■3月22日(日)~3月31日(土)
□高橋信之・高橋正子選
【最優秀/2句】
★一山の花明りして暮れゆけり/藤田洋子
一山が桜の花で見事であるが、暮れてゆくときは、花の色が発光するようように暮れ残る。「花明かり」にある華やかさと寂しさの混じった抒情がよく詠まれている。(高橋正子)
★辛夷咲く川辺晴れ晴れ風渡る/堀佐夜子
辛夷の咲いている景色がよい。川辺であり、晴れ晴れとして、風が渡っている。そういう景色がよく、作者の気持ちに一致している。(高橋正子)
【特選/6句】
★咲き初めし辛夷湖へと枝を張る/黒谷光子
この句の眼目は、景色がよいことである。「咲き初めし辛夷」も、「湖へ枝を張る」も、これからのさらに美しい景色を想像させて、芯にしっかりとした力の強さがある。(高橋正子)
★花の冷え纏いてさらの句集来る/臼井愛代
花がほころびはじめた日に届いた句集。新刊書は、花冷えのする空気を纏い、受けとられた著者の喜びが静かに、ゆたかに伝わってきます。「さらの句集」が、心に残ります。 (小川和子)
★風走る青麦畑を沖となし/柳原美知子(正子添削)
青麦畑を沖と見立てたところが素敵です。青麦畑の広さと波打つ様子に風の爽やかさが感じられます。(高橋秀之)
★白魚を掬いて透ける湖の水/河野啓一
白魚を掬うと、透き通った体から透き通った春の水が滴り、白魚も水も春の日にキラキラと輝いています。瑞々しい生命に触れた作者の喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)
★青天の高嶺まぶしき花辛夷/宮本和美
青空の下、花辛夷の白い花が咲き誇っています。遠くに望む高い峰もまぶしく聳えて、光あふれる大きな春の景色となっています。 (臼井愛代)
★富士見える斜面にさみどりふきのとう/古田敬二
遠望の富士と斜面のふきのとう、風景の遠近と色彩の対比が鮮やかに目に映ります。さみどりのふきのとうのみずみずしさに、春の訪れをしかと感じます。 (藤田洋子)
【入選Ⅰ/10句】
★ひかり得て闇より生れし春の雪/小西 宏
夜降り始めた春の雪であろう。闇から舞い落ちる雪は、身の丈あたりに来ると、白く光って、それが雪と分かる。それが「ひかり得て」、ゆっくりと降る春の雪である。(高橋正子)
★下萌えに一歩の弾み佇めり/志賀泰次
北国にも春が訪れ、おそらく雪のかたまりも残る地面に下萌えの草をみつけられた作者。春に寄せる思いが、遺憾なく伝わる好きな句です。(小川和子)
★ローカル線森抜け春田の広びろと/飯島治朗
瑞穂の国の春田の景が見える様で、思わず長閑な気分になりました。 (宮本和美)
★風吹けば大空に満つ花つぼみ/小川和子
春の風に大きく揺れ、青空いっぱいに桜の花の蕾がひしめき合っている。目を瞑り、この句を口ずさんでいると、豊かな自然のエネルギーを感じることができました。(井上治代)
★野花にも触れて揺らしてつくし摘む/祝恵子
つくしの出ている野原には、仏の座やおおいぬのふぐりなどの花が咲いていて、つくしを摘んでいると、自然にそのような花に触れることもあり、つくし摘みの楽しさが伝わってきました。(井上治代)
★林間に大きく懸かる春夕焼け/丸山美知子
木と木の間にまるで虹のように夕焼けの空があり、その空は少しずつ変わっていき、いつまで見ていても飽きない景色だったと思います。(井上治代)
★春風の集いしところ頂は/多田有花
遮るもののない頂に辿り着くと、春の日差しが溢れ、春風が四方から吹いてきて、解放感に溢れ、この上ない安らぎを感じます。その心地よさを「春風の集いしところ」と表現されたのは妙だと思います。 (柳原美知子)
★花こぶし映し水面の揺れ始む/川名ますみ
花こぶしを静かに映していた水面に生じた小さな動きにはっとした作者の心の動きが伝わってきました。水面の白い花が光にまぶされてゆらめくさまに、あたたかい春風のそよぎを感じます。 (臼井愛代)
★春ショールたたんで膝にさくら色/川名ますみ
春も半ばになると、冬の防寒の意味が薄れ、アクセサリーとして、色の明るいショールを和服の肩掛けに用いますが、特にこの二三日は寒さが戻り、春寒しの感があります。膝に春らしい桜色のショールを置いて春のぬくもりを感じている作者。とても素敵な光景ですね。(小口泰與)
★川端に七色十色風車/井上治代
川沿いの心地よい風が子どもたちのもつ風車をまわしています。七色なのか十色なのか、心地よく回る風車が春の爽やかさを感じさせてくれます。 (高橋秀之)
【入選Ⅱ/12句】
★夕闇に辛夷の占むる一ところ/藤田洋子
