし日を、思い懐かしんでいる作者が、思われます。と同時にこれからも、ご活躍されますようにお祈りいたしております。 (小河原宏子)

■3月13日
★水を得てげんげ卓上の花となる/小川和子
野に摘むげんげが水を上げて、生き生きと可憐に開く嬉しさ。げんげのつつましやかな春の彩りの卓上に、作者の優しい心遣いも感じられます。(藤田洋子)

★畑芹に声の弾みて青き空/小口泰與
みずみずしい芹の育つ畑、畑仕事の声も明るく青空へと響き、伸びやかな春田の光景に心も晴ればれとしてきます。 (藤田洋子)

★せせらぎの音に傾ぎて野ばらの芽/甲斐ひさこ
心地よいせせらぎの音に耳をすますかのように川岸に枝垂れている野ばらの芽。春の野の光に包まれて生命が輝いています。 (柳原美知子)

■3月14日
★梅の花群れてむこうの空の青/小河原宏子(信之添削)
※コメントは準備中!

★浅間はや雪消斑や利根早し/小口泰與
※コメントは準備中!


<※コメントは準備中!>の句は、花冠同人であれば、どなたでもコメントを書くことができますので、下の<コメント>にお書きください。よろしくお願いします。
なお、一週間内で一人3句のコメントに限りますので、それ以上はご遠慮ください。


●3月投句選句箱②

2009-03-05 06:09:58 | 投句選句箱
※②3月8日(日)~14日(土)の投句は、こちらの<コメント欄>にお書きください。
※②投句は、1日3句以内です。好きな句(コメント付きの選句)は、1日1句です。投句された方は、必ず<好きな句>を選んでください。
※③3月14日(土)午後6時から午後12時の間に今週の入賞発表があります。
※④土曜日の午後6時から午後12時までの間は、入賞発表の作業中ですので、投句を禁止いたします。
※⑤花冠同人以外の方のご投稿は、ご遠慮ください。

▼投句・好きな句(コメント付きの選句)は、下の<コメント>にお書き込みください。

●入賞発表/3月1日(日)~3月7日(土)

2009-03-05 06:09:36 | 入賞発表
■3月1日(日)~3月7日(土)
□高橋正子選

【最優秀/2句】
★海の青しずかに沈め流氷野/志賀泰次
「流氷が視界いっぱいに広がっている状態を流氷野という。氷量が10/10の密接流氷の場合でも、風や海流によって氷野は絶えず移動し、変形する。」と、「流氷野(りゅうひょうや)」は解説されている。「しずかに沈め」に流氷の動きが感じられる。(高橋正子)

★朝桜ふれたき空はうすき青/川名ますみ
「朝桜」と、「うすき青」の二つが繊細な感覚で捉えられている。朝桜によって、空のうすい青は、実際触れたい、そして触れられそうなものとなった。そこに詩がある。(高橋正子)

【特選/6句】
★どこまでも菜の花道がまっすぐに/高橋秀之
のどかで春らしい明るい句です。「どこまでも」に幸福感を感じます。そういう道をずっと歩いていきたいな、という気分になります。(多田有花)

★菜の花や日ごと色増す筑後川/國武光雄
見渡す限り菜の花畑が打ち続いて、黄色の花が咲き匂い、野山は雪消になって、九州第一の川、筑紫次郎も雪消水を含んで濁流になって流れている様子を的確に詠っていると思います。(小口泰與)

★一枝の桃を活けたりひな祭り/河野啓一
一枝の桃の花で、ひな祭りがずいぶん円かになる。あかるく、あたたかく、かわいらしい桃の花は、やはり、雛の節句に相応しい。(高橋正子)

★春寒き伊勢路の昼餉貝ずくし/篠木 睦
伊勢路に春がやってくるのは、お伊勢参りの人が増えてくるころであろうか。まだ寒さの残る春、昼餉は貝ずくし。蛤、さざえなど、貝はこのころが美味しい。伊勢路の春が読み手にもよく伝わる。(高橋正子)

★山鳩の羽音を降らす芽木の雨/藤田洋子
「羽音を降らす」のは、芽木の雨。山鳩も、かぼそく降る春雨に濡れ、羽ばたくと、羽音も芽木を伝うように降ってくる。山鳩を身近にした暮らしが知れる。(高橋正子)

★豆腐切る厨の奥まで春陽さす/井上治代
「豆腐切る」日常に、ふと気づかれた春陽の長さ。厨の奥までの春陽がとてもあたたかで、つましいお暮らしの中で感じられた季節の喜びを一層感じます。(藤田洋子)

【入選Ⅰ/12句】
★山風に逆らいつつも揚雲雀/小口泰與
御当地は、風の強い所と聞いております。その風にも負けずどんどん昇ってゆく揚雲雀を上手く詠んでおられる良き句と思います。(小河原宏子)

★ものの芽や日にひに庭の面白く/宮本和美
何がどうと言うことでもなく、一雨ごとに庭の様子も変わってくるこの頃、芽生え、芽出しに日々新しい発見があることと思います。平易な詠みの中に、作者の春の喜びが感じられます。(河野啓一)

★隣り合う田にそれぞれの耕運機/黒谷光子
早くも広々とした平野のたがやしが始るのでしょうか。春なかばの風景が美しく見られるのもすぐですね。(甲斐ひさこ)

★飛行機雲野はものの芽のひしめきて/甲斐ひさこ
空に向けられた目と野に向けられた目、双方が響きあって景色を広々としたものにしています。春のいきいきした息吹を感じます。(多田有花)

★青草のまじる土筆を袋から/祝 恵子
青草にまじる土筆がより鮮やかで、土筆を摘み帰った袋に、春の野の香りも色も詰めて持ち帰ったような心楽しさを感じます。(藤田洋子)

★春禽の自由を得たり大空を/藤田裕子
暖かくなって寒さをしのぐこともなくなり、大空いっぱいに飛び回る。のびのびと羽を広げて飛ぶ様子が春っぽいと感じます。(高橋秀之)

★花菜の黄一面に揺れ畦隠す/柳原美知子
冬は畦道だった部分が春になり菜の花で隠れてしまっている様子に、たくさんの菜の花が咲いている情景が見て取れます。(高橋秀之)

★今年また手の平ほどの雛飾る/村井紀久子
私も二人だけの暮らしですが、手の平ほどの雛や色紙の雛、葉書の雛などあちこちに飾っています。いくつになっても雛祭りはいいですね。(黒谷光子)

★四十雀ふるさとの野に聞きし歌/古田敬二
四十雀の鳴声は特徴があり、幼いころおぼえた懐かしさはひとしおです。何気なく聞いていた鳥の声をあらためて聞く気もちがつたわります。(藤田荘二)

★海鳥が水輪のなかの春河口/丸山美知子
流れのおだやかな河口に遊ぶ海鳥たち。それが水輪の中であれば、なおさら安らかで、平和に満ちた情景です。(臼井愛代)

★淡雪の着慣れし服にある軽さ/藤田荘二
着慣れた服をまとった日常に春の雪が降った日。降るそばから消えてゆく淡雪の儚さは、春の軽やかさにも通じるものがあります。(臼井愛代)

★木の芽張る日面の枝日裏の枝/矢野文彦
日面の枝にも日裏の枝にも、あまたの木の芽が芽吹いています。自由にのびのびと枝を張る芽木の勢いが伝わってくる御句と存じます。(臼井愛代)

【入選Ⅱ/10句】
★栗鼠跳んで小枝の雪を落としけり/志賀泰次
一面真白の雪の原に、何とも愛らしい栗鼠のうごきが、リズムよく目に見えるようです。雪をふり落とし、小さな足跡も残したのではないでしょうか。(小川和子)

★地下鉄の花屋あかるき桃の花/小西 宏
地下鉄のフラワースタンドで売られている花桃の束が目に浮びます。優美な色彩が周りを明るく照らしてくれています。(河野啓一)