夕闇に包まれ白く咲く花辛夷の一所だけが、灯を点すように明るい。春の夕暮れ時の情景がよく見えます。 (飯島治朗)
★さえずりや田を賑わしき耕運機/小口泰與
鳥のさえずりが響く中、田を耕している耕運機の音も響いている。春先の穏やかな光景です。 (高橋秀之)
★菜の花や榛名に向かい深呼吸/小口泰與
田園地帯が菜の花に彩られる季節になりました。その明るさ、長閑さに、春が来たという実感が湧き上がります。思わず、榛名に向って深呼吸したくなるようなうれしい実感です。(臼井愛代)
★百合樹の芽吹く広場や版画館/渋谷洋介
広場の百合の樹のさみどりの芽吹きが、街に、春らしい明るい印象を与えています。版画の素朴な躍動感とも相通じる生命感があります。(臼井愛代)
★青空へ大きく開くチューリップ/高橋秀之(信之添削)
いかにも伸びやかな春の花壇です。陽光を受け、空に向けて大きく耀く、チューリップならではのシンプルな姿が描かれています。(河野啓一)
★朝の空気ひときわ澄みし初音聴く/藤田裕子
何とも言えない爽やかな気分。今日一日よいことがありますよ。私も嬉しくなつて参りました。(宮本和美)
★春水を筆にたっぷり風と書く/藤田荘二
「筆にたっぷり」という豊かな響き、「風」という字のおおらかな姿、これらを力強く縄なって春の気をどっしりと届けてくれています。(小西 宏)
★教会の門戸開かれ初音かな/桑本栄太郎
オルガンの音、讃美歌の声、あるいは手を組んで跪く祈り人に春の風が優しく触れています。そんな新鮮な鶯の声です。(小西 宏)
★手を振って春泥の庭児が過る/矢野文彦
ニコニコとした笑顔や上下に弾む脚の動きが(文字に直接書かれていないのに)元気よく伝わってきます。(小西 宏)
★山桜先に満開兄の家/甲斐ひさこ
一足先に山桜の咲き満つ兄の家。満開の山桜の明るさに、作者のお兄様へ寄せる優しさや敬意があらわれているようです。 (藤田洋子)
★柳の芽風のある日は風に添う/村井紀久子
柳の芽の柔らかなしなやかな動きが見てとれるようです。風のある日の柳の芽の揺れをよく捉えていると思います。 (藤田洋子)
★春光や千手観音しなやかに/篠木睦
千手観音像が春の日差しを浴びているのでしょう。しなやかにという表現が春の日の暖かさを感じさせてくれます。 (高橋秀之)
□高橋信之・高橋正子選
【最優秀/2句】
★一山の花明りして暮れゆけり/藤田洋子
一山が桜の花で見事であるが、暮れてゆくときは、花の色が発光するようように暮れ残る。「花明かり」にある華やかさと寂しさの混じった抒情がよく詠まれている。(高橋正子)
★辛夷咲く川辺晴れ晴れ風渡る/堀佐夜子
辛夷の咲いている景色がよい。川辺であり、晴れ晴れとして、風が渡っている。そういう景色がよく、作者の気持ちに一致している。(高橋正子)
【特選/6句】
★咲き初めし辛夷湖へと枝を張る/黒谷光子
この句の眼目は、景色がよいことである。「咲き初めし辛夷」も、「湖へ枝を張る」も、これからのさらに美しい景色を想像させて、芯にしっかりとした力の強さがある。(高橋正子)
★花の冷え纏いてさらの句集来る/臼井愛代
花がほころびはじめた日に届いた句集。新刊書は、花冷えのする空気を纏い、受けとられた著者の喜びが静かに、ゆたかに伝わってきます。「さらの句集」が、心に残ります。 (小川和子)
★風走る青麦畑を沖となし/柳原美知子(正子添削)
青麦畑を沖と見立てたところが素敵です。青麦畑の広さと波打つ様子に風の爽やかさが感じられます。(高橋秀之)
★白魚を掬いて透ける湖の水/河野啓一
白魚を掬うと、透き通った体から透き通った春の水が滴り、白魚も水も春の日にキラキラと輝いています。瑞々しい生命に触れた作者の喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)
★青天の高嶺まぶしき花辛夷/宮本和美
青空の下、花辛夷の白い花が咲き誇っています。遠くに望む高い峰もまぶしく聳えて、光あふれる大きな春の景色となっています。 (臼井愛代)
★富士見える斜面にさみどりふきのとう/古田敬二
遠望の富士と斜面のふきのとう、風景の遠近と色彩の対比が鮮やかに目に映ります。さみどりのふきのとうのみずみずしさに、春の訪れをしかと感じます。 (藤田洋子)
【入選Ⅰ/10句】
★ひかり得て闇より生れし春の雪/小西 宏
夜降り始めた春の雪であろう。闇から舞い落ちる雪は、身の丈あたりに来ると、白く光って、それが雪と分かる。それが「ひかり得て」、ゆっくりと降る春の雪である。(高橋正子)