★竹生島ときおり見遣り蓬摘む/黒谷光子
冬は雪景色の琵琶湖北からはっきりと見えるようになった竹生島。それを見やりながら蓬を摘む様子に春がきてウキウキとする心情が感じられます。(高橋秀之)

★陽春の飛行機雲の伸びゆけり/多田有花
春めいて、柔らかな空の色に伸びゆく一筋の飛行機雲。「陽春」に相応しい明るさ、伸びやかさに、温気の満ちた春の麗日を思います。(藤田洋子)

★チュ-リップ芽はみなゆるがず出揃えり/小川和子
黒々とした大地を割ってしっかりと芽吹いた、チューリップの芽の濃い緑色を思い浮かべました。力強く、生命感あふれる情景です。(臼井愛代)

  伊豆韮山
★反射炉に開国の跡吊し雛/渋谷洋介
開国の頃から残る反射炉と伝統の吊し雛を詠まれ、伊豆韮山という場所を訪れられた作者の、思い出深い早春の一日を思います。(臼井愛代)

★湯通せばたちまち若布みどり立つ/小河原宏子
湯をくぐらせた若布のさみどりが目を見張るような鮮やかさです。磯の香がこぼれるような「みどり立つ」若布に季節の喜びを感じます。(藤田洋子)

★春耕の人も田畑も雨の中/堀佐夜子
やわらかい春の雨の絵を見ているような句、作物の芽吹きをさそうあたたかみと同時に作者の心持の穏やかさを感じます。(藤田荘二)

★連翹の黄が揺れ動く電車みち/桑本栄太郎
通勤の阪急電車に乗って外を眺めていると、連翹の花が風に吹かれて黄を揺らしているのでしょう。作者も電車の揺れを感じながら共に揺れ動き春の近付くのを感じられている明るい、良き句と存じます。(小河原宏子)

★今日の朝男雛の烏帽子をまっすぐに/飯島治朗
雛人形が出され、家の中に明るく春らしい雰囲気が漂っています。お雛様の飾り付けを終えた後も、日に幾度となく眼をやり、それを楽しまれている作者の様子が伝わってきます。(臼井愛代)

●今日の秀句/高橋正子選

2009-03-04 08:41:25 | 今日の秀句
■3月1日
★どこまでも菜の花道がまっすぐに/高橋秀之
のどかで春らしい明るい句です。「どこまでも」に幸福感を感じます。そういう道をずっと歩いていきたいな、という気分になります。(多田有花)

■3月2日
★菜の花や日ごと色増す筑後川/國武光雄
見渡す限り菜の花畑が打ち続いて、黄色の花が咲き匂い、野山は雪消になって、九州第一の川、筑紫次郎も雪消水を含んで濁流になって流れている様子を的確に詠っていると思います。(小口泰與)

■3月3日
★一枝の桃を活けたりひな祭り/河野啓一
一枝の桃の花で、ひな祭りがずいぶん円かになる。あかるく、あたたかく、かわいらしい桃の花は、やはり、雛の節句に相応しい。(高橋正子)

■3月4日
★海の青しずかに沈め流氷野/志賀泰次
「流氷が視界いっぱいに広がっている状態を流氷野という。氷量が10/10の密接流氷の場合でも、風や海流によって氷野は絶えず移動し、変形する。」と、「流氷野(りゅうひょうや)」は解説されている。「しずかに沈め」に流氷の動きが感じられる。(高橋正子)

■3月5日
★朝桜ふれたき空はうすき青/川名 ますみ
「ふれたき空」が素敵です。夢があり淡き色どりを感じる好きな句です。(甲斐ひさこ)

■3月6日
★春寒き伊勢路の昼餉貝ずくし/篠木 睦
伊勢路に春がやってくるのは、お伊勢参りの人が増えてくるころであろうか。まだ寒さの残る春、昼餉は貝ずくし。蛤、さざえなど、貝はこのころが美味しい。伊勢路の春が読み手にもよく伝わる。(高橋正子)

●今日の佳句/高橋正子選

2009-03-04 08:40:20 | 今日の佳句
■3月1日
★今日の朝男雛の烏帽子をまっすぐに/飯島治朗
雛人形が出され、家の中に明るく春らしい雰囲気が漂っています。お雛様の飾り付けを終えた後も、日に幾度となく眼をやり、それを楽しまれている作者の様子が伝わってきます。(臼井愛代)

★栗鼠跳んで小枝の雪を落としけり/志賀泰次
一面真白の雪の原に、何とも愛らしい栗鼠のうごきが、リズムよく目に見えるようです。雪をふり落とし、小さな足跡も残したのではないでしょうか。(小川和子)

★山風に逆らいつつも揚雲雀/小口泰與
御当地は、風の強い所と聞いております。その風にも負けずどんどん昇ってゆく揚雲雀を上手く詠んでおられる良き句と思います。(小河原宏子)

■3月2日
★春耕の畝しろじろと乾きけり/宮本和美
耕され、くろぐろと広がる畑土に、一段高く盛られた畝の土がいち早く乾き始めました。すっかり整った畑に、耕作の時が待たれます。(臼井愛代)

★潮風に木々の膨らむ花芽かな/篠木 睦
春の潮風を受けて花芽の膨らんでゆく風景と春の喜びが伝わっています。(丸山美知子)

★山茱萸の花青空に禅の寺/小西 宏
ぱっと黄を広げたような山茱萸の花は青空によく映えます。静かな早春の禅寺を訪れた作者の心に、印象深い情景となったことでしょう。(臼井愛代)

■3月3日
★地下鉄の花屋あかるき桃の花/小西 宏
地下鉄のフラワースタンドで売られている花桃の束が目に浮びます。優美な色彩が周りを明るく照らしてくれています。(河野啓一)

■3月4日
★ものの芽や日にひに庭の面白く/宮本和美
何がどうと言うことでもなく、一雨ごとに庭の様子も変わってくるこの頃、芽生え、芽出しに日々新しい発見があることと思います。平易な詠みの中に、作者の春の喜びが感じられます。(河野啓一)

★隣り合う田にそれぞれの耕運機/黒谷光子
早くも広々とした平野のたがやしが始るのでしょうか。春なかばの風景が美しく見られるのもすぐですね。(甲斐ひさこ)

★飛行機雲野はものの芽のひしめきて/甲斐ひさこ
空に向けられた目と野に向けられた目、双方が響きあって景色を広々としたものにしています。春のいきいきした息吹を感じます。(多田有花)

■3月5日
★地虫出づ青く晴れたり生駒山/河野啓一
まだまだ寒い日もありますが、日に日に春めき、冬のあいだ土の中で眠っていた虫たちが地上に出てくる時期となりました。生駒山の空が青く晴れた日に、動植物の息吹きに思いを馳せる作者の姿があります。(臼井愛代)

★青草のまじる土筆を袋から/祝恵子
素朴な情緒が感じられる好きな句です。青草のまじる土筆は子どもさんと一緒に摘んでこられたのかな、と考えたりしました。(河野啓一)

★植え分けて土手に今年の黄水仙/甲斐ひさこ
植え分けという手間をかけられた黄水仙に、育てる人の、黄水仙を愛で、いつくしむ気持ちを感じます。今年も咲いてくれたといううれしさが伝わってきます。(臼井愛代)

■3月6日
★花ミモザ束ねて届く誕生日/黒谷光子
お誕生日ですか?おめでとうございます。香り高く美しいミモザの花、それが束ねられて届けられるなんて素敵です。(多田有花)

★春耕の人も田畑も雨の中/堀佐夜子
やわらかい春の雨の絵を見ているような句、作物の芽吹きをさそうあたたかみと同時に作者の心持の穏やかさを感じます。(藤田荘二)

★山鳩の羽音を降らす芽木の雨/藤田洋子
山の木々が芽吹きはじめ、少し肌寒い雨が降っています。その雨を縫って山鳩の声や羽音が聞こえてきました。早春の生命の芽生えが、とてもうれしくなります。(藤田裕子)

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