★下萌えに一歩の弾み佇めり/志賀泰次
北国にも春が訪れ、おそらく雪のかたまりも残る地面に下萌えの草をみつけられた作者。春に寄せる思いが、遺憾なく伝わる好きな句です。(小川和子)
★ローカル線森抜け春田の広びろと/飯島治朗
瑞穂の国の春田の景が見える様で、思わず長閑な気分になりました。 (宮本和美)
★風吹けば大空に満つ花つぼみ/小川和子
春の風に大きく揺れ、青空いっぱいに桜の花の蕾がひしめき合っている。目を瞑り、この句を口ずさんでいると、豊かな自然のエネルギーを感じることができました。(井上治代)
★野花にも触れて揺らしてつくし摘む/祝恵子
つくしの出ている野原には、仏の座やおおいぬのふぐりなどの花が咲いていて、つくしを摘んでいると、自然にそのような花に触れることもあり、つくし摘みの楽しさが伝わってきました。(井上治代)
★林間に大きく懸かる春夕焼け/丸山美知子
木と木の間にまるで虹のように夕焼けの空があり、その空は少しずつ変わっていき、いつまで見ていても飽きない景色だったと思います。(井上治代)
★春風の集いしところ頂は/多田有花
遮るもののない頂に辿り着くと、春の日差しが溢れ、春風が四方から吹いてきて、解放感に溢れ、この上ない安らぎを感じます。その心地よさを「春風の集いしところ」と表現されたのは妙だと思います。 (柳原美知子)
★花こぶし映し水面の揺れ始む/川名ますみ
花こぶしを静かに映していた水面に生じた小さな動きにはっとした作者の心の動きが伝わってきました。水面の白い花が光にまぶされてゆらめくさまに、あたたかい春風のそよぎを感じます。 (臼井愛代)
★春ショールたたんで膝にさくら色/川名ますみ
春も半ばになると、冬の防寒の意味が薄れ、アクセサリーとして、色の明るいショールを和服の肩掛けに用いますが、特にこの二三日は寒さが戻り、春寒しの感があります。膝に春らしい桜色のショールを置いて春のぬくもりを感じている作者。とても素敵な光景ですね。(小口泰與)
★川端に七色十色風車/井上治代
川沿いの心地よい風が子どもたちのもつ風車をまわしています。七色なのか十色なのか、心地よく回る風車が春の爽やかさを感じさせてくれます。 (高橋秀之)
【入選Ⅱ/12句】
★夕闇に辛夷の占むる一ところ/藤田洋子
夕闇に包まれ白く咲く花辛夷の一所だけが、灯を点すように明るい。春の夕暮れ時の情景がよく見えます。 (飯島治朗)
★さえずりや田を賑わしき耕運機/小口泰與
鳥のさえずりが響く中、田を耕している耕運機の音も響いている。春先の穏やかな光景です。 (高橋秀之)
★菜の花や榛名に向かい深呼吸/小口泰與
田園地帯が菜の花に彩られる季節になりました。その明るさ、長閑さに、春が来たという実感が湧き上がります。思わず、榛名に向って深呼吸したくなるようなうれしい実感です。(臼井愛代)
★百合樹の芽吹く広場や版画館/渋谷洋介
広場の百合の樹のさみどりの芽吹きが、街に、春らしい明るい印象を与えています。版画の素朴な躍動感とも相通じる生命感があります。(臼井愛代)
★青空へ大きく開くチューリップ/高橋秀之(信之添削)
いかにも伸びやかな春の花壇です。陽光を受け、空に向けて大きく耀く、チューリップならではのシンプルな姿が描かれています。(河野啓一)
★朝の空気ひときわ澄みし初音聴く/藤田裕子
何とも言えない爽やかな気分。今日一日よいことがありますよ。私も嬉しくなつて参りました。(宮本和美)
★春水を筆にたっぷり風と書く/藤田荘二
「筆にたっぷり」という豊かな響き、「風」という字のおおらかな姿、これらを力強く縄なって春の気をどっしりと届けてくれています。(小西 宏)
★教会の門戸開かれ初音かな/桑本栄太郎
オルガンの音、讃美歌の声、あるいは手を組んで跪く祈り人に春の風が優しく触れています。そんな新鮮な鶯の声です。(小西 宏)
★手を振って春泥の庭児が過る/矢野文彦
ニコニコとした笑顔や上下に弾む脚の動きが(文字に直接書かれていないのに)元気よく伝わってきます。(小西 宏)
★山桜先に満開兄の家/甲斐ひさこ
一足先に山桜の咲き満つ兄の家。満開の山桜の明るさに、作者のお兄様へ寄せる優しさや敬意があらわれているようです。 (藤田洋子)
★柳の芽風のある日は風に添う/村井紀久子
柳の芽の柔らかなしなやかな動きが見てとれるようです。風のある日の柳の芽の揺れをよく捉えていると思います。 (藤田洋子)
★春光や千手観音しなやかに/篠木睦
千手観音像が春の日差しを浴びているのでしょう。しなやかにという表現が春の日の暖かさを感じさせてくれます。 (高橋秀之)